べき者を王とす 一四五―一四七
是においてか汝等の歩履《あゆみ》道を離る。 一四八―一五〇
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第九曲
美しきクレメンツァよ、汝のカルロはわが疑ひを解きし後、我にその子孫のあふべき欺罔《たばかり》の事を告げたり 一―三
されどまた、默して年をその移るに任せよといひしかば、我は汝等の禍ひの後に正しき歎き來らんといふのほか何をもいふをえざるなり 四―六
さてかの聖なる光の生命《いのち》は、萬物を足らはす善の滿《み》たす如く己を滿たす日輪にはや再びむかひゐたりき 七―九
あゝ迷へる魂等よ、不信心なる被造物等よ、心をかゝる善にそむけて頭《かうべ》を空しき物にむくとは 一〇―一二
時に見よ、いま一の光、わが方に進み出で、我を悦ばせんとの願ひを外部《そと》の輝に現はせり 一三―一五
さきのごとく我に注げるベアトリーチェの目は、うれしくもわが願ひを容《い》るゝことをば定《さだ》かに我に知らしめき 一六―一八
我|曰《い》ふ。あゝ福《さいはひ》なる靈よ、請《こ》ふ速にわが望みをかなへ、わが思ふ所汝に映《うつ》りて見ゆとの證《あかし》を我にえさせよ。 一九―二一
是においてか未だ我に知られざりしかの光、さきに歌ひゐたる處なる深處《ふかみ》より、あたかも善行を悦ぶ人の如く、續いていふ 二二―二四
邪《よこしま》なるイタリアの國の一部、リアルトとブレンタ、ピアーヴァの源との間の地に 二五―二七
いと高しといふにあらねど一の山の聳《そび》ゆるあり、かつて一の炬火《たいまつ》こゝより下りていたくこの地方を荒しき 二八―三〇
我とこれとは一の根より生れたり、我はクニッツァと呼ばれにき、わがこゝに輝くはこの星の光に勝たれたればなり 三一―三三
されど我今喜びて自らわが命運の原因《もと》を赦《ゆる》し、心せこれに惱《なや》まさじ、こは恐らくは世俗の人にさとりがたしと見ゆるならむ 三四―三六
われらの天の中のこの光りて貴き珠《たま》、我にいと近き珠の名は今も高く世に聞ゆ、またその滅びざるさきに 三七―三九
この第百年はなほ五度《いつたび》も重ならむ、見よ人たる者己を勝《すぐ》るゝ者となし、第二の生をば第一の生に殘さしむべきならざるやを 四〇―四二
さるにターリアメントとアディーチェに圍まるゝ現在《いま》の群集《ぐんじゆう》これを思はず、撃《う》たるれどもなほ悔《く》いじ 四三―四五
されどパードヴァは、その民|頑《かたくな》にして義に背《そむ》くにより、程なく招の邊《ほとり》にて、かのヴィチェンツァを洗ふ水を變へむ 四六―四八
またシーレとカニアーンの落合ふ處は、或者これを治め、頭を高うして歩めども、彼を捕へんとて人はや網を造りたり 四九―五一
フェルトロもまたその非道の牧者の罪の爲に泣かむ、かつその罪はいと惡くしてマルタに入れられし者にさへ類《たぐひ》を見ざる程ならむ 五二―五四
己が黨派に忠なることを示さんとてこのやさしき僧の與ふるフェルラーラ人《びと》の血は、げにいと大いなる桶ならでは ―五五
これを容《い》るゝをえざるべく、※[#「オンス」の単位記号、63−7]《オンチャ》に分けてこれを量《はか》らばその人疲れむ、而《しか》してかゝる贈物《おくりもの》は本國《ところ》の慣習《ならはし》に適《かな》ふなるべし ―六〇
諸※[#二の字点、1−2−22]の鏡|上方《うへ》にあり、汝等これを寶座《ツローニ》といふ、審判《さばき》の神そこより我等を照らすがゆゑに我等皆これらの言葉を眞《まこと》とす。 六一―六三
かくいひて默《もだ》し、さきのごとく輪に加はりてめぐりつゝ、心をほかにむくるに似たりき 六四―六六
名高き者とはやわが知りしかの殘りの喜びは、日の光に當る良《よ》き紅玉《あかだま》の如くわが目に見えたり 六七―六九
上にては悦びによりて、強き光のえらるゝこと、世にて笑のえらるゝ如し、されど下にては心の悲しきにつれて魂黒く外《そと》にあらはる 七〇―七二
我曰ふ。福なる靈よ、神萬物を見給ひ、汝の目神に入る、是故にいかなる願ひも汝にかくるゝことあらじ 七三―七五
もしそれ然らば、六の翼を緇衣となす信心深き火とともに歌ひてとこしへに天を樂します汝の聲 七六―七八
何ぞわが諸※[#二の字点、1−2−22]の願ひを滿たさゞる、もしわが汝の衷《うち》に入ること汝のわが衷に入るごとくならば、我|豈《あに》汝の問を待たんや。 七九―八一
このとき彼曰ふ。地を卷く海を除《のぞ》きては、水|湛《たゝ》ふる溪《たに》の中にて最《いと》大いなるもの 八二―八四
相容《あひい》れざる二の岸の間にて、日に逆《さから》ひて遠く延びゆき、さきに天涯となれる所を子牛線《しごせん》となす 八五―八七
我はこの溪の邊《ほとり》、エブロとマークラ(短き流れによりてゼーノヴ
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