慕ふなり。註釋者曰、一三〇二年ガレアッツオ、ミラーノを逐はれしよりこの方その一家久しく悲境に沈淪せりと
七九―八一
再嫁の記念を世に殘すは貞操の記念を世に殘すごとく名譽の事にあらざるべし
蝮蛇はミラーノのヴィスコンティ家の紋所、鷄はピサのヴィスコンティ家の紋所なり、家紋を墓所にあらはすこと日本に於てもその例多し
【ガルルーラ】地、二二・七九―八四註參照
八五―八七
【處】こゝにては南極の天を指す、極の星は赤道に近き處よりもその運行おそければなり
八八―九〇
【三の燈火】註釋者曰。この三の星は信仰、希望、愛を表はす、思慮、公義、剛氣、節制の諸徳は活動の徳にして晝に適し、神學上の三徳は默想の徳にして夜に適すと
九一―九三
【今朝】淨、一・二二以下參照
九四―九六
【我等の敵】默示録、一二・九參照
九七―九九
【エーヴァ】蛇、アダムの妻エヴァを誘ひて禁斷の木の實を食はしむ(創世記、三・一以下)、始祖の罪業は全人類の禍ひの本なりければ苦き[#「苦き」に白丸傍点]といふ
一〇三―一〇五
【天の鷹】天使。ダンテ蛇にのみ心ひかれて天使の飛びはじめし有樣を見ざりしなり
一〇九―一一一
【魂】クルラード(コルラード)・マラスピーナ(幼)。ヴィルラフランカの侯爵フェデリーゴの子、一二九四年頃死す
一一二―一一七
【汝を】汝を導いて天にむかはしむる神恩の光汝がこの山の巓に達するまで、汝の意志のはたらきと相結びて、消ゆることなからんことを
【※[#「さんずい+幼」、242−6]藥の巓】美しくして變らざる地上の樂園
【ヴァル・ディ・マーグラ】ルーニジアーナの一部(地、二四・一四五―七註參照)。ヴィルラフランカの城その中央にあり
一一八―一二〇
【老】クルラード・マラスピーナ(老)。侯爵フェデリーゴの父(即ち前出クルラード・マラスピーナの祖父)、一二五〇年頃死す
【愛】己が宗族の榮達をのみ希へるわが地上の愛
一二七―一二九
【財布と劒】人に施して惜しまず且つ勇武なりとの家の譽を傷けず
一三〇―一三二
【習慣と自然】家風と天性
【罪ある首】法王(ボニファキウス八世か)。政務に關渉して
一三三―一三五
【牡羊四の】今より後七年の月日過ぎぬまに
牡羊の蔽ふ臥床は白羊宮なり、この時太陽白羊宮にありしがゆゑにかくいへり
一三六―一三八
【意見】汝のわが一家に對していだく
【人の言より】汝は世の風評以上に力あるもの即ち自己の經驗によりて汝の意見に誤りなきを知るならむ
一三〇六年の秋逐客のダンテ、ルーニジアーナにいたりてマラスピーナ一家の歡待をうけしを指す
一三九 若し神の定めたまふこと(ダンテの逐客となりて處々に流寓すべきこと等)かはらずば
第九曲
ダンテ、君王の溪に眠りて夢み、眠り覺むれば日既に高く身は淨火の門に近し、その傍にはたゞウェルギリウスあるのみ、門を守る天使兩詩人のいふところをきき扉をひらきて内に入らしむ
一―六
淨火の夜景を敍せるなるべし、されど極めて難解にして意義明かならざるところ多し、こゝにてはたゞ諸註の中、主なるものの一をあぐ(委しくはムーアの『ダンテ研究』第三卷七四頁以下を見よ)
【ティトネの妾】月のエオス(アクローラ)(月代)即ち月まさに出でんとして東方の白むをいへり(ラーナ)ティトノス(ティーネ)はトロイア王ラオメドンの子、朝の女神エオスに慕はれこれを妻として不死の身となれりといふ(神話)。ダンテこの傳説にもとづき日のエオスをティトノスの正妻と見做し月のエオスをその妾と見做せるか
【友】ティトノス
【臺】地平線上
【生物】蠍。天蠍宮の星東の空にあらはれしをいふ
七―九
【夜は】夜の八時半過。春分の頃の夜の半即ち午後六時より夜半までを昇《のぼり》としその他を降《くだり》とすれば昇の二歩を終ふるは午後八時なり、第三歩翼を下に曲ぐるは八時と九時の間も既に半を過ぎたるなり
一〇―一二
【アダモの】肉體の係累あるにより
【五者】ダンテ、ウェルギリウス、ソルデルロ、ニーノ、クルラード
一三―一八
