f・ボナーコルシ、市の平和の爲と稱しアルベルトに勸めてまづ多くの貴族を市外に逐はしめ後遂にアルベルトを逐ひ自らマントヴァの君となれり
九七―九九
【由來】『アエネイス』一〇の一九八以下には
オクヌスもまた一隊を率ゐて故國の岸より來れり、彼は卜者マントとエトルリアの川(テーヴェレ川)の間の子にて、マントヴァよ、汝に石垣と母の名を與へし者なり
とあり、ダンテの説とウェルギリウスの説に多少の差あること知るべし、思ふに或人の云へる如くダンテは當時の傳説若しくは記録に據りて一種の由來説を得たればこゝにウェルギリウスの口を借りてかく陳ぶるに至れるならむ
一〇六―一〇八
【男子なく】丈夫悉くトロイアの戰ひに赴き幼兒新に生るゝことなければ搖籃多くは空しきなり
一〇九―一一一
【卜者】ギリシア軍中の卜者エウリピロス
【カルカンタ】同じくギリシア軍中の卜者
【アウリーデ】アウリス。ギリシア軍のトロイアにむかひて船出せし港
一一二―一一四
【悲曲】『アエネイス』。これを悲曲といへるは詩材文體の高逸なるによりてなり(ダンテの『デ・ウルガーリ・エーロクエンチァー』二、四の三八以下)
【いづこにか】二の一一四以下
『アエネイス』にはたゞ反間者シノンの詞の中ギリシア軍がトロイアを去らんとしてエウリピロスにアポロンの宣託を受けしめし事あるのみアウリス解纜に關しては何等の記事なし、されば或人はこゝにかく歌へるといへるは彼の卜者なることを歌へる意に外ならずと解せり
一一五―一一七
【ミケーレ・スコット】スコットランドの人、十三世紀の始めローマ皇帝フリートリヒ二世の朝に仕へて妖術を行へりといふ
一一八―一二〇
【グイード・ボナッティ】イタリア、フォルリの星學者(十三世紀の後半)
【アスデンテ】イタリアのパルマ市の靴師、マエストロ・ベンヴェヌートといひアスデンテはその綽名なり、本業の傍卜筮を習ひ遂には卜者として世に知らるゝにいたれり(十三世紀の半)
一二一―一二三
【草】或種類の草の液を用ゐて術を行ふこと、オウィディウスの『メタモルフォセス』第七卷(二三二行以下)にメデイアがイアソンの父を若返らしめんとて多くの奇しき草を集め根を煎じてその液を用ゐしこといづ
【偶人】人の形を蝋の類にて作り或ひは火にかけ或ひは頸に針を打ちて術を行ふこと
一二四―一二六
【カイーノと茨】月
月の斑點の形人に似たるより古の俗説にこはカイン(カイノ)(創世記第四章始め)が賞罰をうけ神に顧みられざりし野の植物を肩にして立てる姿なりといへるによれり(天、二・五以下參照)
【南半球】南半球は聖都イエルサレムと淨火の山を二個の頂點としイスパニアとインドの一部を境として分割せる南北二個の半球(三二六頁插圖參照)、その境を占むるは地平線にかゝるなり
【ソビリア】ゾビリア、イスパニアの西南にある町、月の沈むは年前六時頃
一二七―一二九
【昨夜】四月八日の前の夜にてこの時よりいへば一昨夜なり
【しば/\】しば/\路を照して


    第二十一曲

かくて第五嚢の上にいたれば下には煮ゆる脂たゝへ公私の職を利用して己の慾をはかれる者其中に沈めらる、ウェルギリウス、ダンテを岩蔭にかくし自らまづ進みて第六の堤に達し鬼の長マラコダとかたり後ダンテを呼びて一群の鬼と共に左に堤を傳ふ
一―三
【コメディア】地、一六・一二七―九註參照
七―九
【船廠】ヴェネツィア市の東端にあり、中古、世に名高き船廠なりしといふ
一〇―一二
【彼等】ヴェネツィア人
三七―四二
或ひは、彼いふ我等の橋のマーレブランケよ
【マーレブランケ】(禍ひの爪)第五嚢を守る鬼の總稱
【聖チタ】ルッカ市
聖チタは一二一八年ルッカの西北約五十哩にあるボントレモリの附近に生れ無垢の一生をルッカに送り一二七二年に死せる比丘尼の名なり、ルッカの人々特に尊び敬ふをもて町の名の代りとす
【アンチアン】ルッカ市の行政官、十人あり
【ボンツーロ】一四世紀の始めルッカ民黨の首領となれるものにて古註に汚吏の隨一とあり、外は反語なり
【否、然】ラーナの古註に曰、ルッカの公會にては議事の採決をなすにあたり二個の投票箱を會場に持來り其一には然の投票を入れしめ他には否を入れしむる例あり、かゝる時黄白のために心迷へる議員等否の投票をなすべき場合にも然をもて之に代らしむること屡※[#二の字点、1−2−22]ありと
四六―四八
【聖顏】「サント・ヴォルト」は昔東方より傳來しルッカ市聖マルチーノの禮拜堂に安置せられし木製十字架上のキリストなり、ラーナ曰、ルッカの人冥助を祈ることあれば、サント・ヴォルトよ今我を助けたまへといふを例とせりと
橋下の鬼等かの罪人が背を脂の外にあらはし恰も神前にぬかづく如くなるをみて嘲りてかくいへるなり
四九―五一
【セルキオ】ルッカの附近を流るゝ川、ルッカの人々
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