らせ、後己が材としてその固《かた》め整《とゝの》へる物に生命《いのち》を與ふ 四九―五一
活動の力恰も草木の魂の如きものとなりて(但し一は道程にあり一は彼岸に達す、異なるところたゞこれのみ)後 五二―五四
なほその作用《はたらき》をとゞめず、この物動きかつ感ずること海の菌の如きにいたれば、さらに己を種として諸※[#二の字点、1−2−22]の力を組立てはじむ 五五―五七
子よ、生む者の心臟即ち自然が諸※[#二の字点、1−2−22]の肢體に意を用ゐる處よりいづる力は今や既に弘がりて延ぶ 五八―六〇
されど汝は未だ生物のいかにして人間となるやを聞かず、こは汝よりさとかりし者の嘗て誤れる一の點なり 六一―六三
そは彼靜智に當つべき何の機官をも見ざるによりて、その教への中にこれを魂より離れしめたればなり 六四―六六
汝わが陳ぶる眞《まこと》にむかひて胸をひらき、而して知るべし、胎兒における腦の組織《くみたて》全く成り終るや否や 六七―六九
第一の發動者、自然のかく大いなる技《わざ》をめでてこれにむかひ、力滿ちたる新しき靈を嘘入《ふきい》れたまひ 七〇―七二
靈はかしこにはたらきゐたるものを己が實體の中にひきいれ、たゞ一の魂となりて、且つ生き且つ感じ且つ自ら己をめぐる 七三―七五
汝この言《ことば》をふかくあやしむなからんため、思ひみよ、太陽の熱葡萄の樹よりしたゝる汁と相混《あひまじ》りて酒となるを 七六―七八
ラケージスの絲盡くる時は、この魂、肉の繋《つなぎ》を離れ、人と神とに屬するものをその實質において携ふ 七九―八一
他《ほか》の能力《ちから》はみな默《もだ》せども、記憶、了知及び意志の作用《はたらき》は却つてはるかに前よりも強し 八二―八四
かくて止まらずしてあやしくも自ら岸の一に落ち、こゝにはじめて己が行くべき路を知る 八五―八七
處一たび定まれば、構成《いとなみ》の力たゞちにあたりを輝かし、その状《さま》もその程《ほど》も、生くる肢體におけるに同じ 八八―九〇
しかしてたとへば空氣雨を含むとき、日の光これに映《うつ》るによりて多くの色に飾らるるごとく 九一―九三
あたりの空氣はそこにとゞまれる魂が己の力によりてその上に捺《お》す形をうく 九四―九六
かくてあたかも火の動くところ焔これにともなふごとく、新しき形靈にともなふ 九七―九九
この物この後これによりてその姿を現すがゆゑに影《オムブラ》と呼ばれ、またこれによりて凡ての官能をとゝのへ、見ることをさへ得るにいたる 一〇〇―一〇二
我等これによりて物言ひ、これによりて笑ふ、またこれによりて我等に涙あり歎息《なげき》あり(汝これをこの山の上に聞けるなるべし) 一〇三―一〇五
諸※[#二の字点、1−2−22]の願ひまたはその他の情の我等に作用《はたらき》を及ぼすにしたがひ、影も亦姿を異にす、是ぞ汝のあやしとする事の原因《もと》なる。 一〇六―一〇八
我等はこの時はや最後の曲路にいたりて右にむかひ、心を他《ほか》にとめゐたり 一〇九―一一一
こゝにては岸焔の矢を射、縁《ふち》は風を上におくりてこれを追返さしめ、そこに一の路を空《あ》く 一一二―一一四
されば我等は開きたる處を傳ひてひとり/″\に行かざるをえざりき、我はこなたに火を恐れかなたに下に落《おつ》るをおそれぬ 一一五―一一七
わが導者曰ふ。かたく目の手綱を緊《し》めてこゝを過ぎよ、たゞ些《すこし》の事のために足を誤るべければなり。 一一八―一二〇
この時こよなき[#「こよなき」に白丸傍点]憐憫《あはれみ》の神[#「の神」に白丸傍点]と猛火の懷《ふところ》にうたふ聲我にきこえてわが心をばまたかなたにもむかはしむ 一二一―一二三
かくて我見しに焔の中をゆく多くの靈ありければ、我は彼等を見またわが足元《あしもと》をみてたえずわが視力をわかてり 一二四―一二六
聖歌終れば、彼等は高くわれ夫を知らず[#「われ夫を知らず」に白丸傍点]とさけび、後低く再びこの聖歌をうたひ 一二七―一二九
これを終ふればまた叫びて、ディアーナ森にとゞまりて、かのヴェーネレの毒を嘗めしエリーチェを逐へりといふ 一三〇―一三二
かくて彼等歌に歸り、後またさけびて、徳と縁《えにし》の命ずる如く貞操《みさを》を守れる妻と夫の事を擧ぐ 一三三―一三五
おもふに火に燒かるゝ間は、彼等たえずかく爲すなるべし、かゝる藥かゝる食物《くひもの》によりてこそ 一三六―一三八
その傷《きず》つひにふさがるなれ 一三九―一四一
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第二十六曲
我等かく縁《ふち》を傳ひ一列《ひとつら》となりて歩める間に、善き師しば/\いふ。心せよ、わが誡めを空しうするなかれ。 一―三
はや光をもて西をあまねく蒼より白に變ふる日は、わが右の肩にあたれり 四―六
我は影によりて焔を
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