これを唆《そゝの》かす者よりねがはくは救ひ出したまへ 一九―二一
この最後《をはり》の事は、愛する主よ、我等|祈《ね》ぎまつるに及ばざれども、かくするはげに己の爲にあらずしてあとに殘れる者のためなり。 二二―二四
斯く己と我等のために幸《さち》多き旅を祈りつゝ、これらの魂は、人のをりふし夢に負ふごとき重荷《おもに》を負ひ 二五―二七
等しからざる苦しみをうけ、みな疲れ、世の濃霧《こききり》を淨めつゝ第一の臺《うてな》の上をめぐれり 二八―三〇
彼等もし我等のためにかしこにたえず幸《さいはひ》を祈らば、己が願ひに良根《よきね》を持つ者、こゝに彼等のために請ひまた爲しうべき事いかばかりぞや 三一―三三
我等は彼等が清く輕くなりて諸※[#二の字点、1−2−22]の星の輪にいたるをえんため、よく彼等を助けて、そのこゝより齎《もた》らせし汚染《しみ》を洗はしむべし 三四―三六
あゝ願はくは正義と慈悲速かに汝等の重荷《おもに》を取去り、汝等翼を動かして己が好むがまゝに身を上ぐるをえんことを 三七―三九
請ふいづれの道の階《きざはし》にいとちかきやを告げよ、またもし徑《こみち》一のみならずば、嶮《けは》しからざるものを教へよ 四〇―四二
そは我にともなふこの者、アダモの肉の衣《ころも》の重荷《おもに》あるによりて、心いそげど登ることおそければなり。 四三―四五
我を導く者斯くいへるとき、彼等の答への誰より出でしやはあきらかならざりしかど 四六―四八
その言にいふ。岸を傳ひて我等とともに右に來《こ》よ、さらば汝等は生くる人の登るをうべき徑《こみち》を見ん 四九―五一
我若しわが傲慢《たかぶり》の項《うなじ》を矯《た》め、たえずわが顏を垂れしむるこの石に妨げれずば 五二―五四
名は聞かざれど今も生くるその者に目をとめ、わが彼を知るや否やをみ、この荷のために我を憐ましむべきを 五五―五七
我はラチオの者にて、一人《ひとり》の大いなるトスカーナ人《びと》より生れぬ、グイリエルモ・アルドブランデスコはわが父なりき、この名汝等の間に 五八―
聞えしことありや我知らず、わが父祖の古き血と讚《ほ》むべき業《わざ》我を僭越ならしめ、我は母の同じきをおもはずして ―六三
何人をもいたく侮りしかばそのために死しぬ、シエーナ人《びと》これを知り、カムパニヤティーコの稚兒《をさなご》もまたこぞりてこれをし
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