を卑《ひく》うして肉體となり給はざりせば、他《ほか》のいかなる方法《てだて》といふとも正義に當るに足らざりしなるべし 一一八―一二〇
さて我は今、汝の願ひをすべてよく滿たさんため、溯《さかのぼ》りて一の事を説き示し、汝をしてわが如くこれを見るをえしめむ 一二一―一二三
汝いふ、我視るに、地水火風及びそのまじりあへるものみな滅び、永く保《たも》たじ 一二四―一二六
しかるにこれらは被造物《つくられしもの》なり――是故にわがいへること眞《まこと》ならばこれらには滅ぶるの患《うれへ》あるべきならず――と 一二七―一二九
兄弟よ、諸※[#二の字点、1−2−22]の天使と、汝が居る處の純なる國とは、現在《いま》のごとき完き状態《さま》にて造られきといふをうれども 一三〇―一三二
汝の名指《なざ》しゝ諸※[#二の字点、1−2−22]の元素およびこれより成る物は、造られし力これをとゝのふ 一三三―一三五
造られしはかれらの物質、造られしはかれらをめぐるこの諸※[#二の字点、1−2−22]の星のうちのとゝのふる力なり 一三六―一三八
諸※[#二の字点、1−2−22]の聖なる光の輝と※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]轉《めぐり》とは、すべての獸及び草木《くさき》の魂をば、これとなりうべき原質よりひきいだせども 一三九―一四一
至上の慈愛は、たゞちに汝等の生命《いのち》を嘘《ふき》入れ、かつこれをして己を愛せしむるが故に、この物たえずこれを慕ひ求むるにいたる 一四二―一四四
さてまたこの理《ことわり》よりさらに推し及ぼして汝は汝等の更生《よみがへり》を知ることをえむ、もし第一の父母《ちゝはゝ》ともに造られし時 一四五―一四七
人の肉體のいかに造られしやを思ひみば
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   第八曲

世は、その危ふかりし頃、美しきチプリーニアが第三のエピチクロをめぐりつゝ痴情の光を放つと信ずる習《ならはし》なりき 一―三
されば古《いにしへ》の人々その古の迷ひより、牲《いけにへ》を供《そな》へ誓願をかけて彼を崇《あが》めしのみならず 四―六
またディオネとクーピドをも崇めて彼をその母とし此をその子とし、かついへり、この子かつてディドの膝の上に坐しきと 七―九
かれらはまた、日輪に或ひは後《うしろ》或ひは前《まへ》より秋波《しうは》をおくる星の名を、わがかく歌の始めにうたふかの女神《めがみ》より取れり 一〇―一二
かの星の中に登れることを我は知らざりしかど、その中にありしことをば、わが淑女のいよ/\美しくなるを見て、かたく信じき 一三―一五
しかして火花焔のうちに見え、聲々のうちに判《わか》たるゝ(一動かず一|往來《ゆきき》するときは)ごとく 一六―一八
我はかの光の中に、他の多くの光、輪を成して※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]《めぐ》るを見たり、但し早さに優劣《まさりおとり》あるはその永劫《えいごふ》の視力の如何によりてなるべし 一九―二一
見ゆる風や見えざる風の、冷やかなる雲よりくだる疾《はや》しとも、これらのいと聖なる光が 二二―二四
尊きセラフィーニの中にまづ始まりし舞を棄てつゝ我等に來るを見たらん人には、たゞ靜にて遲しと思はれむ 二五―二七
さて最も先に現はれし者のなかにオザンナ響きぬ、こはいと妙《たへ》なりければ、我は爾後《そののち》再び聞かんと願はざることたえてなかりき 二八―三〇
かくてその一われらにいよ/\近づき來り、單獨《たゞひとり》にていふ。われらみな汝の好む所に從ひ汝を悦ばしめんとす 三一―三三
われらは天上の君達と圓を一にし、※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]轉《めぐり》を一にし、渇《かわき》を一にしてまはる、汝|嘗《かつ》て世にて彼等にいひけらく 三四―三六
汝等|了知《さとり》をもて第三の天を動かす者よと、愛我等に滿つるが故に、汝の心に適《かな》はせんとて少時《しばらく》しづまるとも我等の悦び減《へ》ることあらじ。 三七―三九
われ目をうや/\しくわが淑女にそゝぎ、その思ひを定《さだ》かに知りてわが心を安んじゝ後 四〇―四二
再びこれをかの光――かく大いなることを約しゝ――にむかはせ、切《せつ》なる情を言葉にこめつゝ汝等は誰なりや告げよといへり 四三―四五
われ語れる時、新たなる喜び己が喜びに加はれるため、かの光が、その量と質とにおいて、優《まさ》りしことげにいかばかりぞや 四六―四八
さてかく變りて我に曰ふ。世はたゞしばし我を宿《やど》しき、もし時さらに長かりせば、來るべき多くの禍ひは避けられしものを 四九―五一
わが身のまはりに輝き出づるわが喜びは我を汝の目に見えざらしめ、我を隱してあたかも己が絹に卷かるゝ蟲の如くす 五二―五四
汝深く我を愛しき、是また宜《うべ》なり、我もし下界に長生《ながら
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