の事業等ダンテ自身及びその詩に關係深きものゝみなればこの歌の作者を導者にえらべるはその當をえたりといふべし、『神曲』中のウェルギリウスは理性若しくは哲理の代表者なり
【ロムバルディア】イタリア北部の國名、ダンテの時代には今の所謂ロムバルディアより廣かりきといふ
【マントヴァ】ロムバルディアにある町、その地勢及び由來は地、二〇・五五以下に詳し
七〇―七二
【後れて】ウェルギリウスはユーリウス・カエサル(ジウリオ・チエーザレ)に後るゝこと二十九年にして生れカエサルの殺害せられしとき二十六歳なりき
おもふに七〇行の Sub Iulio(ユーリオの世)はカエサルの名の世に知られし時をも加へおしなべてかくいへるなるべし、カエサルが政權を掌握せるはウェルギリウスの誕生よりはるかに後の事なればなり
【アウグスト】アウグストゥス・オクタウィアヌス、ローマ皇帝(前六三―後一四年)
七三―七五
【イーリオン】トロイア。小アジアの海濱にありし町にて有名なるトロイア戰爭ありし處
トロイア王プリアモスの子パリス、スパルタ王メネラオスに客たりしがその妻ヘレネを奪ひて本國に歸り、これがためにトロイア戰爭なるもの起るにいたれるなり、戰ひ十年に亙りて城陷り兵火に罹りて燒く
【アンキーゼの義しき子】アエネアス、アンキセスとアプロディテの間に生る、トロイアの名將なり
ウェルギリウスの『アエネイス』はトロイア城陷落の後なるアエネアスの流落にはじまり、そのイタリアにいたりツルヌスを殺して建國の基を起すにをはる
八五―八七
【譽】『神曲』以前の作なる短詩すでに世に知らる(淨、二四・四九以下參照)
九一―九三
【他《ほか》の路】罪の恐るべきをさとれる者徳の生涯を心中に畫くといへども未だ全く罪の覊絆を脱せるにあらず徳に入るの準備成れるにあらねばたゞちに光明の山に登りて神恩に浴する能はず、まづ地獄を經て罪をはなれ淨火を經て穢れを淨めざるべからず
一〇〇―一〇二
【妻とする獸】貪婪に伴ふ罪惡
【獵犬】將來世に出でゝ物質上及び精神上よりその救ひとなるべき偉大の人物(恐らくは皇帝若しくは法王)
註釋者或ひはキリストの再來をいひ或ひは當時ヴェロナの明君なりしカン・グランデ・デルラ・スカーラの如き知名の士を擧ぐるもいづれも疑はし、思ふに捕捉し難きダンテの獵犬にしひて具體的な解釋を求めんとするは無益の業ならん
一〇三―一〇五

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