たゝび目をかの美しき淑女にむけたり 一四八―一五〇
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第二十九曲
彼かたりをはれるとき、戀する女のごとく歌ひて、罪をおほはるゝものは福なり[#「罪をおほはるゝものは福なり」に白丸傍点]といひ 一―三
かくてたとへばひとりは日を見ひとりはこれを避けんとて林の蔭をあゆみゆきしさびしきニンファの群《むれ》のごとくに 四―六
岸をつたひ流れにさかのぼりて進み、また我はわが歩みを細《こまか》にしてそのこまかなる歩みにあはせ、これと相並びて行けり 七―九
ふたりの足數合せて百とならざるさきに、岸兩つながら等しくその方向《むき》を變へたれば、我は再び東にむかへり 一〇―一二
またかくしてゆくことなほ未だ遠からざりしに、淑女全くわが方にむかひて、わが兄弟よ、視よ、耳を傾けよといふ 一三―一五
このとき忽ち一の光かの大なる林の四方に流れ、我をして電光《いなづま》なるかと疑はしめき 一六―一八
されど電光はその現はるゝごとく消ゆれど、この光は長くつゞきていよ/\輝きわたりたれば、我わが心の中に是何物ぞやといふ 一九―二一
また一のうるはしき聲あかるき空をわけて流れぬ、是に於てか我は正しき憤りよりエーヴァの膽の大《ふと》きを責めたり 二二―二四
彼は造られていまだ程なきたゞひとりの女なるに、天地《あめつち》神に遵《したが》へるころ、被物《おほひ》の下に、しのびてとゞまることをせざりき
彼その下に信心深くとゞまりたりせば、我は早くまた永くこのいひがたき樂しみを味へるなるべし 二八―三〇
かぎりなき樂しみの初穗かく豐かなるに心奪はれ、たゞいよ/\大いなる喜びをうるをねがひつゝ、我その間を歩みゐたるに 三一―三三
我等の前にて縁の技の下なる空氣燃ゆる火のごとくかゞやき、かのうるはしき音《おと》今は歌となりて聞えぬ 三四―三六
あゝげに聖なる處女《をとめ》等よ、我汝等のために饑ゑ、寒さ、または眠りをしのびしことあらば、今その報《むくい》を請はざるをえず 三七―三九
いざエリコナよわがためにそゝげ、ウラーニアよ、歌の侶とともに我をたすけて、おもふだに難き事をば詩となさしめよ 四〇―四二
さてその少しく先にあたりてあらはれし物あり、我等と是とはなほ離るゝこと遠かりければ、誤りて七の黄金《こがね》の木と見えぬ 四三―四五
されど相似て官能を欺く物その時性の一をも距離《へだゝり》
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