五七
泣きて曰ひけるは、汝若し才高きによりてこの失明《くらやみ》の獄《ひとや》をめぐりゆくをえば、わが兒はいづこにありや、かれ何ぞ汝と共にあらざる 五八―六〇
我彼に、われ自ら來れるにあらず、かしこに待つ者我を導きてこゝをめぐらしむ、恐らくはかれは汝のグイードの心に侮りし者ならん 六一―六三
かれの言《ことば》と刑罰の状《さま》とは既にその名を我に讀ましめ、わが答かく全きをえしなりき 六四―六六
かれ忽ち起きあがり叫びていひけるは、汝何ぞ「りし」といへるや、彼猶生くるにあらざるか、麗しき光はその目を射ざるか 六七―六九
わがためらひてとみに答へざりしをみ、かれは再び仰《あふの》きたふれ、またあらはれいづることなかりき 七〇―七二
されど我に請ひて止まらしめし心大いなる者、顏をも變へず頸をも動かさずまた身をも曲げざりき 七三―七五
かれさきの言を承けていひけるは、彼等もしよくこの術《わざ》を習はざりきとならば、その事この床《とこ》よりも我を苦しむ 七六―七八
されどこゝを治むる女王の顏燃ゆることいまだ五十度《いそたび》ならぬ間《ま》に、汝自らその術《わざ》のいかに難きやをしるにいたらむ
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