またわが手を危ぶみ、おのが手をもてわが目を蔽へり 五八―六〇
あゝまことの聰明《さとり》あるものよ、奇《くす》しき詩のかげにかくるゝをしへを見よ 六一―六三
この時既にすさまじく犇《ひし》めく物音濁れる波を傳ひ來りて兩岸これがために震へり 六四―六六
こはあたかも反する熱によりて荒れ、林を打ちて支ふるものなく、枝を折り裂き 六七―
うち落し吹きおくり、塵を滿たしてまたほこりかに吹き進み、獸と牧者を走らしむる風の響きのごとくなりき ―七二
かれ手を放ちていひけるは、いざ目をかの年へし水沫《みなわ》にそゝげ、かなた烟のいと深きあたりに 七三―七五
たとへば敵なる蛇におどろき、群居《むれゐ》る蛙みな水に沈みて消え、地に蹲まるにいたるごとく 七六―七八
我は一者《ひとり》の前を走れる千餘の滅亡《ほろび》の魂をみき、この者|徒歩《かち》にてスティージェを渡るにその蹠《あしうら》濡るゝことなし 七九―八一
かれはしば/\左手《ゆんで》をのべて顏のあたりの霧をはらへり、その疲れし如くなりしはたゞこの累《わづらひ》ありしためのみ 八二―八四
我は彼が天より遣はされし者なるをさだかに知りて師にむかへるに
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