く》の雜木《ざつぼく》これらの境界《さかひ》の内に滿つれば、今はたとひ耕すともたやすく除《のぞ》き難からむ 九四―九六
善きリーチオ、アルリーゴ・マナルディ、ピエール・トラヴェルサーロ、グイード・ディ・カルピーニア今|何處《いづこ》にかある、噫※[#二の字点、1−2−22]庶子となれる 九七―
ローマニア人《びと》等よ、フアッブロの如き者いつか再びボローニアに根差《ねざ》さむ、賤しき草の貴き枝ベルナルディン・ディ・フォスコの如き者
いつか再びファーエンツァよりいでむ、トスカーナ人《びと》よ、かのグイード・ダ・プラータ、我等と住めるウゴリーン・ダッツォ
フェデリーゴ・ティニヨーソ及びその侶《とも》、トラヴェルサーラ家アナスタージ(いづれの族《やから》も世繼なし)
また淑女騎士、人の心かく惡しくなりし處にて愛と義氣にはげまされて我等が求めし苦樂を憶ひ出づる時、我泣くともあやしむなかれ ―一一一
あゝブレッティノロよ、汝の族《やから》と多くの民は罪を避けてはや去れるに、汝何ぞ亡びざるや 一一二―一一四
バーニアカヴァールは善し、再び男子《なんし》を生まざればなり、カストロカーロは惡し、而してコーニオは愈※[#二の字点、1−2−22]あし、今も力《つと》めてかゝる伯等《きみたち》を 一一五―
生めばなり、パガーニはその鬼去るの後よからむ、されど無垢《むく》の徴《しるし》をあとに殘すにいたらじ ―一二〇
あゝウゴリーン・デ・ファントリーンよ、汝の名は安し、そは父祖に劣りてこれを辱《はづか》しむる者いづるの憂ひなければなり 一二一―一二三
いざ往けトスカーナ人よ、われらの談話《ものがたり》いたく心を苦しめたれば、今はわれ語るよりなほはるかに泣くをよろこぶ。 一二四―一二六
我等はかの愛する魂等がわれらの足音を聞けるを知れり、されば彼等の默《もだ》すをみて路の正しきを疑はざりき 一二七―一二九
我等進みてたゞふたりとなりしとき、空を擘《つんざ》く電光《いなづま》のごとき聲前より來り 一三〇―一三二
およそ我に遇ふ者我を殺さむといひ、雲|遽《にはか》に裂くれば音《おと》細《ほそ》りてきゆる雷《いかづち》のごとく過ぐ 一三三―一三五
この聲我等の耳に休歇《やすみ》をえさせし程もなく見よまた一の聲、疾《と》く續く雷に似て高くはためき 一三六―一三八
我は石となれるアグラウロなりといふ、この時われ身を近く詩人に寄せんとて一歩あとに(まへに進まず)退きぬ 一三九―一四一
四方《よも》の空はや靜かになりぬ、彼我に曰ふ。これは硬き銜《くつわ》にて己が境界《さかひ》の内に人をとどめおくべきものなり 一四二―一四四
しかるに汝等は餌をくらひ、年へし敵の魚釣《はり》にかゝりてその許に曳かれ、銜《くつわ》も呼《よび》も殆んど益なし 一四五―一四七
天は汝等を招き、その永遠《とこしへ》に美しき物を示しつゝ汝等をめぐる、されど汝等の目はたゞ地を見るのみ 一四八―一五〇
是に於てか萬事《よろづのこと》をしりたまふもの汝等を撃つ。 一五一―一五三
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第十五曲
暮《くれ》にむかひてすゝむ日のなほ殘せる路の長さは、たえず戲るゝこと稚子《をさなご》のごとき球のうち 一―
晝の始めより第三時の終りに亙りてあらはるゝところと同じとみえたり、かしこは夕《ゆふべ》こゝは夜半《よは》なりき ―六
我等既に多く山をめぐり、いまはまさしく西にむかひて歩めるをもて光まともに我等をてらしゐたりしに 七―九
我はその輝《かゞやき》ひときは重くわが額を壓《お》すをおぼえしかば、事の奇《くす》しきにおどろきて 一〇―一二
雙手《もろて》を眉のあたりに翳《かざ》し、つよきに過ぐる光を減《へ》らす一の蔽物《おほひ》をわがために造れり 一三―一五
水または鏡にあたりて光反する方に跳《は》ぬれば、くだるとおなじさまにてのぼり 一六―
その間隔《あはひ》をひとしうして垂線をはなるゝは、學理と經驗によりてしらる ―二一
我もかゝる時に似て、わが前に反映《てりかへ》す光に射らるゝごとくおぼえき、さればわが目はたゞちに逃げぬ 二二―二四
われいふ。やさしき父よ、かの物何ぞや、我これを防ぎて目を護らんとすれども益なし、またこはこなたに動くに似たり。 二五―二七
答へて我に曰ふ。天の族《やから》今なほ汝をまばゆうすとも異《あや》しむなかれ、こは人を招きて登らしめんために來れる使者《つかひ》なり 二八―三〇
これらのものをみること汝の患《うれ》へとならずして却つて自然が汝に感ずるをえさするかぎりの悦樂《たのしみ》となる時速かにいたらむ。 三一―三三
我等|福《さいはひ》なる天使の許にいたれるに、彼喜ばしき聲にていふ。汝等こゝより入るべし、さきの階《きざはし》よりははるかに易き一の階そこにあり。 三
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