竕ヘは肉眼にて判別し能はざるほど小さき無數の恒星に外ならず」云々といへり
一〇〇―一〇二
【星座となり】銀河の如く大小の光を列ね
【深處】表面に對して内部をいふ
【象限相結びて】圓を四等分する二直徑交叉して。
【貴き標識】十字架
一〇三―一〇五
【わが記憶】われ思ひ出づれども才足らざれは記し難し
一〇六―一〇八
キリストの教へに從ひよく信仰の爲に戰ふ者、天に登る時いたりて、かの十字架上に現はれ給ひしキリストの姿を見ば、筆の力の及ばざるを知り、、我を責むることなからむ
一〇九―一一一
【桁】corno 角《つの》、十字架の横木の、左右に角の如く突出するをいふ
【きらめけり】まさる喜びの爲
一一二―一二七
【陰】種々の工夫を施せる物(たとへは窓硝子の蔽物《おほひ》など)を用ゐて日光を防げる室の中に隙《すき》洩る光差入るかまたは殊更に少しばかりの光を導き入るゝ場合などには、ゆきわたれる光の中に見え難き極微の物體この光の中にありて左右上下に浮遊するさま明らかに目に映ず
一二四―一二六
【起ちて勝て】註釋者曰く。キリストの甦りて死に勝ち給へるをいふと、但し特に指せる聖歌ありや不明なり
一三〇―一三二
【目】ベアトリーチェの
【かろんじ】歌を聞くの喜びがベアトリーチェの目を見るの喜びにもまさるごとく聞えしめ
一三三―一三五
【生くる印】諸天。諸物はこれが力によりてその秩序を保つが故に一切の美を捺すといふ。生くといへるはその運行及びその與ふる影響によりてなり
【高きに從つて】天は高きに從つて愈※[#二の字点、1−2−22]その力を増し愈※[#二の字点、1−2−22]その美を顯はす、故に火星天の顯はす美は其下なる諸天の顯はす美にまさる
一三六―一三九
【辯解かんため】輕率とみゆる言葉に對し
【自ら責むるその事】ベアトリーチェの目を未だ火星天にて見ざりしこと。これを見ずといふはかの言葉に對する辯解にして同時にまた新たなる自白なり
【我を責めず】下方の諸天にまさりて火星天の顯はす美がまづダンテの心を奪ひ、爲に淑女の目を見ざらしめたりとて彼を責めず
【眞を】歌について、即ち一二七―九行にいへる事
【聖なる樂しみ】ベアトリーチェの目を見る樂しみ
【除きて】火星天の美をあぐるは即ちベアトリーチェの美のまされるを間接に言ふにほかならじ


    第十五曲

ダンテの祖カッチアグイーダ、火星天にて詩人を迎へ、これにフィレンツェの昔を語り、また己が事を告ぐ
一―六
【あらはす】或は、溶くる。即ち慾の溶けて惡意となる如く、正しき愛溶けて善意となる義
【まつたき】原文、「正しく吹出づる」
【善意】ダンテにその願ひを言現はさしめんとの
【琴】第五天にて歌ふ聖徒の群
【弛べて締むる】天の右手[#「天の右手」に白丸傍点]即ち神が音を調へ給ふなり。絃は諸聖徒。しづまる[#「しづまる」に白丸傍点]は運動をやむるなり
一〇―一二
【この愛】聖徒の現はすまつたき愛
【歎く】地獄にて
一三―一五
【火】晴れし夕空に見ゆる流星(淨、五・三七――九參照)
【目を】人の。人驚きてこれを見るをいふ
一九―二一
【星座】十字架の中に輝く聖徒の群
二二―二四
【珠】二〇行の「星」即ち馳下れる聖徒。紐[#「紐」に白丸傍点]は十字架
【雪花石の】輝く十字架を傳ひ下る聖徒の光の見ゆることさながら雪花石(光りて透明なる)の後《うしろ》に動く火の見ゆる如し
二五―二七
【アンキーゼ】アンキセス。『アエネイス』(六・六八四以下)にアンキセスがわが子アエネアスの歩み來るを見直ちに手を伸べ涙を流してこれを歡び迎へしこといづ
【エリジオ】異教徒の説に、善人の魂のとゞまる處
【ムーザ】(詩神)『アエネイス』の作者ウェルギリウス(淨、七・一六―八に見ゆるソルデルロの言參照)
二八―三〇
カッチアグイーダの詞、この一聯すべてラテン語より成る
【二度】今と死後と
註釋者或はかの使徒パウロ(地、二・二八―三〇參照)が生前と死後と二たび天堂に入りたる例を引きて種々の議論をなせども、思ふにカッチアグイーダはたゞ大體の上よりかく曰ひしまでにて一二の例外に重きを置かざりしならむ、パウロの場合とダンテの場合とはもとより同一に非ざれども(カーシーニ註參照)、その差別によりてこの一聯を判ずること自然ならじ
三一―三三
【二重】一方にては一靈がダンテを己が血族と呼べるに驚き、他方にてはベアトリーチェの美の著しく増しゐたるに驚けるなり
三四―三六
【天堂の底】天上の幸福の極《きはみ》(天、一八・二一參照)
四〇―四二
【我より隱れ】わが悟る能はざることをいひ
四九―五一
われ未來の出來事を神の鏡に映しみて汝のこゝに來るを知り、長くその日を待侘びゐたり
【大いなる書】神の全智の書《ふみ》。この書の文字變ることなし。白の黒に變るは附加せ
前へ 次へ
全121ページ中85ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
山川 丙三郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング