オにゴミータ賄賂を受けてひそかに彼等を自由の身となし事覺はるゝに及びて絞罪に處せらる
八五―八七
【穩かに】di piano 詮議に及ばす、しかるべき手續を經ずして
ゴミータの首をそのまゝ借り來れるなり
八八―九〇
【ロゴドロ)サールディニア四州の中西北の一州
【ミケーレ・ツァンケ】ロゴドロ州の知事たりしエンチオ(フリートリヒ二世の庶子)、ボローニア人に捕はれし時ミケーレこれに代りて政務を司り、一二七一年エンチオ死して後その寡婦アデラーシアを娶り一女を生む、一二九〇年頃その女婿ブランカ・ドーリアこれを殺せり(地、三三・一三七以下參照)、「ドンノ」は敬語
【善く彼と語る】或ひは、尊く彼と會す
九一―九三
【瘡を引掻かんとて】卑しき俗言、用捨なく打つこと
九七―九九
【トスカーナ、ロムバルディア】まづサールディニアの者をあげ次にイタリアの者の事をいふこれチャンポロの奸智なり
一〇〇―一〇二
【禍ひの爪】鬼(地、二一―三七―四二註參照)
一〇三―一〇五
口笛を相圖に鬼のゐざるを知らして侶を招くなり
【七人】多數をいふ(地、八・九七―一〇二註參照)
一〇九―一一一
鬼を欺くのあしきをいへるカーニヤッツォの詞をうけて侶を欺くのあしきにいひかへたるチャムポロの奸智
一一五―一一七
【頂上を棄て】第五と第六嚢の間の堤の頂を下り少しく六嚢の方にむかひ岸を隔とし
一一八―一二〇
【心なかりしもの】カーニヤッツォ、或曰カルカブリーナと
鬼皆背を脂にむけしなり
一二一―一二三
【長】九四行の大なる長バルバリッチヤ
或曰、proposto は企の意にてチャムポロが鬼の引裂かんとする企をまのがれしをいふと
一三三―一三五
カルカブリーナはアーリキーノ(アリキーン)にむかひて怒りを起せるなり
一四八
【かなた、こなた】彼岸に飛びゆける四の鬼及びあとに殘れる長と三の鬼
【上層の中に燒かれし】脂の表近きところに燒かれし
一説に曰、crosta は鬼の皮膚の脂に燒かれて硬くなりたるものを指しその中にといへるはかたき皮膚を透して既に肉まで燒け初めし意をあらはせるなりと
第二十三曲
詩人等たゞふたり堤を傳ひて進むうち鬼後より追來ればウェルギリウスはダンテを抱き逃れて第六嚢の中にくだる、こゝには鉛の衣を着し僞善者の群あり、そのうちボローニアのカタラーノなる者その侶ローデリンゴと共に來りてダンテとかたりまた路をウェルギリウスに教ふ
一―三
【ミノリ僧】フランチェスコ派の僧、古註曰、此等の僧路を行く時は上位の僧をさきに一列となりて相前後せりと
四―六
【イソーポの寓話】アイソポスの寓話、蛙と鼠あり共に放して水邊にいたる、蛙は鼠をたすけて水を超ゆべしといひて之を欺きその足と己が足とを結びあはせ水深き處にいたりて溺れしむ、會※[#二の字点、1−2−22]一羽の鳶(或ひは鷹)鼠の水に浮ぶをみて之をひきあげ、はからずも生ける蛙を得たり
中古專ら行はれしラテン語譯の『アイソポス物語』の中には往々類似の寓話(所謂アイソポス以外の)をも收めし者ありて區別明かならず、蛙と鼠の話もまたその一なりといふ
七―九
【モとイッサ】‘mo’e‘issa’共にラテン語より出でし今の義
カルカブリーナのアーリキーノを害せんとせるは鼠の蛙を水に溺れしめんとせるに同じくその相爭ひて脂の上に落ちしは蛙と鼠と共に鳶に捕へられしに似たり
二五―二七
【鏡】原語、鉛ひきし硝子
二八―三〇
【二の物】汝の思ひとわが思ひ
三一―三三
【追】詩人等の心に畫きておそるゝ鬼の追撃
四六―五六
【縁】岸の側面
六一―六三
【クルーニ】ボルゴニア州(フランスの東)にあるベネデクト派の僧院なり
オックスフォード版其他にはコローニアとあり不明、古註曰、コローニアはドイツのライン河畔の一都會にてこゝに一僧院あり當時富貴第一なりければ院の主僧虚榮の念に驅られあまたの僧徒を從へて法王の許にいたり緋の僧衣を許されんことを乞ふ、法王その僭越を惡み命を下して却つて之に粗服を着けしめ且つ巨大の僧帽を戴かしむ云々
