くいたるをえせしめよ。 三七―三九
答へて曰ふ。我等は定まれる一の場所におかるゝにあらず、上《のぼ》るも※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]《めぐ》るも我これを許さる、われ導者となりて汝と倶に 四〇―
わが行くをうる處までゆくべし、されど見よ日は既に傾きぬ、夜登る能はざれば、我等うるはしき旅宿《やどり》を求めむ ―四五
右の方《かた》なる離れし處に魂の群《むれ》あり、汝|肯《うけが》はば我は汝を彼等の許に導かむ、汝彼等を知るを喜びとせざることあらじ。 四六―四八
答へて曰ふ。いかにしてこの事ありや、夜登らんとおもふ者は他《ほか》の者にさまたげらるゝかさらずば力及ばざるため自ら登る能はざるか。 四九―五一
善きソルデルロ指にて地を擦《す》りていふ。見よ、この線《すぢ》をだに日入りて後は汝越えがたし 五二―五四
されど登《のぼり》の障礙《しやうげ》となるもの夜の闇のほかにはあらず、この闇|能力《ちから》を奪ひて意志をさまたぐ 五五―五七
天涯晝をとぢこむる間は、汝げに闇とともにこゝをくだりまたは迷ひつゝ山の腰をめぐるをうるのみ。 五八―六〇
この時わが主驚くがごとくいひけるは。さらば請ふ我等を導き、汝の我等に喜びてとゞまるをうべしといへる處にいたれ。 六一―六三
我等少しくかしこを離れしとき、我は山の窪みてあたかも世の大溪《おほたに》の窪むに似たるところを見たり 六四―六六
かの魂曰ふ。かなたに山腹のみづから懷《ふところ》をつくるところあり、我等かしこにゆきて新たなる日を待たむ 六七―六九
忽ち嶮《けは》しく忽ち坦《たひらか》なる一條の曲路我等を導いてかの坎《あな》の邊《ほとり》、縁《ふち》半《なかば》より多く失せし處にいたらしむ 七〇―七二
金、純銀、朱、白鉛、光りてあざやかなるインドの木、碎けし眞際《まぎは》の新しき縁の珠も 七三―七五
各※[#二の字点、1−2−22]その色を比ぶれば、かの懷の草と花とに及ばざることなほ小の大に及ばざるごとくなるべし 七六―七八
自然はかしこをいろどれるのみならず、また千の良《よ》き薫《かをり》をもて一の奇しきわけ難き香《にほひ》を作れり 七九―八一
我見しにこゝには溪のため外部《そと》よりみえざりし多くの魂サルウェ・レーギーナを歌ひつゝ縁草《あをくさ》の上また花の上に坐しゐたり 八二―八四
我等をともなへるマントヴァ人《びと
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