z困難
九四―九六
【あきらかに】天、三・三一―三
【第一の眞】眞の源なる神
九七―九九
【聞きたる】天、三・一一五―七
【されば】聖徒は僞らず是故にピッカルダの言すべて眞なり、然るにピッカルダはコンスタンツェが尼寺を離れし後も心に尼となりゐたりといひ、我は今かれらの意志|暴《あらび》の前に屈したりといへり、さればピッカルダの言、わが言と相反すと見ゆべし
一〇三―一〇五
【アルメオネ】アルクマイオン。父アンピアラオスの仇を報いんとて母エリピュレを殺せる者(淨、一二・四九―五一註參照)
【父に請はれ】もし戰ひに死せばエリピュレを殺せと豫めその子に命じ置きしなり
アルクマイオンは父の命に背くことを母を殺すことよりもさらに大なる罪と思ひたればなり
一〇六―一〇八
【暴意志と】人の暴《あらび》のみならず己の意志(相對の)も加はりて
一〇九―一一一
絶對の意志は暴に屈せず、たゞ相對の意志之に屈す、即ちもし屈せずして飽まで抵抗せばさらに大いなる禍ひに陷るあらんを恐れてこれに屈するなり
一一二―一一四
コンスタンツェの意志は絶對に暴に屈せるならねば此丘尼の生涯を慕へるは事實なれども、恐怖の念に左右せられて相對にこれに屈せるなり、ピッカルダは絶對の意志を指して屈せずといひ我は相對の意志を指して屈せりといふ、彼此兩立す
一一五―一一七
【泉】神
【流れ】ベアトリーチェ
一一八―一二〇
【愛に】原、「愛する者に」。神に
【潤し……暖め】水の潤や太陽の熱によりて草木の生き出づるごとく
一二一―一二三
【これに應へ】わが爲に汝の恩惠《めぐみ》にむくい
一二四―一二六
【眞】神
一二七―一二九
智は自然に眞を知るを求む、すべて自然に生ずる願ひは空ならじ、是故に眞を知ること可能なり、しかして智眞に達すれば悦びをその中にうることあたかも走り疲れし獸がしづかに己が洞窟の中に休むに似たり(コルノルディ、G.M.Cornoldi)
一三〇―一三二
人かく自然に眞を求むるがゆゑに一知はさらに一疑を生じ、眞より眞に進みて次第に終極の眞(神)にむかふ
一三三―一三五
【この事】以上わがいへる凡ての事
一三六―一三八
【汝等の天秤】天上の天秤《はかり》に。神の正義が、かゝる善行をもてこの罪を贖ふに足るとなすまで
【汝等に】天に對して


