この時われ身を近く詩人に寄せんとて一歩あとに(まへに進まず)退きぬ 一三九―一四一
四方《よも》の空はや靜かになりぬ、彼我に曰ふ。これは硬き銜《くつわ》にて己が境界《さかひ》の内に人をとどめおくべきものなり 一四二―一四四
しかるに汝等は餌をくらひ、年へし敵の魚釣《はり》にかゝりてその許に曳かれ、銜《くつわ》も呼《よび》も殆んど益なし 一四五―一四七
天は汝等を招き、その永遠《とこしへ》に美しき物を示しつゝ汝等をめぐる、されど汝等の目はたゞ地を見るのみ 一四八―一五〇
是に於てか萬事《よろづのこと》をしりたまふもの汝等を撃つ。 一五一―一五三
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第十五曲
暮《くれ》にむかひてすゝむ日のなほ殘せる路の長さは、たえず戲るゝこと稚子《をさなご》のごとき球のうち 一―
晝の始めより第三時の終りに亙りてあらはるゝところと同じとみえたり、かしこは夕《ゆふべ》こゝは夜半《よは》なりき ―六
我等既に多く山をめぐり、いまはまさしく西にむかひて歩めるをもて光まともに我等をてらしゐたりしに 七―九
我はその輝《かゞやき》ひときは重くわが額を壓《お》すをおぼえしかば、事の奇《くす》しきにおどろきて 一〇―一二
雙手《もろて》を眉のあたりに翳《かざ》し、つよきに過ぐる光を減《へ》らす一の蔽物《おほひ》をわがために造れり 一三―一五
水または鏡にあたりて光反する方に跳《は》ぬれば、くだるとおなじさまにてのぼり 一六―
その間隔《あはひ》をひとしうして垂線をはなるゝは、學理と經驗によりてしらる ―二一
我もかゝる時に似て、わが前に反映《てりかへ》す光に射らるゝごとくおぼえき、さればわが目はたゞちに逃げぬ 二二―二四
われいふ。やさしき父よ、かの物何ぞや、我これを防ぎて目を護らんとすれども益なし、またこはこなたに動くに似たり。 二五―二七
答へて我に曰ふ。天の族《やから》今なほ汝をまばゆうすとも異《あや》しむなかれ、こは人を招きて登らしめんために來れる使者《つかひ》なり 二八―三〇
これらのものをみること汝の患《うれ》へとならずして却つて自然が汝に感ずるをえさするかぎりの悦樂《たのしみ》となる時速かにいたらむ。 三一―三三
我等|福《さいはひ》なる天使の許にいたれるに、彼喜ばしき聲にていふ。汝等こゝより入るべし、さきの階《きざはし》よりははるかに易き一の階そこにあり。 三
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