六四―六六
【フェデリーゴ】フリートリヒ二世(地、一〇・一一九)大逆の罪を犯せる者を罰するに指の厚さなる鉛の衣を裸なる罪人に着せ大釜の中に入れて熱火にかけしといふ當時の説によれるなり
七六―七八
【はせゆく】己の足おそければ詩人等の歩むさま恰もはせゆくに似たり
八二―八四
【荷】重き鉛の衣
九四―九六
【邑】フィレンツェ
九七―九九
【煌めくは】あきらかにあらはるゝは
一〇〇―一〇二
重き物體を秤にかくればその秤軋む如く我等も金色の衣のおもさにかく歎聲をいだすなり
一〇三―一〇八
【フラーテ・ゴデンティ】もと聖マリアの騎士と稱し一二六一年法王ウルバヌス四世の批准をえてボローニアに編成せられ軍事と宗教とに關せし一團なり、イタリア各市の黨派の軋轢及び閥族爭鬪の調停弱者の保護等を目的とし勢力甚だ盛なりしも騎士等次第にこの目的を忘れてたゞ安逸をのみ求めしかばこゝに喜樂僧の名を得るにいたれるなり
【カタラーノ、ローデリンゴ】一二六六年ギベルリニ黨の首領王マンフレディ、ベネヴェントの戰ひに敗れ屍を戰陣に曝せし時モンタペルティの戰ひ(一二六〇年)よりこの方敵黨の威壓の下にありしフィレンツェのグエルフィ黨再びその頭を擡ぐるにいたりたればフィレンツェは禍ひを未發に防がんため同じ年ボローニアよりグエルフィ黨のカタラーノ、ギベルリニ黨のローデリンゴを招き同時にフィレンツェのポデスタとなし兩黨の調和市政の革新を計らしむ、しかるに彼等利慾に迷ひ法王クレメンス四世の意を迎へグエルフィ黨と好みを通じて密かにその頽勢を挽囘するに力めたり
【常は】通例はひとりのポデスタを選ぶ定めなるに
【ガルディンゴ】ガルディンゴはフィレンツェ市の一部にてギベルリニ黨中屈指の名族ウベルティ家の邸宅ありしところ、カタラーノ等表に公平を飾りて暗に一黨派の益をはかれる結果ギベルリニ黨遂に市外に逐はれその邸宅多く破壞せらるゝにいたりし時ウベルティ家も亦暴徒等の燒くところとなりてその燒跡當時ガルディンゴの附近に殘れるなり
一一二―一一四
【彼】カイアファ(カヤバ)、ユダヤの祭司長、名を國益に藉り善人の死を謀れるもの(ヨハネ、一一・四七以下)
一一五―一一八
【民の爲に】ヨハネ、一一・四九―五〇に曰、汝等何事をも知らずまた一人民のために死して擧國亡びざるは我等の益たることをも思はざるなり
一二一―一二三
【外舅】アンナス(ヨハネ一八・一三)、祭司長たり(ルカ、三・二)
【苛責せらる】或ひは、ひきはらる
一二四―一二六
嘗てエリトネの命に從つて地獄の底に下れる時はかゝる刑罰をうくるものを見ざりしによりてあやしめるか、異説多し、委しき事スカルタッツィニの註にいづ
一三〇―一三二
【黒き天使】鬼(地、二七・一一二―四註參照)
一三三―一三五
【岩】石橋なり、斷崖よりいでゝ十の嚢の上を過ぐ
一三九―一四一
【鐡鉤にかくる者】マラコダ(地、二一・一〇九―二參照)
一四二―一四四
【僞る者】ヨハネ、八・四四
第二十四曲
ダンテ、ウェルギリウスと僞善者の溪を出で第七嚢の橋をわたりて堤の上より見おろせばこゝには無數の毒蛇ありて盜人の魂を苛責す、中にヴァンニ・フッチといふ盜人あり兩詩人とかたりて身の來歴を告げまた白黨の禍ひを豫言す
一―三
【日は】日の寶瓶宮にあるは一月二十日頃より二月二十日まで
【髮をとゝのへ】日の光を金髮になぞらへしなり、『アエネイス』九の六三八に、髮長きアポローとあるが如し、日髮をとゝのふとは暖氣の加はりゆくをいふ
【夜は】夜は日と反對の天にあり(淨、二・四參照)、十二月以降春分に近づくに從ひ日は北に夜は南にむかふ即ち日次第に長く夜次第に短し
四―六
【白き姉妹】雪、霜雪の如く白く地上に落つるも日出ると共に消ゆるを筆先鈍りて長く使用に堪へざるに譬へしなり
七―九
【腰をうち】霜を雪なりと思ひあやまり腰をうつ
一六―一八
【亂】地、二三・一四五―六參照
一九―二一
【山の麓】地、一・六一以下
三一―三三
【衣を】鉛の
四〇―四二
地、一九・三四―六註參照
