を上りゆくは我等(彼輕く我押さるゝも)にだに難きわざなりき 三一―三三
若しこの堤の一側《かたがは》對面《むかひ》の側《かは》より短かゝらずば、彼のことはしらねど、我は全く力盡くるにいたれるなるべし 三四―三六
されどマーレボルジェはみないと低き坎《あな》の口にむかひて傾くがゆゑに、いづれの溪もそのさまこの理にもとづきて 三七―三九
彼岸《かのきし》高く此岸ひくし、我等はつひに最後の石の碎け散りたる處にいたれり 四〇―四二
上り終れる時はわが氣息《いき》いたく肺より搾《しぼ》られ、我また進むあたはざれば、着くとひとしくかしこに坐れり 四三―四五
師曰ひけるは、今より後汝つとめて怠慢《おこたり》に勝たざるべからず、夫れ軟毛《わたげ》の上に坐し、衾《ふすま》の下に臥してしかも美名《よきな》をうるものはなし 四六―四八
人これをえず徒《いたづら》にその生命《いのち》を終らば地上に殘すおのが記念《かたみ》はたゞ空《そら》の烟《けぶり》水の泡抹《うたかた》のみ 四九―五一
此故に起きよ、萬《よろづ》の戰ひに勝つ魂もし重き肉體と共になやみくづほるゝにあらずば之をもて喘《あへぎ》に勝て 五二―五四
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