【憂ひ】化して燕となれるピロメラがトラキア王テレウスの辱しめをうけし昔の悲しみを訴ふるなり(淨、一七・一九―二一註參照)
【時】曙(地、二六・七―一二註參照)
二二―二四
【ところ】プリュギアのイデ(イーダ)山。ガニュメデスはトロイア王トロスの子にして世にたぐひなき美男子なり、かつてその朋輩とイデ山上に狩す、ゼウス一羽の鷲をおくりてこれをさらはせ天にとゞめて神々に奉仕せしむ(神話)
二五―二七
【こゝに】イデ山に
二八―三〇
【火】火炎界。中古の學説に空氣を圍繞する火、空氣と月天の間にあり
三四―三九
キロネはアキレウスをはぐくめるケンタウロスなり(地、一二・七〇―七二參照)
アキレウスの母テティス、トロイアの難をおそれてわが子をキロネより奪ひその眠れる間にこれをエーゲ海中の一島シロ(或ひはスキュロス)に移せり(神話)、眠り覺めしアキレウスのおどろきあやしめるさまスタティウスの『アキルレース』一・二四七以下にいづといふ
【ギリシア人】オデュセウスとディオメデス(地、二六・六一―三註參照)
四三―四五
【慰むる者】ウェルギリウス
【日は】四月十一日の午前八時頃
五二―五四
【汝の中に】汝の肉體の中に
五五―五七
【ルーチア】神恩の光(地、二・九七―九註參照)
五八―六〇
【魂】原文 forme 肉體を形成するものの義(地、二七・七三參照)
六一―六三
【開きたる】岩分るゝとみゆるをいふ(四九―五一行並びに七三―五行參照)
七〇―七二
【技】詩材にふさはしき作詩の技巧
七六―七八
【門守】門を守る天使は僧侶を代表す、懺悔を聞きて人を淨めの途に就かしむればなり
八二―八四
【目を擧ぐれども】かの白刃を見んとて
八五―八七
【導者】天使は兩詩人の淨火にとゞまるべき魂にあらざるを知り、たゞ何の力に導かれてかしこにいたれるやを問へるなり
【禍ひを】神恩とまことの改悔によりて人の罪淨めらる、その道によらずして罪を淨めんとする者は自ら禍ひを招くに等し
九四―一〇二
註釋者曰。淨火門前の三段は改悔の三要素すなはち心の悔、罪の告白、行の贖の象徴なり、第一の段即ち最下方にあるものは汚れなき心に寫して己が姿を見、己が眞状を知るを表示す、第二の段は色の黒きによりて心の暗き影を表示し縱横の龜裂によりて罪の告白能く心の拗執に勝つを表示す、第三の段即ち最上方にあるものはその赤色によりて、改悔を行ひに顯はし神意を滿さんとする心の愛燃ゆるばかりなるを表示すと
【ペルソ】地、五・八八―九〇註參照
一〇三―一〇五
【金剛石】神意によりて定まれる懺悔の僧の立場の堅固なるを表はす
一〇九―一一一
【胸を】ルカ、一八・一三に税吏神前に罪を悔いて己が胸をうちしこといづ
一一二―一一四
【七のP】淨火の七界に淨めらるべき七の罪(Peccati)のしるし。たとひ罪の行ひを赦さるともその行ひの本なる邪念を心に宿すときは人天堂に入ること能はず
一一五―一一七
註繹者曰。灰色は懺悔を聞く僧が謙遜の心をもてその任務を果すを表はすと
【二の鑰】天國の鑰(マタイ、一六・一九)
一二一―一二六
金の鑰は人の罪を釋くことをうる僧侶の權能の象徴にて銀の鑰は改悔者の眞の状態を知悉し、その適不適を判ずる僧侶の技能の象徴なり、僧侶もしその一に於て備はらざるところあれば救ひの門ひらかるゝことなし
【價貴し】僧侶キリストの血によりてはじめてかの權能をうけたればなり
【纈を解す】罪ある者の罪と心の状態とを審議してその罪を釋くべきや否やを定むるなり
一二七―一二九
【ピエル】ピエートロ鑰をキリストよりうけてしかして天使に托せるなり(地、一九・九二參照)
一三〇―一三二
【後方を】罪に歸るものは神の恩寵を失ふ(ルカ、九・六二及びマタイ、一二・四三―五參照)
一三六―一三八
【メテルロ】ルキウス・カエキリウス・メテルルス。ローマの保民官なり、カエサルがタルペア岩と稱する岩山(ローマにあり)よりローマの寶物を奪ひ去らんとせし時これを守れるメテルルス爭ひ止めしかども及ばず、轟然の響きとともに堂宇の藏の戸開かれきといふ
