話にて、第一隊の百夫長、戰に臨み最先に槍を揮ふ者。ピエートロは寺院屈指の勇士《ますらを》なればかく
【恩惠】神の
六一―六三
【ローマを正しき】ローマ人をキリストの教へに歸せしめし
【汝の愛する兄爲】パウロ(ペテロ後、三・一五參照)
【録す】ヘブル書(パウロの筆と信ぜられし)に
六四―六六
【信仰とは】ヘブル書一一・一。但しダンテはヴルガータにもとづきかつこれが解釋をトマス・アクイナスの『神學大全』に採れり
七〇―七五
天上にありて今わが明に認むるを得る靈界の事物は、官能によりて知らるゝものにあらざるが故に、地上の人目にてこれを視るをえず、たゞ信仰によりてこれが存在を許容するのみ、人はこの信仰を基礎とし、その在りと信ずるものを親しく視るに至るの望み、換言すれば福祉を得るにいたるの望みをその上に築くがゆゑに信仰は即ち基に當る
七六―七八
また人は靈界の事物をば他の證《あかし》を用ゐず(他の物を見ず[#「他の物を見ず」に傍点])たゞ信仰の證によりて(即ち信仰にもとづく推理によりて)眞《まこと》とすべきものなるがゆゑに信仰は即ち證にあたる
七九―八一
【凡そ教へに】凡そ教訓によりて世人の學ぶ所のもの、汝が信仰を解する如く明確に解せられなば、詭辯者世にその才を施すの餘地なからむ
八二―八四
【この貨幣】信仰
【混合物とその重さ】合金の割合及び重さの如何によりて貨幣の眞僞を判ずる如く手落なく信仰の何たるを檢せりとの意
八五―八七
【己が財布の】己が心の
【そを鑄し樣に】贋造の疑ひなきまで(その眞なるを疑はざるほど)この貨幣(わがいだく信仰)は光りて(純にして)圓し(完し)
八八―九〇
【珠】信仰
九一―九三
【舊新二種の】舊新兩約書に注ぐ聖靈の惠《めぐみ》。即ち聖書に滿つる生産の示現
【皮】書《ふみ》。昔は文字を羊皮に録せり
九七―九九
【命題】Proposizion 三段論法における大小二の前提、こゝにては舊新兩約書、この兩書はダンテの信仰の眞なるを證するものなるが故にその決論に對する前提に等し
一〇〇―一〇二
聖書が神の言なることを證するものはこの言にともなふ奇蹟なり(マタイ、一六・二〇參照)
【自然が】自然の鍛へ上げ作りあげしにあらざる業《わざ》、即ち超自然の美
一〇三―一〇五
【自ら證を求むる者】聖書。聖書にのみ録《しる》さるゝ奇蹟によりて聖書の教への天啓なるを證せんとするは論理の原則に反すればなり
一〇六―一〇八
【奇蹟なきに】キリスト教の世に弘まれるは、とりもなほさず奇蹟の實際に行はれし證左なり、奇蹟なくしてかく弘まれりとせば、そは聖書中のすべての奇蹟を集むとも猶遙に及ばざるほど大いなる一の奇蹟なればなり。但しこの論法は昔より寺院の人の用ゐしもの
一〇九―一一一
最初キリスト教を世に宣傳へし人々が奇蹟の助けによらざればこれを弘めえざる境遇にありしをいへり
【良木の】良木の種を蒔くはキリスト教の信仰を植うるなり
【葡萄】寺院は園の如し(天、一二・八六參照)、その樹昔葡萄にて有徳の實を結びたれど今荊棘に變じて實なし
一一二―一一四
【われら神を】テー・デウム・ラウダームスの歌(淨、九・一三九―四一參照)
【諸※[#二の字点、1−2−22]の球】多くの輪を造れる聖徒達(一一行)
一一五―一一七
【枝より枝】問より問。梢[#「梢」に白丸傍点]はその最後の個條
【長】baron 對建時代における領主の稱號より轉じて君主、偉人の義に用ゐまた聖者達の尊稱として用ゐしことあり
一一八―一二〇
【契る】donnea(婦人と睦びかたらふ義)、神恩と心との緊密なる關係を表はす。汝を愛し汝の心に宿りて汝を助くる神の惠み
一二一―一二三
【出でしもの】汝の答
一二四―一二六
【墓の】キリストの屍その墓に在らずと聞き、ペテロ(ピエートロ)とヨハネ共に馳せて墓に向ふ、ヨハネまづかしこに至る、されど第一にその内に入れる者はペテロなり(ヨハネ、二〇・一以下)
ヨハネ傳に「見て信ぜり」(同上八)とあるによりダンテはペテロの信仰ヨハネにまさりゐたりと解せり
【もの】榮光のキリスト
一三〇―一三二
【愛と願ひと】神を愛するの愛と、神を慕ひ神に近づかんとするの願ひとを與へて。この愛この願ひあるが故に諸天運行す(天、一・七六―七參照)
一三三―一三八
古より行はれし類別に從ひて舊新兩約書を擧ぐ、即ちモーゼの五書、豫言者の諸書及び詩篇は舊約書にて、四福音書及び使徒達の諸書は新約書なり
【燃ゆる靈に】聖靈の助により心に光明をえて後諸書を録せる使徒達
【こゝより】天より地に
一三九―一四一
【ソノといひ】ソノ(sono)は在りの複數形にてエステ(este*)はその單數形なり、三として複數動詞を用ゐるとも一として單數動詞を用ゐるともいづれにてもよしとの意
*esteはラテン語
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