》に祈る、汝の光を害ふ烟の出る處をみそなはし 一一八―一二〇
血と殉教とをもて築きあげし神殿《みや》の内に賣買《うりかひ》の行はるゝためいま一たび聖怒《みいかり》を起し給へと 一二一―一二三
あゝわが視る天の軍人《いくさびと》等よ、惡例《あしきためし》に傚ひて迷はざるなき地上の人々のために祈れ 一二四―一二六
昔は劒《つるぎ》をもて戰鬪《いくさ》をする習ひなりしに、今はかの慈悲深き父が誰にもいなみ給はぬ麺麭《パン》をばこゝかしこより奪ひて戰ふ 一二七―一二九
されど汝、たゞ消さんとて録《しる》す者よ、汝が荒す葡萄園《ぶだうばたけ》の爲に死にたるピエートロとパオロとは今も生くることを思へ 一三〇―一三二
うべ汝は曰はむ、たゞ獨りにて住むを好み、かつ一踊《ひとをどり》のため教へに殉ずるにいたれる者に我專らわが願ひを据ゑたれば 一三三―一三五
我は漁夫をもポロをも知らずと 一三六―一三八
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第十九曲
うるはしき樂しみのために悦ぶ魂等が相結びて造りなしゝかの美しき象《かたち》は、翼を開きてわが前に現はる 一―三
かれらはいづれも小さき紅玉《あかだま》が日輪の燃えて輝く光を受けつゝわが目にこれを反映《てりかへ》らしむる如く見えたり 四―六
しかしてわが今述べんとするところは、聲これを傳へ、墨これを録《しる》しゝことなく、想像もこれを懷《いだ》きしことなし 七―九
そは我見かつ聞きしに、嘴《くちばし》物言ひ、その聲の中にはわれら[#「われら」に傍点]とわれらの[#「われらの」に傍点]との意《こゝろ》なるわれ[#「われ」に傍点]とわが[#「わが」に傍点]と響きたればなり 一〇―一二
いふ。正しく慈悲深かりしため、こゝにはわれ今高くせられて、願ひに負けざる榮光をうけ 一三―一五
また地には、かしこの惡しき人々さへ美《ほ》むるばかりの――かれら美《ほ》むれど鑑《かゞみ》に傚《なら》はず――わが記念《かたみ》を遺しぬ。 一六―一八
たとへば數多き熾火《おきび》よりたゞ一の熱のいづるを感ずる如く、數多き愛の造れるかの象《かたち》よりたゞ一の響きいでたり 一九―二一
是においてか我直に。あゝ永遠《とこしへ》の喜びの不斷の花よ、汝等は己がすべての薫《かをり》をたゞ一と我に思はしむ 二二―二四
請ふ語りてわが大いなる斷食《だんじき》を破れ、地上に食物《くひもの》をえざりしため我久しく饑《う》ゑゐたればなり 二五―二七
我よく是を知る、神の正義天上の他の王國をその鏡となさば、汝等の王國も亦|幔《まく》を隔《へだ》てゝこれを視じ 二八―三〇
汝等はわが聽かんと思ふ心のいかばかり深きやを知る、また何の疑ひのかく長く我を饑ゑしめしやを知る。 三一―三三
鷹その被物《かぶりもの》を脱《と》らるれば、頭を動かし翼を搏《う》ち、願ひと勢《いきほひ》とを示すごとく 三四―三六
神の恩惠《めぐみ》の讚美にて編めるこの旗章《はたじるし》は、天に樂しむ者のみ知れる歌をうたひてその悦びを表《あら》はせり 三七―三九
かくていふ。宇宙の極《はて》に圓規《コムパス》をめぐらし、隱るゝ物と顯るゝ物とを遍《あまね》くその内に頒《わか》ちし者は 四〇―四二
己が言《ことば》の限りなく優《まさ》らざるにいたるほど、その力をば全宇宙に印する能はざりき 四三―四五
しかして萬《よろづ》の被造物《つくられしもの》の長《をさ》なりしかの第一の不遜者《ふそんじや》が光を待たざるによりて熟《う》まざる先に墜《おと》し事よくこれを證《あかし》す 四六―四八
されば彼に劣る一切の性《さが》が、己をもて己を量る無窮の善を受入れんには器《うつは》あまりに小さき事もまたこれによりて明らかならむ 四九―五一
是故に、萬物の中に滿つる聖意《みこゝろ》の光のたゞ一線《ひとすぢ》ならざるをえざる我等の視力は 五二―五四
その性《さが》として、己が源を己に見ゆるものよりも遙かかなたに認めざるほど強きにいたらじ 五五―五七
かゝれば汝等の世の享くる視力が無窮の正義に入りゆく状《さま》は、目の海におけるごとし 五八―六〇
目は汀《みぎは》より底を見れども沖にてはこれを見じ、されどかしこに底なきにあらず、深きが爲に隱るゝのみ 六一―六三
曇《くもり》しらぬ蒼空《あをぞら》より來るものゝ外光なし、否《いな》闇あり、即ち肉の陰またはその毒なり 六四―六六
生くる正義を汝に匿《かく》しこれについてかくしげく汝に問を發《おこ》さしめたる隱所《かくれどころ》は、今よく汝の前に開かる 六七―六九
汝|曰《いひ》けらく、人インドの岸に生れ(かしこにはクリストの事を説く者なく、讀む者も書く者もなし) 七〇―七二
人間の理性の導くかぎり、その思ふ所|爲《な》すところみな善く言行《ことばおこなひ》に罪なけれど 七三―七五
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