の願ひわが目をしてかのたえずグリフォネの上にとまれる光ある目にそゞがしむれば 一一八―一二〇
二樣の獸は忽ち彼忽ち此の姿態《みぶり》をうつしてその中にかゞやき、そのさま日輪の鏡におけるに異なるなかりき 一二一―一二三
讀者よ、物みづから動かざるにその映《うつ》れる象《かたち》變るを視しとき我のあやしまざりしや否やを思へ 一二四―一二六
いたくおどろき且つまた喜びてわが魂この食物《くひもの》(飽くに從ひていよ/\慾を起さしむ)を味へる間に 一二七―一二九
かのみたりの女、姿に際《きは》のさらにすぐれて貴《たか》きをあらはし、その天使の如き舞の詞《しらべ》につれてをどりつゝ進みいでたり 一三〇―一三二
むけよベアトリーチェ、汝に忠實《まめやか》なるものに汝の聖なる目をむけよ、彼は汝にあはんとてかく多くの歩履《あゆみ》をはこべり 一三三―
ねがはくは我等のために汝の口を彼にあらはし、彼をして汝のかくす第二の美を辨《わきま》へしめよ。是彼等の歌なりき ―一三八
あゝ生くるとこしへの光の輝《かゞやき》よ、パルナーゾの蔭に色あをざめまたはその泉の水をいかに飮みたる者といふとも 一三九―一四一
汝が濶《ひろ》き空氣の中に汝の面※[#「巾+白」、第4水準2−8−83]《かほおほひ》を脱《ぬ》ぎて天のその調《しらべ》をあはせつゝ汝の上を覆ふ處に現はれし時の姿をば寫し出さんとするにあたり 一四二―一四四
豈その心を亂さざらんや
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第三十二曲
十年《ととせ》の渇《かわき》をしづめんため、心をこめてわが目をとむれば、他の官能はすべて眠れり 一―三
またこの目には左右に等閑《なほざり》の壁ありき、聖なる微笑《ほゝゑみ》昔の網をもてかくこれを己の許に引きたればなり 四―六
このときかの女神等《めがみたち》、汝あまりに凝視《みつむ》るよといひてしひてわが目を左の方にむかはしむ 七―九
日の光に射られし目にてたゞちに物を見る時のごとく、我やゝ久しくみることあたはざりしかど 一〇―一二
視力|舊《もと》に復《かへ》りて小《ちひ》さき輝《かゞやき》に堪ふるに及び(わがこれを小さしといへるはしひてわが目を離すにいたれる大いなる輝に比ぶればなり) 一三―一五
我は榮光の戰士《つはもの》等が身をめぐらして右にむかひ、日と七の焔の光を顏にうけつゝ歸るを見たり 一六―一八
たとへば一の隊伍の、己を護らんとて盾《たて》にかくれ、その擧りて方向《むき》を變ふるをえざるまに、旗を持ちつゝめぐるがごとく 一九―二一
かの先に進める天の王國の軍人《いくさびと》等は、車がいまだその轅《ながえ》を枉げざるまに、皆我等の前を過ぐ 二二―二四
是に於てか淑女等は輪のほとりに歸り、グリフォネはその羽の一をも搖《ゆる》がさずしてたふとき荷をうごかし 二五―二七
我をひきて水を渉れる美しき淑女とスターツィオと我とは、轍《わだち》に殘せし弓の形の小さき方《かた》なる輪に從ひ 二八―三〇
かくしてかの高き林、蛇を信ぜし女の罪に空しくなりたる地をわけゆけば、天使のうたふ一の歌我等の歩履《あゆみ》を齊《とゝの》へり 三一―三三
彎《ひ》き放たれし矢の飛ぶこと三|度《たび》にして屆くとみゆるところまで我等進めるとき、ベアトリーチェはおりたちぬ 三四―三六
衆皆聲をひそめてアダモといひ、やがて枝に花も葉もなき一|本《もと》の木のまはりを卷けり 三七―三九
その髭は森の中なるインド|人《びと》をも驚かすばかりに高く、かつ高きに從ひていよ/\伸び弘《ひろ》がれり 四〇―四二
福なるかなグリフォネよ、この木口に甘しといへどもいたく腹をなやますがゆゑに汝これを啄《ついば》まず。 四三―四五
たくましき木のまはりにて衆かくよばはれば、かの二樣の獸は、すべての義の種かくのごとくにして保たるといひ 四六―四八
曳き來れる轅《ながえ》にむかひつゝこれを裸なる幹の下《もと》にひきよせ、その小枝をもてこれにつなげり 四九―五一
大いなる光天上の魚の後《うしろ》にかゞやく光にまじりて降るとき、わが世の草木《くさき》 五二―五四
膨れいで、日がその駿馬《しゆんめ》を他の星の下に裝はざるまに、各※[#二の字点、1−2−22]その色をもて姿を新たにするごとく 五五―五七
さきに枝のさびれしこの木、薔薇《ばら》より淡《うす》く菫より濃き色をいだして新たになりぬ 五八―六〇
このときかの民うたへるも我その歌の意《こゝろ》を解《げ》せず――世にうたはるゝことあらじ――またよく終りまで聞くをえざりき 六一―六三
我若しかの非情の目、その守《まもり》きびしきために高き價を拂へる目が、シリンガの事を聞きつゝ眠れる状《さま》を寫すをうべくば 六四―
我自らの眠れるさまを、恰も樣式《かた》を見てゑがく畫家の如くに録《しる》さん
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