義の業《わざ》みゆ 四―六
めなれぬものをさだかに知らしめんためさらにいはんに、我等は一草一木をも床《ゆか》に容れざる一の廣野につけり 七―九
憂ひの林これをめぐりて環飾《わかざり》となり、さながら悲しみの濠の林に於ける如くなりき、こゝに我等|縁《ふち》いと近き處に足をとゞめぬ 一〇―一二
地は乾ける深き砂にてその状《さま》そのかみカートンの足踏めるものと異なるなかりき 一三―一五
あゝ神の復讎よ、わがまのあたり見しことを讀むなべての人の汝を恐るゝこといかばかりなるべき 一六―一八
我は裸なる魂の多くの群《むれ》を見たり、彼等みないと幸《さち》なきさまにて泣きぬ、またその中に行はるゝ掟《おきて》一樣ならざるに似たりき 一九―二一
仰《あふの》きて地に臥せる民あり、全《また》く身を縮めて坐せるあり、またたえず歩めるありき 二二―二四
めぐりゆくものその數《かず》いと多し、また臥して苛責をうくるものはその數いと少なきもその舌歎きによりて却つて寛《ゆる》かりき 二五―二七
砂といふ砂の上には延びたる火片《ひのひら》しづかに降りて、風なき峻嶺《たかね》の雪の如し 二八―三〇
昔アレッサンドロ、インドの熱き處にて焔その士卒の上に落ち地にいたるも消えざるをみ 三一―三三
火はその孤なるにあたりて消し易かりしが故に部下に地を踏ましめしことありき 三四―三六
かくの如く苦患《なやみ》を増さんとて永遠《とこしへ》の熱おちくだり、砂の燃ゆることあたかも火打鎌の下なる火口《ほくち》にひとしく 三七―三九
忽ちかなたに忽ちこなたに新《あらた》なる焔をはらふ幸《さち》なき雙手《もろて》の亂舞《トレスカ》にはしばしの休みもあることなかりき 四〇―四二
我曰ふ、門の入口にて我等にたちむかへる頑《かたくな》なる鬼のほか物として勝たざるはなき汝わが師よ 四三―四五
火をも心にとめざるさまなるかの大いなる者は誰なりや、嘲りを帶び顏をゆがめて臥し、雨もこれを熟《う》ましめじと見ゆ 四六―四八
われ彼の事をわが導者に問へるをしりて彼叫びていひけるは、死せる我生ける我にかはらじ 四九―五一
たとひジョーヴェ終りの日にわが撃たれたる鋭き電光《いなづま》を怒れる彼にとらせし鍛工《かぢ》を疲らせ 五二―五四
またはフレーグラの戰ひの時の如くに、善きヴルカーノよ、助けよ、助けよとよばはりつゝモンジベルロなる黒き鍛工場《かぢば》に 五五―
殘りの鍛工等をかはる/″\疲らせ、死力を盡して我を射るとも、心ゆくべき復讎はとげがたし ―六〇
この時わが導者聲を勵まして(かく高らかに物言へるを我未だ聞きしことなかりき)いひけるは、カパーネオよ、汝の罰のいよ/\重きは汝の慢心の盡きざるにあり、汝の劇しき怒りのほかはいかなる苛責の苦しみも汝の怒りにふさはしき痛みにあらじ 六一―六六
かくいひて顏を和らげ、我にむかひていひけるは、こはテーベを圍める七王の一《ひとり》にて神を侮れる者なりき 六七―
いまも神を侮りて崇《あが》むることなしとみゆ、されどわが彼にいへる如く彼の嘲りはいとにつかしきその胸の飾なり ―七二
いざ我に從へ、またこの後愼みて足を熱砂に觸れしむることなく、たえず森に沿ひて歩むべし 七三―七五
我等また語らず、さゝやかなる一の小川の林の中より迸る處にいたれり、その赤きこといまもわが身を震へしむ 七六―七八
さながらブリカーメより細き流れ(罪ある女等ほどへてこれをわけもちふ)の出づる如く、この川砂を貫いて下り 七九―八一
その水底《みなそこ》、傾ける兩岸、縁《ふち》はみな石と成れり、此故に我こゝに行手の路あるを知りき 八二―八四
閾を人のこゆるに任《まか》す門より内に入りしこのかた、凡てわが汝に示せるものゝうちすべての焔をその上に消すこの流れの如くいちじるしきは汝の目未だ見ず 八五―八七
これわが導者の言なりき、我乃ち彼に請ひ、慾を我に惜しまざりし彼の、食をも惜しむなからんことを求めぬ 九一―九三
この時彼曰ふ、海の正中《たゞなか》に荒れたる國あり、クレータと名づく、こゝの王の治世の下《もと》、世はそのかみ清かりき 九四―九六
かしこにそのかみ水と木葉《このは》の幸《さち》ありし山あり、イーダと呼ばる、今は荒廢《あれすた》れていと舊《ふ》りたるものゝごとし 九七―九九
そのかみレーアこれをえらびてその子の恃《たのみ》の搖籃となし、その泣く時特に善くかくさんためかしこに叫びあらしめき 一〇〇―一〇二
この山の中には一人《ひとり》の老巨人の直立するあり、背をダーミアータにむけ、ローマを見ること己が鏡にむかふに似たり 一〇三―一〇五
その頭は純金より成り、腕と胸とは純銀なり、そこより跨《また》にいたるまでは銅 一〇六―一〇八
またその下はすべて精鐡なれどもたゞ右足のみは燒土にてしかも彼の
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