オむの意を寓せるなり
九四―九九
【コスタンティーン】コンスタンティヌス。當時の傳説に曰、コンスタンティヌスはキリスト教徒を迫害せるため冥罰によりて癩を病めり時に一醫の言を進むるあり曰ふ小兒を集めその血を絞り大帝自らこれに浴せば病即ち癒えんと、無辜の兒童等宮廷に集めらるゝに及び母の號泣する聲大帝の耳に入る大帝小兒を殺すにしのびずこれを殺さんよりは我むしろ死を待つべしといふ、この憐憫の情上帝の嘉納し給ふところとなりペテロ、パウロの兩聖徒夜帝にあらはれてシルヴェステル(地、一九・一一五―七註參照)を訪ふべしと告ぐ、この頃シルヴェステルは迫害を避けてシラッティといふローマ附近の山中にひそみゐたりければ大帝即ちこゝに赴き洗禮をうけてキリスト教徒となり癩病全く癒えたり、かの有名なる大帝供物の一條(地、一九・一一五―七)もまたこの事に基づきてなりと
【傲の熱を】コロンナ一家を倒してひとり勝を誇らんとの熱望を達せんとて
一〇〇―一〇二
【ペネストリーノ】八五―七行註參照
一〇三―一〇五
【鑰】天國の(地、一九・九二參照)
【我よりさきに】ケレスティヌス五世、位を退けるを鑰を尊まずといへり(地、三・五八―六〇註參照)
一〇六―一一一
【長く約し】ペネストリーノをわが物とする策は他にあらず、多くの事を約束してしかもその約束を果さざるにあり
ペネストリーノの城危機に瀕し和を乞ふにいたれる時(一二九八年)法王より寛典の沙汰ありければコロンナ家の出なる二人のカルディナレ、法王の許にいたれるに法王はたゞに破門の取消ををせるのみならず彼等の名譽地位財産をももとのまゝならしむる意あることを告げ彼等をこゝに止めおき之と同時に人を遣はしてペネストリーノを占領せしめ盡くこの市を破壞したり
一一二―一一四
【黒きケルビーニ】鬼(地、二三・一三一)、當時色黒き人の形を畫きて鬼となせるより黒きといふ、またケルビーニは九種の天使の一なり、各種の天使天を逐はれて地獄にくだれり
一一八―一二〇
【悔いと願ひ】罪を悔ゆる心と罪を犯さんとの意志とは兩立せず
一二四―一二六
【ミノス】ミノスの八度尾を捲くは罪人の第八の地獄に落つべきものなるを示す(地、五・四以下)
一二七―一二九
【盜む火】罪人をつゝみかくす火乃ち第八嚢(地、二六・四一―二參照)
【衣】炎の
一三三―一三六
【分離を】不和軋轢の種を蒔きそのため罪の重荷を負ふにいたれる者こゝに應分の罰を受く


    第二十八曲

詩人等やがて第九嚢にいたれば鬼に斬られし多くの罪人あり即ち宗教政治の上に不和分爭の種を蒔ける者なり、このうちマホメット、ピエール・ダ・メディチーナ、モスカ、ベルトラムの四人ダンテとかたりて己と侶との事を告ぐ
一―三
【紲なき者】平仄押韻の制限なき者乃ち散文
七―一二
【プーリア】イタリアのナポリの王國を指す
【トロイア人】アエネアスと共にイタリアに來れるトロイア亡命の勇士等。古代ローマの東南に居住せるサンニタ人とローマ人との間に屡※[#二の字点、1−2−22]戰ひ起り(前三四三―二九〇年)サンニタ人遂に征服せらる
異本、ローマ人とありされどダンテはトロイア人をローマ人の意に用ゐしものなればその實同じ
【リヴィオ】ティトゥス・リウィウス、有名なるローマの歴史家(前五九―一六年)、『ローマ史』の著あり
【長き戰ひ】第二のポエニ戰爭(前二一八―二〇一年)とてカルタゴ人とローマ人の間に起れる戰ひなり、この戰ひの中カルタゴの驍將ハンニバル、プーリアのカンナエといふところにて大いにローマの軍を敗ることあり(前二一六年)戰ひ終りて後敵の死者の指より黄金の指輪を集めしに數俵の多きにいたれりといふ(リウィウスの『ローマ史』二三・一二及びダンテの『コンヴィヴィオ』四、五・一六四以下參照)
一三―一八
【ロベルト・グイスカールド】ロベール・ギスカール(天、一八・四八)、ノルマンディの勇將にてプーリア及びカーラブリアに君たり、十一世紀の後半サラセン人並びにギリシア人此等の地をロベールの手より奪はんとして軍敗れ南部イタリアを逐はる
【チェペラン】チェペラーノ。リリス河畔にある町の名、ローマよりナポリ王國に入る通路として重要の地なり、一二六六年シヤルル・ダンジュウ(カルロ・ダンジオ)、ナポリ王國を攻めし時チェペラーノの橋を守れるプーリアの貴族等私怨を懷いてその王マンフレディに背き、橋を敵の過ぐるに任し遂にベネヴェントの激戰となりマンフレディ戰場の露と消ゆ、註釋者多くはダンテのチェペラーノは乃ち間接にベネヴェントの戰ひを指せるものなるべしといふ
【ターリアコッツォ】アブルッツォ國の一城市(ローマの東)
【アーラルド】エラール・ド・ヴァレリ。フランス軍の將なり、マンフレディ殪れシャルル一世既にプーリアに王たるにいたりしも、マンフレデ
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