かなたにありしはわがくだれる間のみ、われ身をかへせし時汝は重量《おもさ》あるものを四方より引く點を過ぎ 一〇九―一一一
廣き乾ける土に蔽はれ、かつ罪なくして世に生れ世をおくれる人その頂點のもとに殺されし半球を離れ 一一二―
いまは之と相對《あひむか》へる半球の下にありて、足をジユデッカの背面を成す小さき球の上におくなり ―一一七
かしこの夕はこゝの朝にあたる、また毛を我等の段《きだ》となせし者の身をおくさまは今も始めと異なることなし 一一八―一二〇
彼が天よりおちくだれるはこなたなりき、この時そのかみこの處に聳えし陸は彼を恐るゝあまり海を蔽物《おほひ》となして 一二一―一二三
我半球に來れるなり、おもふにこなたにあらはるゝものもまた彼をさけんためこの空處をこゝに殘して走り上《のぼ》れるなるべし 一二四―一二六
さてこの深みにベルヅエブの許より起りてその長さ墓の深さに等しき一の處あり、目に見えざれども 一二七―
一の小川の響きによりてしらる、この小川は囘《めぐ》り流れて急ならず、その噛み穿てる岩の中虚《うつろ》を傳はりてこゝにくだれり ―一三二
導者と我とは粲《あざや》かなる世に歸らんため、このひそかなる路に入り、しばしの休《やすみ》をだにもとむることなく 一三三―一三五
わが一の圓き孔の口より天の負《お》ひゆく美しき物をうかゞふをうるにいたるまで、彼第一に我は第二に上《のぼ》りゆき 一三六―一三八
かくてこの處をいでぬ、再び諸※[#二の字点、1−2−22]の星をみんとて 一三九―一四一
[#改丁]
註
第一曲
ダンテ路を失ひて暗き林の中に迷ふ、會※[#二の字点、1−2−22]一丘上に光明を認め之に向ひて進む、されど豹、獅子、狼の出でゝ路を塞ぐにあひ再び林にかへらんとす、この時ウェルギリウスこれにあらはれて救ひの道を示し三界の歴程を勤め且つ自ら導者となりてまづ地獄、淨火をめぐらんと告ぐ
一―三
【正路】有徳の路
【半】詩人三十五歳の時、人生を七十と見做してその半にあたるをいふ(詩篇、九〇・一〇及びダンテの『コンヴィヴィオ』四・二三、八八以下參照)
ダンテの生れしは一二六五年なり、故に『神曲』示現の時は一三〇〇年聖金曜日の前夜にはじまる(地、二・一註參照)一三〇〇年はダンテがフィレンツェのプリオレとなりし年又ローマに有名なる大會式(ジュビレ
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