曰へり、是に於てかわが師曰ふ。汝答へよ、しかして登りの道のこなたにありや否やを問ふべし。 二八―三〇
我。あゝ身を麗しうして己が造主《つくりぬし》に歸らんため罪を淨むる者よ、汝我にともなはば奇《くす》しき事を聽くをえむ。 三一―三三
答へて曰ふ。我汝に從ひてわが行くをうる間はゆかむ、烟は見るを許さずとも聞くことこれに代りて我等を倶にあらしめむ。 三四―三六
このとき我曰ふ。我は死の解く纏布《まきぎぬ》をまきて登りゆくなり、地獄の苦しみを過ぎてこゝに來れり 三七―三九
神はわがその王宮を、近代《ちかきよ》に全く例《ためし》なき手段《てだて》によりて見るを好《よみ》したまふまで、我をその恩惠《めぐみ》につゝみたまへるなれば 四〇―四二
汝死なざる前《さき》は誰なりしや請ふ隱さず我に告げよ、また我のかくゆきて徑《こみち》にいたるや否やを告げて汝の言を我等の導《しるべ》とならしめよ。 四三―四五
我はロムバルディアの者にて名をマルコといへり、我よく世の事を知り、今はひとりだに狙《ねら》ふ人なき徳を慕へり 四六―四八
汝登らんとてこなたにゆくはよし。かく答へてまたいふ。高き處にいたらば請ふ汝わが
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