難し、是故に恩惠《めぐみ》によりてこれが驗《ためし》を經《ふ》べき者この例をもて足《た》れりとすべし 七〇―七二
天を統治《すべをさ》むる愛よ、我は汝が最後に造りし我の一部に過ぎざりしか、こは聖火《みひかり》にて我を擧げし汝の知り給ふ所なり 七三―七五
慕はるゝにより汝が無窮となしゝ運行、汝の整《とゝの》へかつ頒《わか》つそのうるはしき調《しらべ》をもてわが心を引けるとき 七六―七八
日輪の焔いとひろく天を燃《もや》すと見えたり、雨または河といふともかくひろがれる湖《うみ》はつくらじ 七九―八一
音《おと》の奇《くす》しきと光の大いなるとは、その原因《もと》につき、未だ感じゝことなき程に強き願ひをわが心に燃《もや》したり 八二―八四
是においてか、我を知ることわがごとくなりし淑女、わが亂るゝ魂を鎭《しづ》めんとて、我の未だ問はざるさきに口を啓《ひら》き 八五―八七
いひけるは。汝|謬《あやま》れる思ひをもて自ら己を愚《おろか》ならしむ。是故にこれを棄つれば見ゆるものをも汝は見るをえざるなり 八八―九〇
汝は汝の信ずるごとく今地上にあるにあらず、げに己が處を出でゝ馳《は》する電光《いなづま》疾《はや》しといへども汝のこれに歸るに及ばじ。 九一―九三
わが第一の疑ひはこれらの微笑《ほゝゑ》める短き詞《ことば》によりて解けしかど、一の新《あらた》なる疑ひ起りていよ/\いたく我を絡《から》めり 九四―九六
我即ち曰《い》ふ。かの大いなる驚異《あやしみ》につきてはわが心既に足りて安んず、されどいかにしてわれ此等の輕き物體を超《こ》えて上《のぼ》るや、今これを異《あやし》とす 九七―九九
是においてか彼、一の哀憐《あはれみ》の大息《といき》の後、狂へる子を見る母のごとく、目をわが方にむけて 一〇〇―一〇二
いふ。凡《およ》そありとしあらゆる物、皆その間に秩序を有す、しかしてこれは、宇宙を神の如くならしむる形式ぞかし 一〇三―一〇五
諸※[#二の字点、1−2−22]の尊く造られし物、永遠《とこしへ》の威能《ちから》(これを目的《めあて》としてかゝる法《のり》は立てられき)の跡をこの中に見る 一〇六―一〇八
わがいふ秩序の中に自然はすべて傾けども、その分《ぶん》異《こと》なりて、己が源にいと近きあり然らざるあり 一〇九―一一一
是故にみな己が受けたる本能に導かれつゝ、存在の大海《おほうみ》をわたりて多くの異なる湊《みなと》にむかふ 一一二―一一四
火を月の方に送るも是《これ》、滅ぶる心を動かすも是、地を相寄せて一にするもまた是なり 一一五―一一七
またこの弓は、たゞ了知《さとり》なきものゝみならず、智あり愛あるものをも射放つ 一一八―一二〇
かく萬有の次第を立つる神の攝理は、いと疾《と》くめぐる天をつゝむ一の天をば、常にその光によりてしづかならしむ 一二一―一二三
今やかしこに、己が射放つ物をばすべて樂しき的《まと》にむくる弦《つる》の力我等を送る、あたかも定《さだま》れる場所におくるごとし 一二四―一二六
されどげに、材|默《もだ》して應《こた》へざるため形しば/\技藝の工夫《くふう》に配《そ》はざるごとく 一二七―一二九
被造物《つくられしもの》またしば/\この路を離る、そはこれは、かく促《うなが》さるれども、もし最初の刺戟僞りの快樂《けらく》の爲に逸《そ》れて 一三〇―
これを地に向はしむれば、その行方《ゆくへ》を誤る(あたかも雲より火の墜《おつ》ることあるごとく)ことをうればなり ―一三五
わが量《はか》るところ正しくば、汝の登るはとある流れの高山より麓《ふもと》に下り行くごとし、何ぞ異《あやし》とするに足らんや 一三六―一三八
汝|障礙《しやうげ》を脱しつゝなほ下に止まらば、是かへつて汝における一の不思議にて、地上に靜なることの燃ゆる火における如くなるべし。 一三九―一四一
かくいひて再び顏を天にむけたり 一四二―一四四
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   第二曲

あゝ聽かんとて小舟《をぶね》に乘りつゝ、歌ひて進むわが船のあとを追ひ來れる人等よ 一―三
立歸りて再び汝等の岸を見よ、沖に浮びいづるなかれ、恐らくは汝等我を見ずしてさまよふにいたるべければなり 四―六
わがわたりゆく水は人いまだ越えしことなし、ミネルヴァ氣息《いき》を嘘《ふ》き、アポルロ我を導き、九のムーゼ我に北斗を指示す 七―九
また數少きも、天使の糧《かて》(世の人これによりて生くれど飽《あ》くにいたらず)にむかひて疾《と》く項《うなじ》を擧《あ》げし人等よ 一〇―一二
水の面《おもて》の再び平らかならざるさきにわが船路《ふなぢ》の跡をたどりつゝ海原《うなばら》遠く船を進めよ 一三―一五
イアソンが耕人《たがやすひと》となれるをコルコに渡れる勇士《つはもの》等の見し時にもまさり
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