ァ人《びと》とトスカーナ人とを分つ)の間に住める者なりき 八八―九〇
そのかみ己が血をもて湊を熱くせしわが故郷《ふるさと》はブッジェーアと殆ど日出《ひので》日沒《ひのいり》を同うす 九一―九三
わが名を知れる人々我をフォルコと呼べり、我今|象《かた》をこの天に捺《お》す、この天我に捺《お》しゝごとし 九四―九六
そはシケオとクレウザとを虐《しひた》げしベロの女《むすめ》も、デモフォーンテに欺かれたるロドペーアも、またイオレを心に 九七―
包める頃のアルチーデも、齡《とし》に適《ふさ》はしかりし間の我より強くは、思ひに燃えざりければなり ―一〇二
しかはあれ、こゝにては我等|悔《く》いず、たゞ笑ふ、こは罪の爲ならで(再び心に浮ばざれば)、定め、整《とゝの》ふる力のためなり 一〇三―一〇五
こゝにては我等、かく大いなる御業《みわざ》を飾る技巧を視、天界に下界を治めしむる善を知る 一〇六―一〇八
されどこの球の中に生じゝ汝の願ひ悉《こと/″\》く滿たされんため、我なほ語《ことば》を繼《つ》がざるべからず 一〇九―一一一
汝は誰《た》がこの光(あたかも清き水に映ずる日の光の如くわが傍《かたへ》に閃《ひらめ》くところの)の中にあるやを知らんと欲す 一一二―一一四
いざ知るべし、ラアブこのうちにやすらふ、彼われらの組に加はりその印をこれに捺すこと他に類《たぐひ》なし 一一五―一一七
人の世界の投ぐる影、尖《とが》れる端《はし》となる處なるこの天は、クリストの凱旋に加はる魂の中彼をば最も先に受けたり 一一八―一二〇
左右の掌《たなごゝろ》にて獲《ゑ》たる尊き勝利のしるしとして彼を天の一におくは、げにふさはしき事なりき 一二一―一二三
そは彼ヨスエを聖地――今やこの地殆ど法王の記憶に觸れじ――にたすけてその最初の榮光をこれにえさせたればなり 一二四―一二六
はじめて己が造主《つくりぬし》に背《そむ》き、嫉《ねた》みによりて深き歎きを殘せる者の建てたりし汝の邑《まち》は 一二七―一二九
詛《のろ》ひの花を生じて散らす、こは牧者を狼となして、羊、羔《こひつじ》をさまよはしゝもの 一三〇―一三二
これがために福音と諸※[#二の字点、1−2−22]の大いなる師とは棄てられ、人專ら寺院の法規《おきて》を學ぶことその紙端《かみのはし》にあらはるゝ如し 一三三―一三五
これにこそ法王もカルディナレもその心をとむるなれ、彼等の思ひはガブリエルロが翼を伸《の》べし處なるナツァレッテに到らじ 一三六―一三八
されどヴァティカーノ、その他ローマの中の選ばれし地にてピエートロに從へる軍人《いくさびと》等の墓となりたる所はみな 一三九―一四一
この姦淫より直ちに釋放たるべし。 一四二―一四四
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   第十曲

言ひ難き第一の力は、己が子を、彼と此との永遠《とこしへ》の息《いき》なる愛とともにうちまもりつゝ 一―三
心または處にめぐるすべての物をば、いと妙《たへ》なる次第を立てゝ造れるが故に、これを見る者必ずかの力を味ふ 四―六
讀者よされば目を擧げて我とともに天球にむかひ、一の運行の他と相觸《あひふ》るゝところを望み 七―九
よろこびて師の技《わざ》を見よ、師はその心の中に深くこれを愛し、目をこれより離すことなし 一〇―一二
見よ諸※[#二の字点、1−2−22]の星を携《たづさ》ふる一の圈、かれらを呼求むる世を足らはさんとて、斜《なゝめ》にかしこより岐《わか》れ出づるを 一三―一五
もしかれらの道|傾斜《なぞへ》ならずば、天の力多くは空しく、下界の活動《はたらき》殆どみな止まむ 一六―一八
またもし直線とこれとの距離《へだゝり》今より多きか少きときは、宇宙の秩序は上にも下にも多く缺くべし 一九―二一
いざ讀者よ、未だ疲れざるさきに疾く喜ぶをえんと願はゞ、汝の椅子に殘りて、わが少しく味はしめしことを思ひめぐらせ 二二―二四
我はや汝の前に置きたり、汝今より自ら食《は》むべし、わが筆の獻《さゝ》げられたる歌題はわが心を悉《こと/″\》くこれに傾けしむればなり 二五―二七
自然の最《いと》大いなる僕《しもべ》にて、天の力を世界に捺《お》し、かつ己が光をもてわれらのために時を量《はか》るもの 二八―三〇
わがさきにいへる處と合し、かの螺旋《らせん》即ちそが日毎《ひごと》に早く己を現はすその條《すぢ》を傳ひてめぐれり 三一―三三
我この物とともにありき、されど登れることを覺えず、あたかも思ひ始むるまでは思ひの起るを知らざる人の如くなりき 三四―三六
かく一の善よりこれにまさる善に導き、しかして己が爲す事の、時を占むるにいたらざるほどいと早きはベアトリーチェなり 三七―三九
わが入りし日の中にさへ色によらで光によりて現はるゝとは、げにそのものゝ自ら輝くこといかばか
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