S亂るゝ習なるに、今かゝる嬉しさに堪へて敢て壞れざるは即ち心其物の強き證左なれば心自らこれをよろこぶ
二二―二四
【汝童なりし時、年は】汝は何年に生れたりや
二五―二七
【聖ジョヴァンニの羊の圈】フィレンツェ、バプテスマのヨハネの守護の下にありたればかく(地、一三―一四二―四並びに註參照)。圈の大いさを問ふはその人口を聞くなり
二八―三〇
【輝く】問に答ふる喜びのため
三一―三三
【近代の】カッチアグイーダはその時代のフィレンツェの言葉を用ゐしと見ゆ
三四―三六
以下三九行まで第二問の答
【アーヴェのいはれし日】天使が聖子の降誕を聖母に告知しゝ日、換言すればキリストの降誕、よりわが生れし日までに。アヴェ(幸あれ)は天使ガブリエルの會釋の詞(淨、一〇・三四以下參照)
三七―三九
千九十年餘の歳月を經たり
【この火】火星。プトレマイオスの説に從へば火星は六百八十七日弱にてその一周を終ふ、故にその五百八十周を年數に換算すれば千九十一年餘となり、カッチアグイーダの生れし年千九十一年を得(ムーアの、『ダンテ研究』第三卷五九―六〇頁參照)
【己が獅子の】獅子宮に入ること。特にこの天宮を指せるは火星即ち軍神マルテに猛獸を配せんためなり、兩者の性向相通ずるがゆゑに己が[#「己が」に白丸傍点]といへり
四〇―四二
以下四五行まで第一問の答
【年毎の競技】バプテスマのヨハネの祭日(六月二十四日)に行はれし競馬
【區劃】sesto 昔フィレンツェ市を六區に分てるが故に各區を sesto(sestiere)といふ。最後の區劃は競馬の決勝點に最も近き處にてこの區をポルタ・サン・ピエーロといへり
註釋者日く。競技者は西方より町を横切りてその東端ポルタ・サン・ピエーロにいたる、さればこの區の中競技者の最初に見る處は即ちその西境なり、こゝはエリゼイ家の邸宅ありしところなればアリギエーリ家とエリゼイ家(天、一五・一三六)と親戚なりしこと知らると
四三―四五
【これを】エリゼイ家の邸宅ありしあたりはフィレンツェの舊家の多かりし處なれば、かしこに住めることを聞きて
【言はざるを】言ふは誇る所良なれは
四六―四八
第三問の答。常時フィレンツェの人口は一三〇〇年における同市の人口の五分一なりしを告ぐ
【マルテと洗禮者との間】マルテ(ギリシアにてはアレス)の像あるポンテ・ヴェッキオ(地、一三・一四五―七並びに註參照)と聖ヨハネ(ジョヴァンニ)の洗禮所との間。當時のフィレンツェ市をその南北の城壁によりて表はせり
【今住む者】現住者にして武器を執るを得る者
註釋者曰く。一三〇〇年にはフィレンツェの人口約七萬(この中武器を執るを得る者三萬)なりき、故にカッチアグイーダの頃には約一萬四千(兵たりうべき者六千)なりきと
四九―五一
以下末まで第四問の答
【カムピ、チェルタルド、及びフェギーネ】フィレンツェの附近にありてこの市に屬しゝ小さき町の名。カムピはビセンチオの溪に、チェルタルドはエルザの溪に、フェギーネはアルノの溪にあり
【純なり】これらの町より人々出でゝ市に移住するにいたれるまでに市民の血全く純なりき
五二―五七
これらの民各※[#二の字点、1−2−22]其處に止まり、市その領域を漫りに大ならしめざりせば、諸民の混亂より生ずる禍は避けられしならむ
【ガルルッツォとトレスピアーノ】前者はフィレンツェの南二哩にある村、後者は同市の北三マイルにある村。昔の市領の境
【汝等の境】フィレンツェ領の境
【アグリオン】ペーザの溪の城
註釋者曰く。アグリオンの賤男とはメッセル・バルド・ダグリオネ即ちダンテと同時代の人にてフィレンツェ市に權勢を振ひ、かつ市の記録に關し淨、一二・一〇三―五(註參照)に見ゆる不正行爲ありし者を指すと
【シーニア】フィレンツェの西七マイルにある町
註釋者曰く。シーエアの賤男とはメッセル・ファーチオ・デーイ・モルバルヂニとて同じく市に權勢をふるひし汚吏の事なりと
五八―六〇
【最も劣れる人々】法王僧侶等寺院に屬する人々
【チェーザレと繼《まゝ》しからず】皇帝と爭はず
寺院が皇帝を敵視せるより政道その宜しきを失ひて爭亂止まず、市外の民難を避けて市内に入來り、市に秩序なく安寧なきに至れるをいふ、以下その例を擧ぐ
六一―六三
【ひとりの人】不明
【物乞へる】andava………a la cerca おもに僧侶の托鉢するをいふ
【シミフォンテ】エルザの溪にありし城。この城一二〇二年フィレンツェ人に毀たる
六四―六六
【モンテムルロ】ピストイアとプラートの間の城。この城もとグイード伯爵家の所有なりしがピストイア人の難に堪へずしてこれをフィレンツェ人に賣りたり(一二四五年)
【チェルキ】この一家はもとアーコネ(シエーヴェの溪にあり)の寺領なるモンテ・ディ・クローチェ城に住みしが
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