によりてなり 一〇〇―一〇二
物近づきまたはまのあたりにある時我等の智全く空し、若し我等に告ぐる者なくば世のありさまをいかでかしらん 一〇三―一〇五
この故に汝|會得《ゑとく》しうべし、未來の門の閉さるゝとともに我の知識全く死ぬるを 一〇六―一〇八
この時われいたく我咎を悔いていひけるは、さらば汝かの倒れし者に告げてその兒いまなほ生ける者と共にありといへ 一〇九―一一一
またさきにわが默《もだ》して答へざりしは汝によりて解かれし迷ひにすでに心をむけたるが故なるをしらしめよ 一一二―一一四
わが師はすでに我を呼べり、われすなはちいよ/\いそぎてこの魂にともにある者の誰なるやを告げんことを請ひしに 一一五―一一七
彼我にいひけるは、我はこゝに千餘の者と共に臥す、こゝに第二のフェデリーコとカルディナレあり、その他はいはず 一一八―一二〇
かくいひて隱れぬ、我はわが身に仇となるべきかの言《ことば》をおもひめぐらし、足を古《いにしへ》の詩人のかたにむけたり 一二一―一二三
かれは歩めり、かくてゆきつゝ汝何ぞかく思ひなやむやといふ、われその問に答へしに 一二四―一二六
聖《ひじり》訓《さと》していひけるは、汝が聞けるおのが凶事を記憶に藏《をさ》めよ、またいま心をわが言にそゝげ、かくいひて指を擧げたり 一二七―一二九
美しき目にて萬物を見るかの淑女の麗しき光の前にいたらば汝はかれによりておのが生涯の族程《たびぢ》をさとることをえん 一三〇―一三二
かくて彼足を左にむけたり、我等は城壁をあとにし、一の溪に入りたる路をとり、内部《うち》にむかひてすゝめり 一三三―一三五
溪は忌むべき惡臭《をしう》をいだして高くこの處に及ばしむ 一三六―一三八
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   第十一曲

碎けし巨岩《おほいは》の輪より成る高き岸の縁《ふち》にいたれば、我等の下にはいよ/\酷《むご》き群《むれ》ありき 一―三
たちのぼる深淵の惡臭《をしう》たへがたく劇しきをもて、我等はとある大墳《おほつか》の蓋の後方《うしろ》に身を寄せぬ 四―
われこゝに一の銘をみたり、曰く、我はフォーチンに引かれて正路を離れし法王アナスターショを納むと ―九
我等ゆるやかにくだりゆくべし、かくして官能まづ少しく悲しみの氣息《いき》に慣れなば、こののち患《うれへ》をなすことあらじ 一〇―一二
師斯く、我彼に曰ふ、時空しく過ぐる
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