罪人等ありき、中央《なかば》よりこなたなるは我等にむかひて來り、かなたなるは我等と同じ方向《むき》にゆけどもその足はやし 二五―二七
さながらジュビレーオの年、群集《ぐんじゆ》大いなるによりてローマ人《びと》等民の爲に橋を渡るの手段《てだて》をまうけ 二八―三〇
片側《かたがは》なるはみな顏を城《カステルロ》にむけてサント・ピエートロにゆき、片側なるは山にむかひて行くごとくなりき 三一―三三
黯《くろず》める岩の上には、かなたこなたに角ある鬼の大なる鞭を持つありてあら/\しく彼等を後《うしろ》より打てり 三四―三六
あはれ始めの一撃《ひとうち》にて踵《くびす》を擧げし彼等の姿よ、二撃《ふたうち》三撃《みうち》を待つ者はげにひとりだにあらざりき 三七―三九
さて歩みゆく間、ひとりわが目にとまれるものありき、我はたゞちに我嘗て彼を見しことなきにあらずといひ 四〇―四二
すなはち定かに認《したゝ》めんとて足をとむれば、やさしき導者もともに止まり、わが少しく後《あと》に戻るを肯ひたまへり 四三―四五
この時かの策《むちう》たるゝもの顏を垂れて己を匿さんとせしかども及ばず、我曰ひけるは、目を地に投ぐる者よ 四六―四八
その姿に詐りなくば汝はヴェネディーコ・カッチヤネミーコなり、汝を導いてこの辛《から》きサルセに下せるものは何ぞや 四九―五一
彼我に、語るも本意《ほい》なし、されど明かなる汝の言《ことば》我に昔の世をしのばしめ我を強ふ 五二―五四
我は侯《マルケーゼ》の心に從はしめんとてギソラベルラをいざなひし者なりき(この不徳の物語いかに世に傳へらるとも) 五五―五七
さてまたこゝに歎くボローニア人《びと》は我身のみかは、彼等この處に滿つれば、今サヴェーナとレーノの間に 五八―六〇
シパといひならふ舌もなほその數これに及びがたし、若しこの事の徴《しるし》、證《あかし》をほしと思はゞたゞ慾深き我等の胸を思ひいづべし 六一―六三
かく語れる時一の鬼その鞭をあげてこれを打ちいひけるは、去れ判人《ぜげん》、こゝには騙《たら》すべき女なし 六四―六六
我わが導者にともなへり、かくて數歩にして我等は一の石橋の岸より出でし處にいたり 六七―六九
いとやすく之に上《のぼ》りて破岩をわたり右にむかひ此等の永久《とこしへ》の圈を離れき 七〇―七二
橋下空しくひらけて打たるゝ者に路をえさするところ
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