と六日目の間に我はまのあたり三人《みたり》のあひついでたふるゝをみぬ、我また盲《めしひ》となりしかば 七〇―
彼等を手にてさぐりもとめて死後なほその名を呼ぶこと二日、この時斷食の力憂ひにまさるにいたれるなりき ―七五
かくいへる時彼は目を斜《なゝめ》にしてふたゝび幸《さち》なき頭顱《かうべ》を噛めり、その齒骨に及びて強きこと犬の如くなりき 七六―七八
あゝピサよ、シを語となすうるはしき國の民の名折《なをれ》よ、汝の隣人《となりびと》等汝を罰するおそければ 七九―八一
ねがはくはカプライアとゴルゴーナとゆるぎいでゝアルノの口に籬《まがき》をめぐらし、汝の中なる人々悉く溺れ死ぬるにいたらんことを 八二―八四
そはたとひ伯爵《コンテ》ウゴリーノに汝に背きて城を賣れりとのきこえありとも汝は兒等をかく十字架につくべきにあらざればなり 八五―八七
第二のテーべよ、年若きが故にすなはち罪なし、ウグッチオネもイル・ブリガータもまた既にこの曲に名をいへる二人《ふたり》の者も 八八―九〇
我等はなほ進み、ほかの民の俯《うつむ》かずうらがへりてあらく氷に包まるゝところにいたれり 九一―九三
こゝには憂へ憂ひをとゞめ、なやみは目の上の障礙《しやうげ》にさへられ、苦しみをまさんとて内部《うち》にかへれり 九四―九六
そははじめの涙|凝塊《かたまり》となりてあたかも玻璃の被物《おほひ》の如く眉の下なる杯を滿たせばなり 九七―九九
わが顏は寒さのため、胼胝《たこ》のいでたるところにひとしく凡ての感覺を失へるに 一〇〇―一〇二
この時わが風に觸るゝを覺え、曰ひけるは、わが師よ、これを動かすものは誰ぞや、この深處《ふかみ》には一切の地氣消ゆるにあらずや 一〇三―一〇五
彼即ち我に、汝は程なく汝の目が風を降《ふ》らす源《もと》をみてこれが答を汝にえさすところにいたらん 一〇六―一〇八
氷の皮なる幸なき者の中ひとり叫びて我等にいひけるは、あゝ非道にして最後の立處《たちど》に罪なはれたる魂等よ 一〇九―一一一
堅き被物《おほひ》を目よりあげて涙再び凍らぬまに我胸にあふるゝ憂ひを少しく洩すことをえしめよ 一一二―一一四
我すなはち彼に、わが汝をたすくるをねがはゞ汝の誰なるやを我に告げよ、かくして我もしその支障《さゝはり》を去らずば我は氷の底にゆくべし 一一五―一一七
この時彼答ふらく、我は僧《フラーテ》アルベリーゴなり、よからぬ園の木の實の事ありてここに無花果に代へ無漏子《むろし》をうく 一一八―一二〇
我彼に曰ふ、さらば汝既に死にたるか、彼我に、我はわが體《からだ》のいかに上の世に日をふるやをしらず 一二一―一二三
このトロメアには一の得ありていまだアトローポスに追はれざるに魂しば/\こゝに落つることあり 一二四―一二六
また汝玻璃にひとしき此涙をいよ/\こゝろよくわが顏より除くをえんため、しるべし、魂わがなせるごとく信に背くことあれば 一二七―
鬼たゞちにその體《からだ》を奪ひ、みづからこれが主となりて時のめぐりをはるを待ち ―一三二
おのれはかゝる水槽《みづぶね》の中におつ、さればわが後方《うしろ》に冬を送る魂もおもふにいまなほその體《からだ》を上の世にあらはすなるべし 一三三―一三五
汝今此處にくだれるならば彼を知らざることあらじ、彼はセル・ブランカ・ドーリアなり、かく閉されてより既に多くの年を經たり 一三六―一三八
我彼に曰ふ、我は汝の欺くをしる、ブランカ・ドーリアは未だ死なず、彼|食《く》ひ飮み寢《い》ねまた衣《ころも》を着るなり 一三九―一四一
彼曰ふ、上なるマーレブランケの濠の中、粘《ねば》き脂《やに》煮ゆるところにミケーレ・ツァンケ未だ着かざるうち 一四二―一四四
この者その體《からだ》に鬼を殘して己にかはらせ、彼と共に逆を行へるその近親のひとりまたしかなせり 一四五―一四七
されどいざ手をこなたに伸べて我目をひらけ、我はひらかざりき、彼にむかひて暴《みだり》なるは是即ち道なりければなり 一四八―一五〇
あゝジエーノヴァ人《びと》よ、一切の美風をはなれ一切の邪惡を滿たす人々よ、汝等の世より散りうせざるは何故ぞ 一五一―一五三
我は極惡《ごくあく》なるローマニアの魂と共に汝等のひとりその行《おこなひ》によりて魂すでにコチートに浸《ひた》り 一五四―
身はなほ生きて地上にあらはるゝ者をみたりき ―一五九
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第三十四曲
地獄の王の旗あらはる、此故に前方《まへ》を望みて彼を認むるや否やを見よ、わが師かく曰へり 一―三
濃霧起る時、闇わが半球を包む時、風のめぐらす碾粉車《こひきぐるま》の遠くかなたに見ゆることあり 四―六
我もこの時かゝる建物《たてもの》をみしをおぼえぬ、また風をいとへどもほかに避くべき處なければ、われ身を導者の後方《う
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