なからんため補充《おぎなひ》の途を求めたまへ、彼、げに我もまたその事をおもへるなり 一三―一五
又曰ひけるは、わが子よ、これらの岩の中に三の小さき獄《ひとや》あり、その次第をなすこと汝が去らんとする諸※[#二の字点、1−2−22]の獄の如し 一六―一八
これらみな詛ひの魂にて滿たさる、されどこの後汝たゞ見るのみにて足れりとするをえんため、彼等の繋がるゝ状《さま》と故《ゆゑ》とをきけ 一九―二一
夫れ憎《にくみ》を天にうくる一切の邪惡はその目的《めあて》非を行ふにあり、しかしてすべてかゝる目的は或は力により或は欺罔《たばかり》によりて他を窘《くるし》む 二二―二四
されど欺罔は人特有の罪惡なれば、神意に悖ること殊に甚し、この故にたばかる者低きにあり、かれらを攻むる苦患《なやみ》また殊に大なり 二五―二七
第一の獄《ひとや》はすべて荒ぶる者より成る、されど力のむかふところに三の者あれば、この獄また三の圓にわかたる 二八―三〇
力の及びうべきところに神あり、自己《おのれ》あり、隣人《となりびと》あり、こは此等と此等に屬《つ》けるものゝ謂なることわれなほ明かに汝に説くべし 三一―三三
力隣人に及べば死となりいたましき傷となり、その持物におよべば破壞、放火、また不法の掠奪となる 三四―三六
この故に人を殺す者、惡意より撃つ者、荒らす者、掠むる者、皆類にわかたれ、第一の圓これを苛責す 三七―三九
人|暴《あらび》の手を己が身己が産にくだすことあり、この故に自ら求めて汝等の世を去り 四〇―
またはその産業を博奕によりて盡し、費し盡し、喜ぶべき處に歎く者|徒《いたづら》に第二の圓に悔ゆ ―四五
心に神を無《な》みし神を誹り、また自然と神の恩惠《めぐみ》をかろんずるは、これ人神にむかひてその力を用ふるものなり 四六―四八
この故に最小の圓はその印をもてソッドマ、カオルサ、また心より神を輕んじかつ口にする者を封ず 四九―五一
欺罔《たばかり》は(心これによりて疚《やま》しからぬはなし)人之を己を信ずるものまたは信ぜざるものに行ふ 五二―五四
後者はたゞ自然が造れる愛の繋《つなぎ》を斷つに似たり、この故に僞善、諂諛、人を惑はす者 五五―
詐欺、竊盜、シモエア、判人《ぜげん》、汚吏、およびこのたぐひの汚穢《けがれ》みな第二の獄《ひとや》に巣《す》くへり ―六〇
前者にありては自然の造れる愛と、その後これに加はりて特殊の信を生むにいたれるものとともにわすらる 六一―六三
この故に宇宙の中心ディーテの座所ある最小の獄にては、すべて信を賣るもの永遠《とこしへ》の滅亡《ほろび》をうく 六四―六六
我、師よ、汝の説くところまことに明かに、この深處《ふかみ》とその中なる民をわかつことまことによし 六七―六九
されど我に告げよ、泥深き沼にあるもの、風にはこばるゝもの、雨に打たるゝもの、行當りて罵るもの 七〇―七二
もし神の怒りに觸れなば何ぞ罰を朱《あけ》の都の中にうけざる、またもし觸れずば何故にかゝる状態《さま》にありや 七三―七五
彼我に曰ふ、汝の才何ぞその恆《つね》をはなれてかく迷ふや、またさにあらずば汝の心いづこをか視る 七六―七八
汝は天の許さゞる三の質《さが》、即ち放縱、邪惡、狂へる獸心をつぶさにあげつらひ 七九―
また放縱は神の怒りにふるゝこと少なく誹りを招くこと少なきをいへる汝の倫理の言を憶《おも》はずや ―八四
汝善くこの教へを味ひ、かつ上に外《そと》に罰をうくるものゝ誰なるやを恩ひ出でなば 八五―八七
また善く何故に彼等この非道の徒《ともがら》とわかたれ、何故に彼等を苛責する神の復讎の怒りかへつて輕きやを見るをえん 八八―九〇
我曰ふ、あゝ一切のみだるゝ視力を癒す太陽よ、汝解くにしたがひて我心をたらはすが故に、疑ひの我を喜ばすこと知るにおとらじ 九一―
請ふなほ少しく溯りて、高利を貪るは神恩にさからふものなりとの汝の言に及び、その纈《むすび》を解け ―九六
彼我に曰ふ、哲理はこれを究むる者に自然が神の智とその技《わざ》よりいづるを處々に示せり 九七―
汝また善く汝の理學を閲《けみ》せば、いまだ幾葉ならざるに汝等の技《わざ》のつとめて
自然に從ふこと弟子のその師における如く、汝等の技は神の孫なりともいひうべきを見ん ―一〇五
人みな生の道をこの二のものに求め、しかして進むべきなり、汝『創世記』の始めにこの事あるを思ひ出づべし 一〇六―一〇八
しかるに高利を貪るものは、これと異なる道を踏みて望みを他《ほか》に置き、自然とその從者をかろんず 一〇九―一一一
されどいざ我に從へ、われ行くをねがへばなり、雙魚天涯に煌《きら》めき、北斗全くコーロの上にあり 一一二―一一四
しかもくだるべき斷崖《きりぎし》なほこゝより遠し 一一五―一一七
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