この時|汚《きたな》き欺罔《たばかり》の像《かたち》浮び上りて頭と體《からだ》を地にもたせたり、されど尾を岸に曳くことなかりき 七―九
その顏は義しき人の顏にて一重の皮に仁慈《いつくしみ》をみせ、身はすべて蛇なりき 一〇―一二
二の足には毛ありて腋下に及び、背胸《せむね》また左右の脇には蹄係《わな》と小楯と畫かれぬ 一三―一五
タルターロ人《びと》またはトルコ人の作れる布《きぬ》の浮織《うきおり》の裏文表文《うらあやおてあや》にだにかく多くの色あるはなく、アラーニエの機《はた》にだに 一六―
かゝる織物かけられしことなし、たとへばをりふし岸の小舟の半《なかば》水に半|陸《くが》にある如く、または食飮《くひのみ》しげきドイツ人《びと》のあたりに
海狸戰ひを求めて身を構ふる如く、いとあしきこの獸は砂を圍める石の縁《ふち》にとゞまりぬ ―二四
蠍《さそり》の如く尖《さき》を固めし有毒《うどく》の叉《また》を卷き上げて尾はこと/″\く虚空に震へり 二五―二七
導者曰ふ、いざすこしく路を折れてかしこに伏せるあしき獸にいたらむ 二八―三〇
我等すなはち右にくだり、砂と炎を善く避けんため端《はし》
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