簡易の一生を送れる王、イギリスのアルリーゴのかしこにひとり坐せるを見よ、かれの枝にはまされる芽《め》あり 一三〇―一三二
彼等のうち地のいと低きところに坐して仰ぎながむる者は侯爵《マルケーゼ》グイリエルモなり、彼の爲なりきアレッサンドリアとその師《いくさ》とが 一三三―一三五
モンフェルラートとカナヴェーゼとを歎かしむるは。 一三六―一三八
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第八曲
なつかしき友に別れを告げし日、海行く者の思ひ歸りて心やはらぎ、また暮るゝ日を悼《いた》むがごとく 一―三
鐘遠くより聞ゆれば、はじめて異郷の旅にある人、愛に刺さるゝ時とはなりぬ
我は何の聲をもきかず、一の魂の立ちて手をもて請ひて、耳をかたむけしむるを見たり 七―九
この者手を合せてこれをあげ、目を東の方《かた》にそゝぎぬ、そのさま神にむかひて、われ思ひをほかに移さずといふに似たりき 一〇―一二
テー・ルーキス・アンテその口よりいづるに、信念あらはれ調《しらべ》うるはしくして悉くわが心を奪へり 一三―一五
かくて全衆これに和し、目を天球にむかはしめつゝ、聲うるはしく信心深くこの聖歌をうたひをはりき 一六―一八
讀者よ、いざ目を鋭くして眞《まこと》を見よ、そは被物《おほひ》はげに今いと薄く、内部《うち》をうかがふこと容易なればなり 一九―二一
我はかの際《きは》貴《たか》き者の群《むれ》の、やがて色|蒼《あを》ざめ且つ謙《へりくだ》り、何者をか待つごとくに默《もだ》して仰ぎながむるを見き 二二―二四
また尖《さき》の削りとられし二の焔の劒《つるぎ》をもち、高き處よりいでて下り來れるふたりの天使を見き 二五―二七
その衣《ころも》は、今|萌《も》えいでし若葉のごとく縁なりき、縁の羽に打たれ飜《あふ》られて彼等の後方《うしろ》に曳かれたり 二八―三〇
そのひとりは我等より少しく上方《うへ》にとゞまり、ひとりは對面《むかひ》の岸にくだり、かくして民をその間に挾《はさ》めり 三一―
我は彼等の頭《かうべ》なる黄金《こがね》の髮をみとめしかど、その顏にむかへば、あたかも度を超ゆるによりて能力《ちから》亂るゝごとくわが目|眩《くら》みぬ ―三六
ソルデルロ曰ふ。彼等ふたりは溪をまもりて蛇をふせがんためマリアの懷《ふところ》より來れるなり、この蛇たゞちにあらはれむ。 三七―三九
我これを聞きてそのいづれの路より
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