どわが語種《かたりぐさ》なるこの旗が、これに屬する世の王國の全體《すべて》に亘りて、さきに爲したりし事も後に爲すべかりし事も 八二―八四
小《さゝや》かにかつ朧《おぼろ》に見ゆるにいたらむ、人この物を、目を明らかにし思ひを清うして、第三のチェーザレの手に視なば 八五―八七
そはこの物彼の手にありしとき、我をはげます生くる正義は、己が怒りに報《むく》ゆるの譽《ほまれ》をこれに與へたればなり 八八―九〇
いざ汝わが反復語《くりかへしごと》を聞きて異《あや》しめ、この後この物ティトとともに、昔の罪を罰せんために進めり 九一―九三
またロンゴバルディの齒、聖なる寺院を嚼《か》みしとき、この物の翼の下にて勝ちつゝ、カルロ・マーニオこれを救へり 九四―九六
今や汝は、わがさきに難じし如き人々の何者なるやと凡《すべ》て汝等の禍ひの本なる彼等の罪のいかなるやとを自ら量《はか》り知るをえむ 九七―九九
彼《かれ》黄の百合を公《おほやけ》の旗に逆《さか》らはしむれば此《これ》一黨派の爲にこれを己が有《もの》となす、いづれか最も非なるを知らず 一〇〇―一〇二
ギベルリニをして行はしめよ、他の旗の下《もと》にその術を行はしめよ、この旗を正義と離す者何ぞ善《よ》くこれに從ふことあらむ 一〇三―一〇五
またこの新しきカルロをして己がグエルフィと共にこれを倒さず、かれよりも強き獅子より皮を奪ひしその爪を恐れしめよ 一〇六―一〇八
子が父の罪の爲に泣くこと古來例多し、彼をして神その紋所を彼の百合の爲に變へ給ふと信ぜしむる勿《なか》れ 一〇九―一一一
さてこの小さき星は、進みて多くの業《わざ》を爲しゝ諸※[#二の字点、1−2−22]の善き靈にて飾らる、彼等のかく爲しゝは譽と美名《よきな》をえん爲なりき 一一二―一一四
しかして願ひ斯く路を誤りてかなたに昇れば、上方《うへ》に昇る眞《まこと》の愛、光を減ぜざるをえじ 一一五―一一七
されどわれらの報《むくい》が功徳と量を等しうすることわれらの悦びの一部を成す、われら彼の此より多からず少からざるを見ればなり 一一八―一二〇
生くる正義はこの事によりてわれらの情をうるはしうし、これをして一|度《たび》も歪《ゆが》みて惡に陷るなからしむ 一二一―一二三
さま/″\の聲下界にて麗《うる》はしき節《ふし》となるごとく、さま/″\の座《くらゐ》わが世にてこの諸※[#二の字点、1−2−22]の球の間のうるはしき詞《しらべ》を整《とゝの》ふ 一二四―一二六
またこの眞珠の中にはロメオの光の光るあり、彼の美しき大いなる業《わざ》は正しく報《むく》いられざりしかど 一二七―一二九
彼を陷れしプロヴェンツァ人《びと》等笑ふをえざりき、是故に他人《ひと》の善行をわが禍ひとなす者は即ち邪道を歩む者なり 一三〇―一三二
ラモンド・ベリンギエーリには四人《よたり》の女《むすめ》ありて皆王妃となれり、しかしてこは賤しき旗客ロメオの力によりてなりしに 一三三―一三五
後《のち》かれ讒者の言に動かされ、この正しき人(十にて七と五とをえさせし)に清算を求めき 一三六―一三八
是においてか老いて貧しき身をもちて彼去りぬ、世もし一口《ひとくち》一口と食を乞ひ求めし時のその固き心を知らば 一三九―一四一
(今もいたく讚《ほ》むれども)今よりもいたく彼をほむべし。 一四二―一四四
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   第七曲

オザンナ、萬軍の聖なる神、己が光をもてこれらの王國の惠まるゝ火を上より照らしたまふ者。 一―三
二重《ふたへ》の光を重《かさ》ね纏《まと》ひしかの聖者は、その節《ふし》にあはせてめぐりつゝ、かく歌ふと見えたりき 四―六
しかしてこれもその他の者もみなまた舞ひいで、さていとはやき火花の如く、忽ちへだゝりてわが目にかくれぬ 七―九
われ疑ひをいだき、心の中にいひけるは。いへ、いへ、わが淑女にいへ、彼甘き雫《しづく》をもてわが渇《かわき》をとゞむるなれば。 一〇―一二
されどたゞ「ベ」と「イーチェ」のみにて我を統治《すべをさ》むる敬《うやまひ》我をして睡りに就く人の如く再びわが頭《かうべ》を垂れしむ 一三―一五
ベアトリーチェはたゞ少時《しばし》我をかくあらしめし後、火の中にさへ人を福《さいはひ》ならしむる微笑《ほゝゑみ》をもて我を照らしていひけるは 一六―一八
わが量《はか》るところ(こは謬《あやま》ることあらじ)によれば、汝思へらく、正しき罰いかにして正しく罰せらるゝをうるやと 一九―二一
されど我は速に汝の心を釋放《ときはな》つべし、いざ耳を傾けよ、そはわが詞《ことば》、大いなる教へを汝にさづくべければなり 二二―二四
それかの生れしにあらざる人は、己が益なる意志の銜《くつわ》に堪《た》へかねて、己を罪しつゝ、己がすべての子孫を罪せり 二五―二七

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