ートやコルニーリアの今における如く、いと異《あや》しとせられしなるべし ―一二九
かく平穩《やすらか》にかく美しく邑《まち》の人々の住みゐたる中《なか》に、かく頼もしかりし民、かくうるはしかりし客舍に 一三〇―一三二
マリア――唱名の聲高きを開きて――我を加へ給へり、汝等の昔の授洗所にて我は基督教徒《クリスティアーノ》となり、カッチアグイーダとなりたりき 一三三―一三五
わが兄弟なりし者にモロントとエリゼオとあり、わが妻はポーの溪《たに》よりわが許《もと》に來れり、汝の姓《うぢ》かの女より出づ 一三六―一三八
後われ皇帝クルラードに事《つか》へ、その騎士の帶をさづけられしほど功《いさを》によりていと大いなる恩寵《めぐみ》をえたり 一三九―一四一
我彼に從ひて出で、牧者達の過のため汝等の領地を侵《おか》す人々の不義の律法《おきて》と戰ひ 一四二―一四四
かしこにてかの穢《けが》れし民の手に罹《かゝ》りて虚僞《いつはり》の世――多くの魂これを愛するがゆゑに穢る――より解かれ 一四五―一四七
殉教よりこの平安に移りにき。 一四八―一五〇
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第十六曲
あゝ人の血統《ちすぢ》のたゞ小《さゝや》かなる尊貴《たふとさ》よ、情の衰ふるところなる世に、汝人々をして汝に誇るにいたらしむとも 一―三
我|重《かさ》ねてこれを異《あや》しとすることあらじ、そは愛欲の逸《そ》れざるところ即ち天にて我自ら汝に誇りたればなり 四―六
げに汝は短くなり易《やす》き衣のごとし、日に日に補ひ足されずば、時は鋏《はさみ》をもて周圍《まはり》をめぐらむ 七―九
ローマの第一に許しゝ語《ことば》しかしてその族《やから》の中にて最も廢《すた》れし語なるヴォイを始めに、我再び語りいづれば 一〇―一二
少しく離れゐたりしベアトリーチェは、笑《ゑみ》を含み、さながら書《ふみ》に殘るかのジネーヴラの最初の咎《とが》を見て咳《しはぶ》きし女の如く見えき 一三―一五
我|曰《い》ひけらく。汝《ヴォイ》はわが父なり、汝いたく我をはげまして物言はしめ、また我を高うして我にまさる者とならしむ 一六―一八
いと多くの流れにより嬉しさわが心に滿《み》つれば、心は自らその壞《やぶ》れずしてこれに堪《た》ふるをうるを悦ぶ 一九―二一
さればわが愛する遠祖《とほつおや》よ、請《こ》ふ我に告げよ、汝の先祖達は誰なりしや、汝|童《わらべ》なりし時、年は幾何《いくばく》の數をか示せる 二二―二四
請ふ告げよ、聖《サン》ジョヴァンニの羊の圈《をり》はその頃いかばかり大いなりしや、またその内にて高座《かみざ》に就くに適《ふさ》はしき民は誰なりしや。 二五―二七
たとへば炭風に吹かれ、燃えて焔を放つごとく、我はかの光のわが媚ぶる言《ことば》をきゝて輝くを見たり 二八―三〇
しかしてこの物いよ/\美しくわが目に見ゆるに從ひ、いよ/\麗《うるは》しき柔《やはら》かき聲にて(但し近代《ちかきよ》の言葉を用ゐで) 三一―三三
我に曰ひけるは。アーヴェのいはれし日より、今は聖徒なるわが母、子を生み、宿《やど》しゝ我を世にいだせる時までに 三四―三六
この火は五百八十囘己が獅子の處にゆき、その足の下にてあらたに燃えたり 三七―三九
またわが先祖達と我とは、汝等の年毎の競技に與《あづか》りて走る者がかの邑《まち》の最後の區劃《わかち》を最初に見る處にて生れき 四〇―四二
わが列祖の事につきては汝これを聞きて足れりとすべし、彼等の誰なりしやまた何處《いづこ》よりこゝに來りしやは寧《むし》ろ言はざるを宜《むべ》とす 四三―四五
その頃マルテと洗禮者《バッティスタ》との間にありて武器を執《と》るをえし者は、すべて合せて、今住む者の五|分《ぶ》一なりき 四六―四八
されど今カムピ、チェルタルド、及びフェギーネと混《まじ》れる斯民《このたみ》、その頃はいと賤しき工匠《たくみ》にいたるまで純なりき 四九―五一
あゝこれらの人々皆|隣人《となりびと》にして、ガルルッツォとトレスピアーノとに汝等の境あらん方《かた》、かれらを容《い》れてかのアグリオンの賤男《しづのを》 五二―
またはシーニアの賤男(公職《おおやけのつとめ》を賣らんとはや目を鋭うする)の惡臭《をしう》を忍ぶにまさることいかばかりぞや ―五七
もし世の最も劣《おと》れる人々、チェーザレと繼《まゝ》しからず、あたかも母のわが兒におけるごとくこまやかなりせば 五八―六〇
かの今フィレンツェ人《びと》となりて兩替しかつ商賣《あきなひ》するひとりの人は、その祖父が物乞へる處なるシミフォンテに歸りしなるべく 六一―六三
モンテムルロは今も昔の伯等《きみたち》に屬し、チェルキはアーコネの寺領に殘り、ボンデルモンティは恐らくはヴァルディグレーヴェに殘れるなるべし 六
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