うちにありとみえしもののごとく大いなる軍《いくさ》を起して 一四五―
その解説《ときあかし》を我に求めしことあらじ、されどいそぎのためにはゞかりてこれを質《たゞ》さず、さりとて自から何事をも知るをえざれば ―一五〇
我は臆しつゝ思ひ沈みて歩みにき 一五一―一五三
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第二十一曲
サマーリアの女の乞ひ求めたる水を飮まではとゞまることなき自然の渇《かわき》に 一―三
なやまされ、かつは急《いそぎ》に策《むちう》たれつゝ、我わが導者に從ひて障《さゝはり》多き道を歩み、正しき刑罰を憐みゐたるに 四―六
見よ、はや墓窟《はかあな》より起き出でたまへるクリストが途をゆく二人《ふたり》の者に現はれしこと路加《ルーカ》の書《ふみ》に録《しる》さるゝごとく 七―九
一の魂我等にあらはる、我等かの伏したる群《むれ》を足元に見ゐたりしときこの者|後《うしろ》に來りしかど我等これを知らざりければ彼まづ語りて 一〇―一二
わが兄弟達よ、神平安を汝等に與へたまへといふ、我等直ちに身をめぐらしぬ、而してヴィルジリオは適《ふさ》はしき表示《しるし》をもてこれに答へて 一三―一五
後曰ひけるは。我を永遠《とこしへ》の流刑《るけい》に處せし眞《まこと》の法廷願はくは汝を福なる集會《つどひ》の中に入れ汝に平和を受けしめんことを。 一六―一八
そは如何《いかに》、汝等神に許されて登るをうる魂に非ずば誰に導かれてその段《きだ》をこゝまで踏みしや。彼かくいひ、いふ間《ま》も我等は疾《と》く行けり 一九―二一
わが師。この者天使の描く標《しるし》を着く、汝これを見ば汝は彼が善き民と共に治むるにいたるをさだかに知らむ 二二―二四
されど夜晝|紡《つむ》ぐ女神《めがみ》は、クロートが人各※[#二の字点、1−2−22]のために掛けかつ押固《おしかた》むる一|束《たば》を未だ彼のために繰《く》り終らざるがゆゑに 二五―二七
汝と我の姉妹なるその魂は登り來るにあたり獨りにて來る能はざりき、そは物を見ること我等と等しからざればなり 二八―三〇
是故に彼に路を示さんため我は曳《ひ》かれて地獄の闊《ひろ》き喉を出づ、またわが教《をし》への彼を導くをうる間は我彼に路を示さむ 三一―三三
然《され》ど汝若し知らば我等に告げよ、山今かの如く搖《ゆる》げるは何故ぞや、またその濡《ぬ》るゝ据に至るまで衆|齊《ひと》しく叫ぶと見えしは何故ぞや。 三四―三六
この問ひよくわが願ひの要《かなめ》にあたれり、されば望みをいだけるのみにてわが渇《かわき》はやうすらぎぬ 三七―三九
彼曰ふ。この山の聖なる律法《おきて》はすべて秩序なきことまたはその習ひにあらざることを容《ゆる》さず 四〇―四二
この地一切の變異をまぬかる、たゞその原因《もと》となるをうべきは天が自ら與へて自ら受くるところの者のみ、この外にはなし 四三―四五
是故に雨も雹も雪も露もまた霜も、かの三の段《きだ》より成れる短き階《きざはし》のこなたに落ちず 四六―四八
濃《こ》き雲も淡《うす》き雲も電光《いなづま》も、またかの世に屡※[#二の字点、1−2−22]處を變ふるタウマンテの女《むすめ》も現はれず 四九―五一
乾ける氣は、わがいへる三の段の頂、ピエートロの代理者がその足をおくところよりうへに登らず 五二―五四
かしこより下は或ひは幾許《いくばく》か震ひ動かむ、されど上は、我その次第を知らざれども、地にかくるゝ風のために震ひ動けることたえてなし 五五―五七
たゞ魂の中に己が清きを感ずる者ありて起《た》ちまたは昇らんとして進む時、この地震ひ、かのごとき喊《さけび》次ぐ 五八―六〇
清きことの證左《あかし》となるものは意志のみ、魂既に全く自由にその侶を變ふるをうるにいたればこの意志におそはれ且つこれを懷くを悦ぶ 六一―六三
意志はげに始めよりあり、されど願ひこれを許さず、こはさきに罪を求めし如く今神の義に從ひ意志にさからひて苛責を求むる願ひなり 六四―六六
我この苦患《なやみ》の中に伏すこと五百年餘に及びこゝにはじめてまされる里に到らんとの自由の望みをいだけるがゆゑに 六七―六九
汝地の震ふを覺え、また山の信心深き諸※[#二の字点、1−2−22]の靈の主(願はくは速かに彼等に登るをえさせたまへ)を讚《ほ》めまつるを聞けるなり。 七〇―七二
彼斯く我等にいへり、しかして渇《かわき》劇しければ飮むの喜び亦從ひて大いなるごとく、彼の言は我にいひがたき滿足を與へき 七三―七五
智《さと》き導者。汝等をこゝに捕ふる網、その解くる状《さま》、地のこゝに震ふ所以、汝等の倶に喜ぶところの物、我今皆これを知る 七六―七八
いざねがはくは汝の誰なりしやを我にしらしめ、また何故にこゝに伏してかく多くの代《よ》を經たるやを汝の詞にて我にあらはせ。
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