ため、物言はんとてほどよく頭《かうべ》を擧《あ》げしかど 四―六
このとき我に現はれし物あり、いとつよくわが心を惹《ひ》きてこれを見るに專《もつぱら》ならしめ、我をしてわが告白を忘れしむ 七―九
透《す》きとほりて曇《くもり》なき玻※[#「王+黎」、第3水準1−88−35]または清く靜にてしかして底の見えわかぬまで深きにあらざる水に映《うつ》れば 一〇―一二
われらの俤《おもかげ》かすかに見えて、さながら白き額《ひたひ》の眞珠のたゞちに瞳に入らざるに似たり 一三―一五
我また語るを希《ねが》ふ多くのかゝる顏を見しかば、人と泉との間に戀を燃《もや》したるその誤りの裏をかへしき 一六―一八
かの顏を見るや、我はこれらを物に映《うつ》れる姿なりとし、その所有者《もちぬし》の誰なるをみんとて直ちに目をめぐらせり 一九―二一
されど何をも見ざりしかば、再びこれを前にめぐらし、うるはしき導者――彼は微笑《ほゝゑ》み、その聖なる目輝きゐたり――の光に注げり 二二―二四
彼我に曰ふ。汝の思ひの稚《をさな》きをみて我のほゝゑむを異《あや》しむなかれ、汝の足はなほいまだ眞理の上にかたく立たず 二五―二七
その常の如く汝を空《くう》にむかはしむ、そも/\汝の見るものは、誓ひを果さゞりしためこゝに逐はれし眞《まこと》の靈なり 二八―三〇
是故に彼等と語り、聽きて信ぜよ、彼等を安んずる眞《まこと》の光は、己を離れて彼等の足の迷ふを許さゞればなり。 三一―三三
我は即ち最も切《せち》に語るを求むるさまなりし魂にむかひ、あたかも願ひ深きに過ぎて心亂るゝ人の如く、いひけるは 三四―三六
あゝ生得《しやうとく》の幸《さち》ある靈よ、味はゝずして知るによしなき甘さをば、永遠《とこしへ》の生命《いのち》の光によりて味《あぢは》ふ者よ 三七―三九
汝の名と汝等の状態《ありさま》とを告げてわが心をたらはせよ、さらば我悦ばむ。是においてか彼ためらはず、かつ目に笑《ゑみ》をたゝへつゝ 四〇―四二
我等の愛は、その門を正しき願ひの前に閉ぢず、あたかも己が宮人《みやびと》達のみな己と等しきをねがふ愛に似たり 四三―四五
我は世にて尼なりき、汝もしよく記憶をたどらば、昔にまさるわが美しさも我を汝にかくさずして 四六―四八
汝は我のピッカルダなることを知らむ、これらの聖徒達とともに我こゝに置かれ、いとおそき球の中にて福
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