ツひにカトーの戒めを受く
一―三
四月十日午前六時に近き頃即ち淨火の朝イエルサレム(ゼレサレムメ)の夕、イスパニアの晝、インドの夜なり
【天涯】イエルサレムは北半球の子午線のいと高き處にあり(地、三四・一一二―七註參照)、しかして淨火はイエルサレムの反對面にあるが故にその地平線は即ち聖都の地平線と同じ
四―六
【夜】夜(即ち夜半)は日と反對の天にあり(地、二四・一―三註參照)而して日は此時白羊宮にあるがゆゑに夜はその反對面の天宮即ち天秤宮にあり、日の登るに從つて夜はインドなるガンジスの河口を去り、次第に西に向ふ
【その手より落つ】秋分にいたれば日天秤宮に入る、これ故に天秤夜の手を離るといへり、秋分以降夜は次第に晝より長し
七―九
【アウローラ】エオス、明方《あけがた》の空色を朝の女神と見做せるなり。この色始め白く後赤く日出づるに及びて橙黄色となる、恰も女神の老ゆるにつれてその頬の色變るに似たり
一〇―一二
【路のことをおもひて】路定かならざるため
一三―一五
【濃き霧】火星の赤色に濃淡あるはこれを蔽ふ水氣の厚薄によるといふこと『コンヴィヴィオ』二、一四・一六一以下に見ゆ
一六―一八
【光】天使
【あゝ我】死後救はるゝものの群に入りて再びこの光を見るをえんことを
二二―二四
【白き物】光の左右の白き物は天使の翼下方の白き物はその衣なり
三一―三三
【隔たれる】テーヴェレ(テーヴェル・テーヴェロ)の河口(一〇〇―一〇二行並びに註參照)と淨火の島の間の如く遠くへだたれる
三四―三六
【朽つべき毛】鳥の羽等
三七―三九
【神の鳥】天使。翼あるによりて鳥といふ
四三―四五
【福その】parea beato per iscripto 消えざる福その姿にあらはる
異本。〔fari`a beato pur descritto〕 その姿振舞いと尊ければ彼を見ずともたゞそのありさまを聞くのみにて人福をえんとの意
四六―四八
【イスラエル】詩篇一一四の初めにあり、イスラエルの族エヂプトを出で奴隷の境界を脱して神の自由民となれりとの聖經の歴史には魂罪の絆を離れ榮光かぎりなき自由を得るの意含まるゝがゆゑに(『コンヴィヴィオ』三、一・五二以下及びダンテがカン・グランデ・デルラ・スカーラに與ふる書一四九行以下參照)新たに來れる魂等特にこの聖歌をうたへるなり
五五―五七
【磨羯】白羊宮地平線上にある時磨羯宮は中天にあり、白羊宮の太陽次第に登るに從ひ磨羯宮は中天より次第に西方に傾きはじむ
六七―六九
【呼吸】地、二三・八八參照
七〇―七二
【橄欖】橄欖の枝は古へ平和のしるしとして用ゐしものなりしがダンテの時代にては平和勝利等おしなべて吉報を齎らす使者これを手にする例なりきといふ
七三―七五
【美しくする】罪を淨むる
七六―七八
【ひとり】カセルラ。ダンテの親友にして歌を善くす、傳不詳
七九―八一
【三度】『アエネイス』(六・七〇〇以下)にアエネアス冥府にくだりて父アンキセスの魂にあひ三度これを抱かんとせることいづ、その一節に曰く
抱けどかひなし父の姿はたゞ輕き風かりそめの夢にひとしく三度《みたび》その手をはなれたり
八八―九〇
【紲】肉體の
九一―九三
【再び】この旅路の教訓に基づきて徳の生涯を送り、死後救ひを得て魂再びこの處に歸らんため
【かく多く時を】汝の死せるは久しき以前のことなるに今漸くこゝに來れるは何故ぞや
異本、「かく大いなる國」(即ち淨火)とあり、意の歸する所同じ
九四―九六
【もの】載すべき時を定め載すべき魂をえらびてこれを船に載せ淨火の島に送る天使
九七―九九
【正しき意】天意
【三月の間】法王ボニファキウス八世の令旨の中なる大赦の初めの日、即ち一二九九年のキリスト降誕祭より(地、一八・二八―三〇註參照)一三〇〇年四月十日まで三箇月餘の間をいふ。大赦の恩惠に浴するもの悉く天使の船に乘るをうるなり
テーヴェレの河口に集まる魂皆船に乘るをうれども生前の徳不徳によりてその乘るに先後あり、さればカセルラも屡※[#二の字点、1−2−22]天使に拒まれて空しく時をすごせるうちジユビレーオの年いたりて特に渡海を許されしなり
一〇〇―一〇二
【テーヴェロ】ローマを過ぐる著名の川なればローマの寺院を代表す、地獄に下らざるもの萬國よりこの河口にあつまるといへるは寺院が救はるゝ魂を神と結びて淨めの途につかしむるを示せるなり
一〇三―一〇五
【アケロンテ】地獄の川(地、三・七〇以下)
一〇六―一〇八
【律法】境遇の變化にともなひて新たなる天の律法のもとにおかれ、そのため昔の技能をあらはす能はざるにあらずば
一一二―一一四
【わが心の中に】Amor che ne la mente mi ragiona ダンテの歌集にある歌の始めの一行なり、『コンヴィヴィオ』第三篇にこ
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