、ベーダ及び想ふこと人たる者の上に出でしリッカルドの息《いき》の、燃えて焔を放つを見よ 一三〇―一三二
また左《さ》にて我にいと近きは、その深き思ひの中にて、死の來るを遲しと見し一の靈の光なり 一三三―一三五
これぞ藁《わら》の街《まち》にて教へ、嫉《ねた》まるゝべき眞理を證《あかし》せしシジエーリのとこしへの光なる。 一三六―一三八
かくてあたかも神の新婦《はなよめ》が朝の歌をば新郎《はなむこ》の爲にうたひその愛を得んとて立つ時われらを呼ぶ時辰儀《じしんぎ》の 一三九―一四一
一部他の一部を、曳《ひ》きかつ押して音妙《おとたへ》にチン/\と鳴り、神に心向へる靈を愛にてあふれしむるごとく 一四二―一四四
我は榮光の輪のめぐりつゝ、喜び限りなき處ならでは知るあたはざる和合と美とにその聲々をあはすを見たり。 一四五―一四七
[#改ページ]

   第十一曲

あゝ人間の愚《おろか》なる心勞《こゝろづかひ》よ、汝をして翼を鼓《う》ちて下らしむるは、そも/\いかに誤り多き推理ぞや 一―三
一人《ひとり》は法に一人は醫に走り、ひとりは僧官を追ひ、ひとりは暴力または詭辯《きべん》によりて治めんとし 四―六
一人《ひとり》は奪ひ取らんとし、一人は公務に就かんとし、一人は肉の快樂《けらく》に迷ひてこれに耽り、ひとりは安佚《あんいつ》を貪《むさ》ぼれる 七―九
間《ま》に、我はすべてこれらの物より釋《と》かれ、ベアトリーチェとともに、かくはな/″\しく天に迎へ入れられき 一〇―一二
さていづれの靈もかの圈の中、さきにそのありし處に歸れるとき、動かざることあたかも燭臺に立つ蝋燭《ろうそく》の如くなりき 一三―一五
しかしてさきに我に物言へる光、いよ/\あざやかになりてほゝゑみ、内より聲を出して曰《い》ふ 一六―一八
われ永遠《とこしへ》の光を視て汝の思ひの出來《いできた》る本《もと》を知る、なほかの光に照らされてわれ自ら輝くごとし 一九―二一
汝はさきにわが「よく肥《こ》ゆるところ」といひまた「これと並ぶべき者生れしことなし」といへるをあやしみ 二二―
汝の了解《さとり》に適《ふさ》はしきまで明らかなるゆきわたりたる言葉にてその説示されんことを願ふ、げにこゝにこそ具《つぶさ》に辨《わ》くべき事はあるなれ ―二七
それ被造物《つくられしもの》の目の視きはむる能はざるまでいと深き思量《はからひ》をもて宇宙を治むる神の攝理は 二八―三〇
かの新婦《はなよめ》――即ち大聲《おほごゑ》によばはりつゝ尊き血をもてこれと縁《えにし》を結べる者の新婦――をしてその愛《いつくし》む者の許《もと》に往《ゆ》くにあたり 三一―三三
心を安んじかつ彼にいよ/\忠實《まめやか》ならしめんとて、これがためにその左右の導者となるべき二人《ふたり》の君を定めたり 三四―三六
その一人《ひとり》は熱情全くセラフィーノのごとく、ひとりは知慧によりてケルビーノの光を地上に放てり 三七―三九
我その一人《ひとり》の事をいはむ、かれらの業《わざ》の目的《めあて》は一なるがゆゑに、いづれにてもひとりを讚《ほ》むるはふたりをほむることなればなり 四〇―四二
トゥピーノと、ウバルド尊者に選ばれし丘よりくだる水との間に、とある高山《たかやま》より、肥沃の坂の垂《た》るゝあり 四三―四五
(この山よりペルージアは、ポルタ・ソレにて暑さ寒さを受く、また坂の後方《うしろ》にはノチェーラとグアルドと重き軛《くびき》の爲に泣く) 四六―四八
この坂の中|嶮《けは》しさのいたく破るゝ處より、一の日輪世に出でたり――あたかもこれがをりふしガンジェより出るごとく 四九―五一
是故にこの處のことをいふ者、もし應《ふさ》はしくいはんと思はゞ、アーシェージといはずして(語《ことば》足らざれば)東方《オリエンテ》といふべし 五二―五四
昇りて久しからざるに、彼は早くもその大いなる徳をもて地に若干《そこばく》の勵みを覺えしむ 五五―五七
そは彼若き時、ひとりだに悦びの戸を開きて迎ふる者なき(死を迎へざるごとく)女の爲に父と爭ひ 五八―六〇
而して己が靈の法廷《しらす》に、父の前にて、これと縁《えにし》を結びし後、日毎《ひごと》に深くこれを愛したればなり 六一―六三
それかの女《をんな》は、最初《はじめ》の夫を失ひてより、千百年餘の間、蔑視《さげす》まれ疎《うと》んぜられて、彼の出るにいたるまで招かるゝことあらざりき 六四―六六
かの女が、アミクラーテと倶《とも》にありて、かの全世界を恐れしめたる者の聲にも驚かざりきといふ風聞《うはさ》さへこれに益なく 六七―六九
かの女が、心堅《かた》く膽大《きもふと》ければ、マリアを下に殘しつゝ、クリストとともに十字架に上《のぼ》りし事さへこれが益とならざりき 七〇―七二
されどわが物
前へ 次へ
全121ページ中17ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
山川 丙三郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング