力あるもの即ち自己の經驗によりて汝の意見に誤りなきを知るならむ
一三〇六年の秋逐客のダンテ、ルーニジアーナにいたりてマラスピーナ一家の歡待をうけしを指す
一三九 若し神の定めたまふこと(ダンテの逐客となりて處々に流寓すべきこと等)かはらずば
第九曲
ダンテ、君王の溪に眠りて夢み、眠り覺むれば日既に高く身は淨火の門に近し、その傍にはたゞウェルギリウスあるのみ、門を守る天使兩詩人のいふところをきき扉をひらきて内に入らしむ
一―六
淨火の夜景を敍せるなるべし、されど極めて難解にして意義明かならざるところ多し、こゝにてはたゞ諸註の中、主なるものの一をあぐ(委しくはムーアの『ダンテ研究』第三卷七四頁以下を見よ)
【ティトネの妾】月のエオス(アクローラ)(月代)即ち月まさに出でんとして東方の白むをいへり(ラーナ)ティトノス(ティーネ)はトロイア王ラオメドンの子、朝の女神エオスに慕はれこれを妻として不死の身となれりといふ(神話)。ダンテこの傳説にもとづき日のエオスをティトノスの正妻と見做し月のエオスをその妾と見做せるか
【友】ティトノス
【臺】地平線上
【生物】蠍。天蠍宮の星東の空にあらはれしをいふ
七―九
【夜は】夜の八時半過。春分の頃の夜の半即ち午後六時より夜半までを昇《のぼり》としその他を降《くだり》とすれば昇の二歩を終ふるは午後八時なり、第三歩翼を下に曲ぐるは八時と九時の間も既に半を過ぎたるなり
一〇―一二
【アダモの】肉體の係累あるにより
【五者】ダンテ、ウェルギリウス、ソルデルロ、ニーノ、クルラード
一三―一八
【憂ひ】化して燕となれるピロメラがトラキア王テレウスの辱しめをうけし昔の悲しみを訴ふるなり(淨、一七・一九―二一註參照)
【時】曙(地、二六・七―一二註參照)
二二―二四
【ところ】プリュギアのイデ(イーダ)山。ガニュメデスはトロイア王トロスの子にして世にたぐひなき美男子なり、かつてその朋輩とイデ山上に狩す、ゼウス一羽の鷲をおくりてこれをさらはせ天にとゞめて神々に奉仕せしむ(神話)
二五―二七
【こゝに】イデ山に
二八―三〇
【火】火炎界。中古の學説に空氣を圍繞する火、空氣と月天の間にあり
三四―三九
キロネはアキレウスをはぐくめるケンタウロスなり(地、一二・七〇―七二參照)
アキレウスの母テティス、トロイアの難をおそれてわが子をキロネより奪ひその眠れる間にこれをエーゲ海中の一島シロ(或ひはスキュロス)に移せり(神話)、眠り覺めしアキレウスのおどろきあやしめるさまスタティウスの『アキルレース』一・二四七以下にいづといふ
【ギリシア人】オデュセウスとディオメデス(地、二六・六一―三註參照)
四三―四五
【慰むる者】ウェルギリウス
【日は】四月十一日の午前八時頃
五二―五四
【汝の中に】汝の肉體の中に
五五―五七
【ルーチア】神恩の光(地、二・九七―九註參照)
五八―六〇
【魂】原文 forme 肉體を形成するものの義(地、二七・七三參照)
六一―六三
【開きたる】岩分るゝとみゆるをいふ(四九―五一行並びに七三―五行參照)
七〇―七二
【技】詩材にふさはしき作詩の技巧
七六―七八
【門守】門を守る天使は僧侶を代表す、懺悔を聞きて人を淨めの途に就かしむればなり
八二―八四
【目を擧ぐれども】かの白刃を見んとて
八五―八七
【導者】天使は兩詩人の淨火にとゞまるべき魂にあらざるを知り、たゞ何の力に導かれてかしこにいたれるやを問へるなり
【禍ひを】神恩とまことの改悔によりて人の罪淨めらる、その道によらずして罪を淨めんとする者は自ら禍ひを招くに等し
九四―一〇二
註釋者曰。淨火門前の三段は改悔の三要素すなはち心の悔、罪の告白、行の贖の象徴なり、第一の段即ち最下方にあるものは汚れなき心に寫して己が姿を見、己が眞状を知るを表示す、第二の段は色の黒きによりて心の暗き影を表示し縱横の龜裂によりて罪の告白能く心の拗執に勝つを表示す、第三の段即ち最上方にあるものはその赤色によりて、改悔を行ひに顯はし神意を滿さんとする心の愛燃ゆるばかりなるを表示すと
【ペルソ】地、五・八八―九〇註參照
一〇三―一〇五
【金剛石】神意によりて定まれる懺悔の僧の立場の堅固なるを表はす
一〇九―一一一
【胸を】ルカ、一八・一三に税吏神前に罪を悔いて己が胸をうちしこといづ
一一二―一一四
【七のP】淨火の七界に淨めらるべき七の罪(Peccati)のしるし。たとひ罪の行ひを赦さるともその行ひの本なる邪念を心に宿すときは人天堂に入ること能はず
一一五―一一七
註繹者曰。灰色は懺悔を聞く僧が謙遜の心をもてその任務を果すを表はすと
【二の鑰】天國の鑰(マタイ、一六・一九)
一二一―一二六
金の鑰は人の罪を釋くことをうる僧侶の權能の象徴にて銀の鑰は改悔者の眞の状態を知
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