く者なくばかく遠く記憶に溯《さかのぼ》る能《あた》はざるによりてなり 一〇―一二
かの刹那《せつな》のことについてわが語るを得るは是のみ、曰く、彼を視るに及びわが情は他の一切の願ひより解かると 一三―一五
ベアトリーチェを直ちに照らせる永遠《とこしへ》の喜びその第二の姿をば美しき目に現はしてわが心を足《たら》はしゐたりしとき 一六―一八
一の微笑《ほゝゑみ》の光をもて我を服《したが》へつゝ淑女曰ふ。身を轉《めぐら》してしかして聽け、わが目の中にのみ天堂あるにあらざればなり。 一九―二一
情もし魂を悉く占むるばかりに強ければ、目に現はるゝことまゝ世に例《ためし》あり 二二―二四
かくの如く、我はわがふりかへりて見し聖なる光の輝の中に、なほしばし我と語るの意あるを認めき 二五―二七
このものいふ。頂によりて生き、常に實を結び、たえて葉を失はぬ木のこの第五座に 二八―三〇
福なる諸※[#二の字点、1−2−22]の靈あり、かれらは天に來らざりしさき、いかなるムーザをも富《と》ますばかり世に名聲《きこえ》高かりき 三一―三三
是故にかの十字架の桁《けた》を見よ、我今名をいはん、さらばその者あたか
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