五五―五七
人罪を離るゝのみにては未だ足らず進んでさらにその穢れを淨め而して後はじめて福の路に就くべし
【段】淨火の山の
【これら】此等の段乃ち地獄
六四―六六
【次の濠】第七嚢
七〇―七五
【生ける目底にゆくを】或ひは、目あきらかに底をみるを
生ける目は肉眼なり
【次の堤】第七と第八嚢の間の堤
【石垣】第七嚢を蔽へる橋
八二―八四
【蛇】ランディーノ(Landino)曰、蛇猾智に富む盜人亦然り蛇身を細くして穴といふ穴に入り盜人身を輕くして處といふ處に入る蛇萬人に嫌はる盜人亦然り蛇草にかくれて戰ひ盜人亦ひそかに人を害すと
八五―八七
【リビヤ】エヂプトの西、名高き砂漠あるところ
【ケリドリ】以下すべて蛇の名なり、ルカヌスの『ファルサリア』九・七〇六以下にいづ
八八―九〇
【エチオピア】エヂプトの南
【紅海の邊のもの】砂漠多きアラビア
九一―九三
【エリトロピア】寶石、色緑にして紅の斑點あり、古の俗説に此石よく蛇の毒を癒しまた持人の姿を人の目に見えざらしむる力ありといへり
一〇〇―一〇二
【o、i】いづれも一筆にて書き得べき文字
一〇六―一〇八
【聖等】プリーニオ、クラウディアーノ、ブルネット・ラティーニ、オウィディウス等、就中オウィディウスは主として詩人の引用せるものなり、『メタモルフォセス』一五・三九二以下に曰く
再び身を新にして再び生るゝ鳥あり、アッシリア人は之をフェーニカ(フェニックス)と名づく、この鳥麥をも草をも食まず、薫物の涙アモモの汁を食む、その世を經ること五百年にいたれば爪とゆがめる嘴とをもて青樫の枝またはそよめく棕櫚の梢に巣を作り、そが中には桂枝、甘松の穗、碎ける肉桂、黄なる沒藥を撒散らし此事果れば直ちにこゝに横たはり香氣に包まれてその生を終ふ、聞くならくフェニィクスの雛母體よりいで齡を重ぬるはじめの如しと
一〇九―一一一
【アモモ】木の名、種子より香料を得
一一二―一一七
【鬼の力】マルコ、一・二六、ルカ、四・三五等參照
【塞にさへられ】癲癇の類、體内生氣の通路塞がり官能その作用を失ひて倒るゝものと見做されしなり
一一八―一二〇
異本、神の威力(異本、正義)よ汝はいかに誠なるかを
一二一―一二三
【我】ヴァンニ・フッチ、ピストイア(フィレンツェの西北約廿哩)市の名族フッチオ・ディ・ラッツァーリの庶子、黒黨に屬せり
【往日】約五年前、ヴァンニの處刊せられしは一二九五年なり
【喉】嚢
一二四―一三二
【騾馬】イタリア語 mulo にはまた私生兒の義あればなり
【ピストイア】罪惡の邑(地、二五・一〇以下參照)
【血と怒りの人】即ち第七の地獄に罰せらるべき
ヴァンニ・フッチはフィレンツェの軍に加はりてピサ人の亂(地、二一の九四―六註參照)に赴けることあればダンテの彼を見しはこの頃の事なるべし、又ヴァンニのピストイアに暴を行へる(乃ち血の人)事につきてはスカルタッツィニの註にくはし
一三三―一三五
【汝】白黨の一人なる
一三六―一三八
【盜人】この事古註に詳なりされど古註の傳ふるところ悉く事實なるや疑はし今その概略をいはんに、一二九三年ヴァンニは二人の同類をかたらひ金銀の飾美しき聖ヤコブの寶藏(寺の名を聖ツェノネといふ)に忍び入り多くの寶物を盜み出し發覺の憂をからんためこれをその知人の家にかくし置きたり、盜難の報四方に傳はるに及びあまたの嫌疑者捕へられて拷問をうけしその中にラムピーノといへるもの苛責の苦しみに堪へずして無實の罪を負ひ將に刑せられんとす、ラムピーノはヴァンニの友なりければヴァンニこれを冤に死せしむるにしのびず自ら罪状を市吏に具申し共犯者と共に刑に服せり(或ひはヴァンニ罪を他人に歸して自ら刑を免かれきともいふ)
一四二―一四四
【ピストイア】一三〇一年ピストイアの白黨はフィレンツェの助けをかりて黒黨を市外に逐へり(ピストイアが黒白兩黨の分爭を見るにいたれるはその前年なり)
【フ
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