    第五曲

ベアトリーチェは誓ひの神聖なることゝこれに易ふるをうる物のことを論じてダンテの疑ひを解き、後相倶に水星天にいたる
一―三
【愛】神の愛。神の光ベアトリーチェに反映するなり
四―六
【全き視力】ベアトリーチェの。視力完全なるがゆゑに神の光に接するも眩暈せずかへつて愈※[#二の字点、1−2−22]光の内に進み入るなり(神を視神を知るに從ひ神を愛するの愛いよ/\深し)
スカルタッツィニの引用せる出エジプト記(三四・二九以下)に、モーゼ神と物言ひて山を下りし時、イスラエルの民その顏光を放つを視、恐れてこれに近づかざりしこと見ゆ
七―九
【永遠の光】神の光。神の光は一たびこれを視る者をして永久に己を愛せしむ(『コンヴィヴィオ』三、一四・五一以下參照)
一〇―一二
【その中に】迷はす物の中に。世に屬する空しき幸をも人誤り見て眞の幸となしこれを追ひ求むるなり(淨、一六・八五―九三參照)
一三―一五
【論爭】法廷の論爭、即ち神の正義に對し己が爲に論辯すること。これを免るゝは誓ひを果さゞりし罪の釋かるゝなり
一六―一八
【この曲をうたひいで】第五曲の始めにベアトリーチェの言葉を載せしをかくいへり
一九―二一
【造りて】creando 創造の時の義
二二―二四
創造の始めより今に至るまで凡て了知ある被造物即ち諸天使及び人類はこの意志の自由(淨、一六・六七以下參照)を與へらる
二五―二七
【人肯ひて】人約束を立て、神これを嘉し給ひ
二八―三〇
【寶】自由意志。誓ひを立つるは自由意志そのものゝ作用によりて自由意志を神に獻ぐるなり
三一―三三
是故にいかなる善事も、破約の罪を贖ふに足らず、意志の自由を一たび神に獻げつゝ、後その自由を用ゐて他の善を爲さんとするは、これ※[#「貝+藏」、231−6]物をもて善を行はんとするに等し
三四―三六
【要點】誓約そのものはいかなる善行によりても贖はるべきにあらざること
四三―四五
誓約の要素に二あり、一はその材(誓約の對象なる童貞、斷食等)、他はその形式(神に約して己が自由意志を獻ぐる事)なり。以下ベアトリーチェの言を摘記すれば左の如し
(一)誓約は破るべからず、故に果すに非ざれば消えじ、たゞ獻ぐる物その物は或はこれを變ずるを得(四六―五四行)
(二)物を易ふるに當りては必ずまづ寺院の許諾を受けざるべからず、かつ易へて獻ぐる物前に獻げし物よりも尚大ならざるべからず(五五―六三行)
(三)是故に誓ひを立つるにあたりては人これを輕視せず必ず充分の注意をこれに拂ふを要す(六四―八四行)
四九―五一
【希伯來人】モーゼの律法に從ひ誓約の獻物《さゝげもの》をなすことレビ記(二七・一以下)に見ゆ
【如何により】獻物の中には易へうべき物あり(レビ、二七・一一以下等)易へうべからざる物あり(同二七・九―一〇等)
五五―五七
何人も寺院(即ち聖職にありてかゝる權能を有する者)の許諾を俟たずたゞ己が意志に從つて誓約の材を變ふるをえず
【黄白二の鑰】僧侶の權能及び技能の象徴なる金銀の鑰(淨、九・一一五以下參照)
五八―六〇
【六の四に】單に大小を表はせるにて數字上の比較にあらず、モーゼの律法にては五分の一を加ふべしとあり(レビ、二七・一三等)
六一―六三
是故に供物の價値甚大にしてこれに相當すべき物他にあらざるときはいかなる善行を以てすとも交換を許さず、童貞の誓ひの如きこの種に屬す
六四―六六
【イエプテ】イエフタ。ガラードの勇士にて後イスラエル人の士師となれる者。イスラエル人の爲にアンモン人と戰ふに當り神に誓ひて曰ふ、汝もし敵をわが手にわたし給はゞ、わが歸らん時わが家の戸より出で來りて我を迎ふる者わが燔祭の獻物となるべしと、しかるにその勝ちて歸るや、彼を迎へし者はわが獨子なる女《むすめ》なりき(士師記一一・三〇以下)
【最初の供物】ヴルガータに「最初に出で來る者」とあるによれり
【輕々しく】bieci(目を斜《はす》にして)、目を斜にして物を視る時はその眞相を認め難し、故にこの語轉じて「思慮なく」の意に用ゐらる(スカルタッツィニ)
誓ひを守るに忠なるはよし、されどこれを立つるに當りては熟慮を要す
六七―六九
【守りて】即ちその女を殺して。輕々しく誓約を立つれば、守りてかへつて守らざるよりも大いなる惡に陷ることあり
【ギリシア人の大將】アガメムノン。トロイア役におけるギリシア軍の主將たり、トロイアに渡らんとすれども順風を得ず空しくアウリスに止まるを憂へ、もしこれを得ばその年生るゝものゝ中最も美しきものをアルテミスに獻ぐべしと誓ひし爲、遂にわが女《むすめ》イピゲネイアを犧牲せざるべからざるにいたれり
七〇―七二
【かゝる神事を】かく酷《むご》き犧牲《いけにへ》の事を
七三―七五
【身を動かし】こゝにては誓約を爲すこと
【いかなる水も】誓約の履行をたやすく免ぜられうべしと思ふ勿れ
七六―七八
聖書の教へを守り寺院の導きに從はゞ救ひを得む、漫りに誓ふはこれを得るの道にあらず
七九―八一
己の慾のため誓願をなすの念起らば、汝等これに盲從せず、人間としてこれに逆へ、さらずば汝等の中に住するユダヤ人等(即ち舊約の律法に從つて誓約を神聖視する)汝等キリスト教徒が誓約に對して思慮なきを笑はむ
八二―八四
【母の乳を】聖書の教へや寺院の導きを離るゝ者は乳を離るゝ羔の如し
【自ら己と戰ふ】ただ獨りにて狂へる如くはねまはるをいふ
八五―八七
【處】太陽もしくは赤道。但しいづれにても上方の事
八八―九〇
【變れる】高く登るに從つてベアトリーチェの姿いよ/\美しく、いよ/\強く輝けばなり
九一―九三
【第二の王國】水星天
九七―九九
【いかなるさま】いかなる印象(喜びや悲しみの)をも受け易き
一〇三―一〇五
【輝】世の榮譽を求めし人々の靈
【ますべきもの】ダンテを指す。われらの愛は、かれの疑ひを解くによりて現はれ、現はるゝによりて愈※[#二の字点、1−2−22]増すべし
一〇五―一一〇七
あゝ福を享けんが爲に生れ、未だ死せざるさきに神恩によりてエムピレオの天を視るを得る者よ

