しため我久しく饑《う》ゑゐたればなり 二五―二七
我よく是を知る、神の正義天上の他の王國をその鏡となさば、汝等の王國も亦|幔《まく》を隔《へだ》てゝこれを視じ 二八―三〇
汝等はわが聽かんと思ふ心のいかばかり深きやを知る、また何の疑ひのかく長く我を饑ゑしめしやを知る。 三一―三三
鷹その被物《かぶりもの》を脱《と》らるれば、頭を動かし翼を搏《う》ち、願ひと勢《いきほひ》とを示すごとく 三四―三六
神の恩惠《めぐみ》の讚美にて編めるこの旗章《はたじるし》は、天に樂しむ者のみ知れる歌をうたひてその悦びを表《あら》はせり 三七―三九
かくていふ。宇宙の極《はて》に圓規《コムパス》をめぐらし、隱るゝ物と顯るゝ物とを遍《あまね》くその内に頒《わか》ちし者は 四〇―四二
己が言《ことば》の限りなく優《まさ》らざるにいたるほど、その力をば全宇宙に印する能はざりき 四三―四五
しかして萬《よろづ》の被造物《つくられしもの》の長《をさ》なりしかの第一の不遜者《ふそんじや》が光を待たざるによりて熟《う》まざる先に墜《おと》し事よくこれを證《あかし》す 四六―四八
されば彼に劣る一切の性《さが》が、己をもて己を量る無窮の善を受入れんには器《うつは》あまりに小さき事もまたこれによりて明らかならむ 四九―五一
是故に、萬物の中に滿つる聖意《みこゝろ》の光のたゞ一線《ひとすぢ》ならざるをえざる我等の視力は 五二―五四
その性《さが》として、己が源を己に見ゆるものよりも遙かかなたに認めざるほど強きにいたらじ 五五―五七
かゝれば汝等の世の享くる視力が無窮の正義に入りゆく状《さま》は、目の海におけるごとし 五八―六〇
目は汀《みぎは》より底を見れども沖にてはこれを見じ、されどかしこに底なきにあらず、深きが爲に隱るゝのみ 六一―六三
曇《くもり》しらぬ蒼空《あをぞら》より來るものゝ外光なし、否《いな》闇あり、即ち肉の陰またはその毒なり 六四―六六
生くる正義を汝に匿《かく》しこれについてかくしげく汝に問を發《おこ》さしめたる隱所《かくれどころ》は、今よく汝の前に開かる 六七―六九
汝|曰《いひ》けらく、人インドの岸に生れ(かしこにはクリストの事を説く者なく、讀む者も書く者もなし) 七〇―七二
人間の理性の導くかぎり、その思ふ所|爲《な》すところみな善く言行《ことばおこなひ》に罪なけれど 七三―七五

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