曰へり、是に於てかわが師曰ふ。汝答へよ、しかして登りの道のこなたにありや否やを問ふべし。 二八―三〇
我。あゝ身を麗しうして己が造主《つくりぬし》に歸らんため罪を淨むる者よ、汝我にともなはば奇《くす》しき事を聽くをえむ。 三一―三三
答へて曰ふ。我汝に從ひてわが行くをうる間はゆかむ、烟は見るを許さずとも聞くことこれに代りて我等を倶にあらしめむ。 三四―三六
このとき我曰ふ。我は死の解く纏布《まきぎぬ》をまきて登りゆくなり、地獄の苦しみを過ぎてこゝに來れり 三七―三九
神はわがその王宮を、近代《ちかきよ》に全く例《ためし》なき手段《てだて》によりて見るを好《よみ》したまふまで、我をその恩惠《めぐみ》につゝみたまへるなれば 四〇―四二
汝死なざる前《さき》は誰なりしや請ふ隱さず我に告げよ、また我のかくゆきて徑《こみち》にいたるや否やを告げて汝の言を我等の導《しるべ》とならしめよ。 四三―四五
我はロムバルディアの者にて名をマルコといへり、我よく世の事を知り、今はひとりだに狙《ねら》ふ人なき徳を慕へり 四六―四八
汝登らんとてこなたにゆくはよし。かく答へてまたいふ。高き處にいたらば請ふ汝わがために祈れ。 四九―五一
我彼に。我は誓ひて汝の請ふところをなさむ、たゞ我に一の疑ひあり、我もしこれを解かずば死すべし 五二―五四
こは初め單《ひとへ》なりしも今|二重《ふたへ》となりぬ、そは汝の言《ことば》、これと連《つら》なる事の眞《まこと》なるをこゝにもかしこにも定かに我に示せばなり 五五―五七
世はげに汝のいふごとく全く一切の徳を失ひ、邪惡を孕みてかつこれにおほはる 五八―六〇
されど請ふ我にその原因《もと》を指示《さししめ》し、我をして自らこれを見また人にみするをえしめよ、そは或者これを天に歸し或者地に歸すればなり。 六一―六三
憂ひの噫《あゝ》に終らしむる深き歎息《ためいき》をつきて後彼曰ひけるは。兄弟よ、世は盲《めしひ》なり、しかして汝まことにかしこより來る 六四―六六
汝等生者は一切の原因《もと》をたゞ上なる天にのみ歸し、この物必然の力によりてよく萬事を定むとなす 六七―六九
若し夫れ然らば自由の意志汝等の中に滅ぶべく、善のために喜び惡のために悲しみを得るは正しき事にあらざるべし 七〇―七二
天は汝等の心の動《うごき》に最初《はじめ》の傾向《かたむき》を與ふれども、凡て
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