オ時の法王シルヴェステル一世にローマの領地を供物として捧げたりとの説ありて中古事實と認められしも、而後その訛傳に過ぎざること證明せらるゝにいたれり
【父】シルヴェステル一世(三一四年より三三六年まで法王たり)、前項記戰の供物を受けて法王中最初の長者となれるなり、またかく富を得たるがために其後の牧者心を利慾に注ぎ從つて寺院の腐敗を招くにいたれり
此曲の中一〇六行より一一七行に亙る四聯は地、一一・八―九行とともに十七世紀の始めイスパニアの宗教裁判所に於て新に出版せんとするダンテの『神曲』中より削除すべき事を命ぜり(ムーア『ダンテ研究』二卷七頁脚註參照)


    第二十曲

第四嚢の橋上にいたれば魔術卜筮等によりて人を蠱惑せる者背を前にして歩み來れり、ウェルギリウスその中數人を指示してダンテに教へまたマントと名づくる卜者のことより郷里マントヴァの由來に説き及び後共に第五嚢にむかふ
一―三
【第一の歌】地獄即ち深淵の中に沈める者の歌
七―九
【祈りの行列】祈りの歌をうたひつゝしづかに歩みゆく寺院内の行列
二八―三〇
【慈悲全く】ダンテは pieta を慈悲と敬虔との兩意に用ゐて文飾とせり、罪人に對する慈悲心亡びて(地、二・九一―三參照)初めて神に對する敬虔の念生く
【神の審判にむかひて】神の審判により罰をうくる者にむかひて
ウェルギリウスの意は同情を寄するに足るざる罪人をあはれむは神の審判を誹議するに等しければ許すべからざる罪なりといふにあり、眞に同情を寄するに足るべき罪人に對してはウェルギリウス自身憐みのため色を變ずるにいたれることあり(地、四・一九―二一)何ぞダンテのフランチェスカ、チヤッコ及びヤーコポ・ルスチクッチ等に對する同情を責むべき
三一―三六
【アンフィアラーオ】アンフィアラオス、ギリシアの卜者、テバイを圍める七王の一(地、一四・六七―七二註參照)なり、テバイ攻圍中ゼウス電光を投じて大地をひらきアンフィアラオスを地獄に陷る
四〇―四二
【ティレージア】テバイの卜者、嘗て森に入り二匹の蛇の交はれるを見、杖にて撃ちて放れしめしにその身變じて女となれり、七年の後再び此等の蛇を見しかばまたさきの如く撃ち、ここに再び男にかへれり(オウィディウスの『メタモルフォセス』三・三二四以下)
四三―四五
【雄々しき羽】髯
四六―四八
【アロンタ】エトルリア(イタリア)の卜者、カエサルとポムペイウスの間に戰ひありし時前者の勝を豫言せりといふ
【ルーニ】イタリアの西北海岸マーグラの河口に近き町、この町今は僅かに荒廢の跡をとゞめ名はこの地方の總稱なるルーニジアーナとなりて存するに過ぎず、ルーニの山はカルラーラの山をも含むなり
四九―五〇
【大理石】カルラーラの大理石坑はローマ時代よりすでに世に知られたりといふ
五五―五七
【マント】ティレージア(四〇行)の女
【わが生れし處】マントヴァ市をいへりされどウェルギリウスの生れし處はマントヴァ市の附近なるアンデスなり
五八―六〇
【バーコの都】酒神バッコスを守護神とせる町、乃ちテバイ、エテオクレス兄弟の死後(地、二六・四九―五四註參照)クレオンなる者テバイを治めて虐政を布きテバイはたゞ屈從を事とせるのみ
六一―六三
【上なる】地獄に對して世界を上といふ
【ティラルリ】ガルダ潮の北方メラーノに近き城、もとドイツ領たり、アルピ連峰の一部此上に聳ゆ、湖上最初のドイツの城なれば獨逸(ラーマニア)を閉すといへるなり
【ベナーコ】今のガルダ湖
六四―六六
【ガルダ】湖東の城
【ヴァル・カーモニカ】湖水の西北にあたる溪、延長五十餘哩
【アペンニノ】異本ペンニノとあり、ガルダ湖附定の連山を指せるならんも不明なり、所謂アペンニノ連峰にはあらず
六七―六九
【一の處】不明、或ひはフラーチと稱する一小島なりといひ或ひはチニアールガの河口といひ或ひは想像の一地點に過ぎすといふ、此處はトレント(湖北)、ブレシヤ(湖西)、ヴェロナ(湖東)の牧者の管轄地互に境を接する處なれば三の中いづれの管轄地より來る僧もこゝに立ちて十字を截りてわが牧する民に祝福を授くることを得べし(僧の公けに祝福を授くることは己が管轄地内にのみなしうべき定めあればなり)
七〇―七二
【ペスキエーラ】ガルダ湖の南端にあるヴェロナ人の城
【ベルガーモ】ブレシヤの西にあり
七六―七八
【ゴヴェルノ】今ゴヴェルノロといふ、ミンチョの右側にある邑
七九―八一
【夏は】夏時往々地乾き汚水處々に停滯して市民の衞生を害することあり
九一―九三
【占】昔土地に新に名をつくる時は卜筮によりてその名をえらぶ習ありきといふ
【マンツア】マントヴァ
九四―九六
【カサロディ】ブレシヤの一城主カサロディ家のアルベルト伯なる者マントヴァに君たりし時(一二七〇年頃)この地の名族ピナモンテ・
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