》巧みなりければ 五八―六〇
殆ど何人と雖も彼の祕密に係《たづさ》はるをえざりき、わがこの榮《はえ》ある職《つとめ》に忠なりし事いかばかりぞや、我之がために睡りをも脈をも失へり 六一―六三
阿諛《おもねり》の眼《まなこ》をチェーザレの家より放ちしことなく、おしなべての死、宮の罪惡なる遊女《あそびめ》は 六四―六六
すべての心を燃やして我に背かしめ、燃えし心はアウグストの心を燃やし、喜びの譽悲しみの歎きとかはりぬ 六七―六九
わが精神《たましひ》は怒りに驅られ、死によりて誹りを免かれんことを思ひ、正しからざることを正しきわが身に行へり 七〇―七二
この樹の奇《く》しき根によりて誓ひて曰はん、我はいまだかく譽をうるにふさはしかりしわが主の信に背けることなしと 七三―七五
汝等のうち若し世に歸る者あらば、嫉みに打たれていまなほ地に伏すわが記憶を慰めよ 七六―七八
待つこと須臾《しばらく》にして詩人我に曰ひけるは、彼|默《もだ》すために時を失ふことなく、なほ問ふことあらばいひて彼に問へ 七九―八一
我乃ち彼に、汝我心に適ふべしと思ふ事をば請ふわがために彼に問へ、憐み胸にせまりて我しかするあたはざればなり 八二―八四
此故に彼又曰ひけるは、獄裏の魂よ、願はくは此人ねんごろに汝のために汝の言《ことば》の乞求むるものをなさんことを、請ふ更に 八五―八七
我等に告げて魂此等の節《ふし》の中に繋がるゝに至る状《さま》をいへ、又若しかなはゞそのかゝる體《からだ》より解放たるゝ事ありや否やをもいへ 八八―九〇
この時幹はげしく氣を吐けり、この風《かぜ》聲に變りていふ、約《つゞま》やかに汝等に答へん 九一―九三
殘忍なる魂己を身よりひき放ちて去ることあればミノスこれを第七の口におくり 九四―九六
このもの林の中に落つ、されど定まれる處なく、たゞ命運の投入るゝ處にいたりて芽《めざ》すこと一粒の麥の如く 九七―九九
若枝《わかえ》となり後野生の木となる、アルピーエその葉を食みてこれに痛みを與へまた痛みに窓を與ふ、我等はほかの者と等しく 一〇〇―
我等の衣の爲めに行くべし、されど再びこれを着る者あるによるに非ず、そは人自ら棄てし物をうくるは正しき事に非ざればなり ―一〇五
我等これをこゝに曳き來らむ、かくて我等の體《からだ》はこの憂き林、いづれも己を虐げし魂の荊棘《いばら》の上に懸けらるべし 一
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