【戰】地上の生命(ヨブ、七・一參照)
一一八―一二〇
【光】神の恩愛の光
一二一―一二三
【靈の一】ユスティニアヌス(天、六・一〇―一二參照)
【神々】誤らず僞らざる(ヨハネ、一〇・三四―五參照)
一二四―一二六
【巣くひ】包まれ
一二七―一二九
【他の光】日光。ダンテは『コンヴィヴィオ』の中に、水星は最小の星にしてかつ他のいづれの星よりも太陽の光に多く蔽はるといへり(二、一四・九一以下)
一三〇―一三二
【前よりはるかに】光の増すは悦の増すなり
一三三―一三五
日の面《おもて》水氣に隔てらるゝときは光和らぐがゆゑにこれを視ることをうれども(淨、三〇・二五―七參照)、水氣熱の爲に飛散すれば、光直射して仰ぎ見難し(淨、一七・五二―四參照)
【幕】原、「和らぐること」
月天にては諸靈の姿そを包む光の爲に微かに見え、水星天にてはこの光なほ増して、近づかざれば光のみ見ゆ、(喜び常よりも大いなる時姿全く見えざることユスティニアヌスの例にて知らる)、また金星天にては光さらに増して聖徒の姿全く見えず、太陽天火星天と天の次第に高きに從つてかれらの光いよ/\強し


    第六曲

皇帝ユスティニアヌスの靈水星天にてダンテに己が身の上の事と「ローマの鷲」の事とを告ぐ
一―三
【コスタンティーン】コンスタンティヌス一世(地、一九・一一五―七註參照)。三二四年帝國の首都をローマよりビザンティウム(今のイスタンブール)に移せり
【鷲】ローマ帝國の旗章《はたじるし》(淨、一〇・七九―八一參照)として帝國の權勢を代表す
【天の運行に逆はしめし】西より東に移らしめし
【ラヴィーナ】ラウィニア王ラティノスの女にてアエネアスの妻となれる者(地、四・一二四―六參照)
【昔人】アエネアス(地、一・七三―五並びに註參照)。トロイア沒落の後アエネアス、イタリアに赴けり、帝業の基を起せる者なるがゆゑに、鷲これにともなひて天の運行と同じく東より西に行けりといへるなり
四―六
【二百年餘】三二四年より五二七年(ユスティニアヌス即位の年)まで
或ひは曰。ダンテはブルネット・ラティーニの記録に從ひ、遷都を三三三年、ユスティニアヌスの即位を五三九年の事とせるなりと
【神の鳥】鷲
【エウローパの際涯】ヨーロッパの東端にあるビザンティウム。トロイアを距ること遠からず
【山々】トロイア地方の山々。鷲さきにアエネアスにともなひてこの山々よりいでたり
七―九
【手より手に】皇帝より皇帝に
一〇―一二
【ジュスティニアーノ】ユスティニアヌス一世(四八二―五六五年)。ヴァンダル族及びオストロゴート族と戰ひて武名を揚ぐ、されどその最も世に知らるゝにいたれるはかのローマ法の編成によりてなり
【第一の愛の聖旨により】聖靈にはげまされ
一三―一五
【一の性】神性。キリストにおいて、人性は神性中に沒しその存在を失へりとなすエウチキオ(三七八―四五四年)一派の異端。但しユスティニアヌスの妻テオドラはこの派の熱心なる信仰者なりしもユスティニアヌスはかゝる信仰を懷きしにあらず、ダンテ或ひはブルネット・ラティーニの言によりてかく録せるにあらざるかと註釋者いふ
一六―一八
【アガピート】アガペトゥス一世(五三五年より翌六年まで法王たり)。オストロゴートの王テオダトゥスの爲にユスティニアヌスと和を謀らんとてコンスタンティノポリスに赴き、かしこに死す、その間彼は皇帝に説きて異端者を罰せしめきと傳へらる
一九―二一
【信ずる所】キリストにおける神人の兩性
【一切の矛盾】肯定眞なれば否定僞りに、否定眞なれば肯定僞りなり。明かなる見易き事の一例として擧ぐ

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