、かの尊《たふと》き民|手背《てのおもて》をもて示して曰ふ。さらば身をめぐらして先に進め。 一〇〇―一〇二
またそのひとりいふ。汝誰なりとも、かく歩みつゝ顏をこなたにむけて、世に我を見しことありや否やをおもへ。 一〇三―一〇五
我即ちかなたにむかひ、目を定めて彼を見しに、黄金《こがね》の髮あり、美しくして姿けだかし、されど一の傷ありてその眉の一を分てり 一〇六―一〇八
我謙《へりく》だりていまだみしことなしとつぐれば、彼はいざ見よといひてその胸の上のかたなる一の疵を我に示せり 一〇九―一一一
かくてほゝゑみていふ。我は皇妃コスタンツァの孫マンフレディなり、此故にわれ汝に請ふ、汝歸るの日 一一二―一一四
シチーリアとアラーゴナの名譽《ほまれ》の母なるわが美しき女《むすめ》のもとにゆき、世の風評《さた》違はば實《まこと》を告げよ 一一五―一一七
わが身二の重傷《いたで》のために碎けしとき、われは泣きつゝ、かのよろこびて罪を赦したまふものにかへれり 一一八―一二〇
恐しかりきわが罪は、されどかぎりなき恩寵《めぐみ》そのいと大いなる腕《かひな》をもて、すべてこれに歸るものをうく 一二一―一二三
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