第七の地獄の間の(第十二曲の始めにくはし)
四―九
【フォーチン】フォティヌス、テッサロニアの僧、チェーザレア(パレスチナにあり)の僧正アカキウスが異端の故をもて僧籍より除名されしことありしときフォティヌス彼のために復籍を取りはからはんとてローマにいたれり
【アナスターショ】法王アナスタシウス二世(四九六年より同八年まで在位)、ローマの人、當時東西二派の寺院異端につきて爭へるにアナスタシウスその調停に志しその頃ローマに來れるフォティヌスを屡※[#二の字点、1−2−22]引見せるより己もまた異端に陷れるが如くおもはるゝにいたりしなりといふ
一六―一八
【次第】大小高低次をなすこと
一九―二一
【見るのみにて】罪人の種類をウェルギリウスに問ふ(地、三・三三、七三、四・七四等)に及ばざるため
三一―三三
【屬けるもの】神に屬するものは自然と神恩、人に屬するものはその持物(三四行以下)
四〇―四五
第七の地獄第二圓に罰せらるゝ浪費者は第四の地獄に罰せらるゝ放縱なる浪費者と異なり博奕またはこの類の事により人の不利をわが利となさんとするものなり
【喜ぶべき處】地上、生命財産は善用して幸に入るの階段となすべきを惡用して自ら悲歎の境界に陷るなり
四九―五〇
【ソッドマ】男色即ち自然に反する罪(創世記第一九章)
【カオルサ】高利貸即ち神の恩惠(自然の賜なる財寶)にむかひて暴を行ふ罪、カオルサはフランスの南にある一都會(カオルス)の名なり、中古、高利貸の極めて多かりしところなりければかくいふ
【封ず】默示録、二〇・三參照
五二―五四
【心これによりて】豫め深くたくらみて人を欺くが故にこれを行ふ人、本心に痛みを感ぜざるはなし
五五―六〇
己に特殊の關係なきものを欺くは人間相愛の道に背くなり
第八の地獄なる各種罪惡の分布左の如し
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僞善 第六嚢 地、二三
諂諛 第二嚢 一八
惑はす者 第四嚢 二〇
詐欺 第十嚢 二九、三〇
竊盜 第七嚢 二四、二五
シモニア 第三嚢 一九
判人 第一嚢 一八
汚吏 第五嚢 二一、二二
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外にこのたぐひの汚穢
[#ここから2字下げ]
詐りの謀 第八嚢 二六、二七
爭ひを蒔く者 第九嚢 二八
[#ここで字下げ終わり]
【シモニア】僧官及び其他の神聖なる物を賣買すること、この語の出處につきては地、一九・一―六註參照
【汚吏】baratti 公私に論なく己が職務を利用して益をはかる者
【第二の】これよりめぐらんとする獄の中の第二、即ち全體よりいへば第八の獄
六四―六六
【ディーテ】地獄王ルキフェル(地、八・六七―九註參照)
七〇―七二
デイーテ城外の諸地獄にある者(第五、第二、第三、第四)
七九―八四
【汝の倫理】アリストテレスの倫理學第七卷の始め
ダンテの分類とアリストテレスの分類とは同一にあらず、ダンテの邪惡はアリストテレスの邪惡とその義を異にすムーア博士曰、ダンテはまづアリストテレスにより、地獄に罰せらるべき凡ての罪をば情を制する能はずして犯せる罪と痼疾の罪との二にわかちさらにキケロにより、後者を力と欺の二にわかてるなりと(『ダンテ研究』第二卷一五八頁以下)
八五―八七
【上に外に】地獄の上方ディーテの門外
八八―九〇
【復讎】異本、正義
九一―九六
【汝の言】四六行以下
九七―一〇五
【その枝】神が自ら定めたまひし故に從ひてその業をなしたまふこと
【汝の理學】アリストテレスの『理學』(フィージカ)二卷二・七
【孫】人間の技は自然よりいで自然は神よりいづ、故に人間の技は神の孫の如し
一〇六―一〇八
【二のもの】自然と技、即ち人は自然に倣ひその法に從つて努力し神の賜を自然の中に求むべきものなること
【創世記】創世記三・一九に曰く、汝顏に汗して食を得べし
一〇九―一一一
高利を貪る者は神の定むるところに反し自然の恩惠と自己の努力によりて富を求むることをなさずたゞ貨をして貨を生ましむるの道をとりその望みを不正の利益におきて自然とその從者なる人間の技とをないがしろにす
一一二―一一四
【雙魚】雙魚宮は白羊宮にさきだつ天の十二宮の一、この時太陽は白羊宮にあり(地、一・三八)そのあらはるゝは雙魚の星に後るゝこと約二時間なり、故に兩詩人がアナスタシウスの墓側を離れしは日出前約二時間乃ち四月九日年前四時の頃なるべし
【コーロ】西北の風、こゝには西北の空の意
第十二曲
詩人等斷崖を下りて第七の地獄第一の圓にいたればこゝに血の流れあり他人にむかひて暴なるものを煮またあまたのケンタウロス(チェンタウロ)ありて掟に從はざるものを射る、その一ネッソス(ネッソ)ウェルギリウスの請ひによりダンテを負ひ
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