【瘠す】寶物を失へるをいふ
一三九―一四一
【最初の響き】門内に入りて聞ける最初の響き即ち歌
【調にまじれる聲】歌謠の抑揚にまじりて歌詞のきこゆるをいふ
【デー・デウム・ラウダームス】Te Deum laudamus(神よ、我等汝を讚美す)有名なるラテン聖歌の一
一四二―一四五
【詞】歌詞。歌詞のあきらかにきこゆることと器聲に壓せられてきこえざることとあるなり
第十曲
詩人等淨火の門より岩間の小徑を登りゆきて山をめぐれる一帶の平地即ち淨火の第一圈にいたり山側なる大理石の上に彫り刻まれし謙遜の例を見また石を負ひて傲慢の罪を淨むる一群の靈にあふ
一―三
【魂の惡き愛】ダンテ思へらく、善惡の行爲すべて愛より出づ(淨、一七・一〇三―五參照)、愛正しければ善行を生み正しからざれば惡業を生む、しかるに人多くは惡に傾くがゆゑに淨火門内に入りて罪を淨むる者稀なり
四―六
【我若し】後を顧みたらんには悔ゆとも及ばざりしなるべし(淨、九・一三二參照)
七―九
【紆行りて】原文、動きて。石の動くをいへるにあらずして路の紆曲するをいへるなり
一〇―一二
路狹ければ側面の岩の路を壓して行手を妨ぐることなき處をえらぶなり
一三―一五
【月】月、床に歸るとはその西に沒するをいふ、滿月より五日目の月(地、二〇・一二七參照)にてその入るは午前九時過なるべし
一六―一九
【針眼】岩間の狹路
【後方に】山後方にかたよりて前方に平地(即ち淨火の圈)を殘せるところ
二二―二四
圈の外側と内側の間即ち幅は人の身長の三倍なり
二五―二七
【臺】cornice 圓柱の上部の意より轉じて淨火の圈の意に用ゐらる
二八―三〇
【垂直にして登るあたはざる】ムーア本、Che, dritta(〔=e'ssendo dirtta quasi a perpendicolo〕), di salita aveva manco 學會本、Che dritto(=possibilita)di, etc. 登るすべなき
三一―三三
【ポリクレート】ポリュクレイトス、有名なるギリシアの彫刻家(前五世紀)
三四―四五
七罪に對する七徳の諸例の中第一例をすべて聖母の事蹟より引けり、第一圈にては聖母の謙遜を徳の第一例とす
【天使】ガブリエル(ルカ、一・二六以下)
救世主の出現を告げ知らせんため天使ガブリエル神より遣はされて聖母マリアの許に來れるさまを表はせり、キリストの降誕によりて神人相和し始祖アダム罪を犯せしよりこの方閉ぢて人の入る能はざりし天開け人はその涙を流して久しく求めしものをえたり
【幸あれ】Aue ガブリエルがマリアにのべし會釋の詞(ルカ、一・二八)
【女】マリア。尊き愛[#「尊き愛」に白丸傍点]は人間に對する神の愛
【神の婢を見よ】マリアの天使にいへる詞(ルカ、一・三八)
四六―四八
【人の心臟のある方】左方
四九―五一
【後方】聖母の像よりなほ右に當る方即ちウェルギリウスのゐたる方
五五―六九
第二の例としてイスラエル王ダヴィデの謙遜を擧ぐ
【聖なる匱】神がモーゼに命じて作らせたまひし契約の匱(出エヂプト記、二五・一〇以下)、ダヴィデこれをイエルサレムに移さんとてアビナダブの家より曳出せり(サムエル後、六・一以下)
【人この事により】ウザが神の命なきに手を契約の匱に觸れ、神罰をうけて死せること(サムエル後、六・六―七)を思ひ
【七の組】ラテン語譯の聖書にseptem choriとあるによれり
【一に否と】民の歌をうたふさま眞に逼れば耳は彼等うたはずといへど目は否彼等歌ふといふ
【目と鼻】目は香ありといひ鼻はこれなしといふ
【聖歌の作者】詩篇の詩人、王ダヴィデ
【衣ひき※[#「寨」の「木」に代えて「衣」、第3水準1−91−84]げ】サムエル、後六・二〇參照
【器】神の匱
【王者に餘り】身もあらはに亂舞せること王者にふさはしき振舞にあらず(足らず)、されどこれ皆
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