えしよ 一三―一五
第六の光を飾る諸※[#二の字点、1−2−22]の貴きかゞやける珠、その妙《たへ》なる天使の歌を絶《た》ちしとき 一六―一八
我は清らかに石より石と傳ひ下りて己が源の豐《ゆたか》なるを示す流れのとある低語《さゝやき》を聞くとおぼえき 一九―二一
しかしてたとへば琵琶《びわ》の頸にて、音《おと》その調《しらべ》を得《え》、篳篥《ひちりき》の孔にて、入來る風またこれを得るごとく 二二―二四
かの鷲の低語《さゝやき》は、待つ間もあらず頸を傳ひて――そが空《うつろ》なりしごとく――上《のぼ》り來れり 二五―二七
さてかしこに聲となり、かしこよりその嘴を過ぎ言葉の體《かたち》を成して出づ、この言葉こそわがこれを録《しる》しゝ心の待ちゐたるものなれ 二八―三〇
我に曰ふ。わが身の一部、即ち物を見、かつ地上の鷲にありてはよく日輪に堪ふるところを今汝心して視るべし 三一―三三
そはわが用ゐて形をとゝなふ諸※[#二の字点、1−2−22]の火の中《うち》、目となりてわが首《かうべ》が輝く者、かれらの凡ての位のうちの第一を占むればなり 三四―三六
眞中《まなか》に光りて瞳となるは、聖靈の歌人《うたびと》、邑《まち》より邑にかの匱《はこ》を移しゝ者なり 三七―三九
今彼は、己が歌の徳――己が思ひよりこの歌のいでたるかぎり――をば、これにふさはしき報《むくい》によりて知る 四〇―四二
輪を造りて我眉となる五の火の中、わが嘴《くちばし》にいと近きは、寡婦《やもめ》をばその子の事にて慰めし者なり 四三―四五
今彼は、クリストに從はざることのいかに貴き價を拂ふにいたるやを知る、そは彼この麗《うるは》しき世とその反《うら》とを親しく味ひたればなり 四六―四八
またわがいへる圓のうちの弓形《ゆみがた》上《のぼ》る處にて彼に續くは、眞《まこと》の悔《くひ》によりて死を延べし者なり 四九―五一
今彼は、適《ふさ》はしき祈り下界にて、今日《けふ》の事を明日《あす》になすとも、永遠《とこしへ》の審判《さばき》に變りなきを知る 五二―五四
次なる者は、牧者に讓らんとて(その志善かりしかど結べる果《み》惡《あ》しかりき)律法《おきて》及び我とともに己をギリシアのものとなせり 五五―五七
今彼は、その善行より出でたる惡の、たとひ世を亡ぼすとも、己を害《そこな》はざるを知る 五八―六〇
弓形|下《くだ》る處に見ゆるはグリエルモといへる者なり、カルロとフェデリーゴと在るが爲に嘆く國彼なきが爲に泣く 六一―六三
今彼は、天のいかばかり正しき王を慕ふやを知り、今もこれをその輝く姿に表はす 六四―六六
トロイア人《びと》リフェオがこの輪の聖なる光の中の第五なるを、誤り多き下界にては誰か信ぜむ 六七―六九
今彼は、神の恩惠《めぐみ》について世のさとりえざる多くの事を知る、その目も底を認めざれども。 七〇―七二
まづ歌ひつゝ空に漂ふ可憐《いとほし》の雲雀《ひばり》が、やがて自ら最後《をはり》の節《ふし》のうるはしさに愛《め》で、心足りて默《もだ》すごとく 七三―七五
永遠《とこしへ》の悦び(これが願ふところに從ひ萬物皆そのあるごとくなるにいたる)の印せる像《かたち》も心足らへる如く見えき 七六―七八
しかしてかしこにては我のわが疑ひにおけるあたかも玻※[#「王+黎」、第3水準1−88−35]《はり》のその被《おほ》ふ色におけるに似たりしかど、この疑ひは默《もだ》して時を待つに堪へず 七九―八一
己が重《おも》さの力をもて、これらの事は何ぞやといふ言《ことば》をばわが口より押出したり、またこれと共に我は大いなる喜びの閃《ひらめ》くを見き 八二―八四
かくてかの尊《たふと》き徴號《しるし》、いよ/\つよく目を燃やしつゝ、我をながく驚異《あやしみ》のうちにとめおかじとて、答ふらく 八五―八七
我見るに、汝がこれらの事を信ずるは、わがこれを言ふが爲にてその所以を知れるに非ず、されば事信ぜられて猶隱る 八八―九〇
汝はあたかも物を名によりてよく會得《ゑとく》すれども、その本質にいたりては人これを現はさゞれば知る能はざる者の如し 九一―九三
それ天の王國[#「天の王國」に白丸傍点]は、熱き愛及び生くる望みに侵さる、これらのもの聖意《みこゝろ》に勝つによりてなり 九四―九六
されどその状《さま》人々を從ふる如きに非ず、そがこれに勝つはこれ自ら勝《か》たれんと思へばなり、しかして勝れつゝ己が仁慈《いつくしみ》によりて勝つ 九七―九九
さて眉の中なる第一と第五の生命《いのち》が天使の國に描かるゝを見て汝これを異《あや》しめども 一〇〇―一〇二
かれらはその肉體を出るに當り汝の思ふ如く異教徒なりしに非ず、基督教徒《クリスティアーニ》にて、彼は痛むべき足此は痛める足を固く信じき 一〇三―一〇五
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