てとらへ引裂きて肉を取れり 七〇―七二
ドラギニヤッツォもまたその脛を打たんとしければ、彼等の長《をさ》はまなざしするどくあまねくあたりをみまはしぬ 七三―七五
彼等少しくしづまれる時、わが導者は己が傷より目を放たざりし者にむかひ、たゞちに問ひて曰ひけるは 七六―七八
汝は岸に出でんとて幸《さち》なく別れし者ありといへり、こは誰なりしぞ、彼答へて曰ふ、ガルルーラの者にて 七九―
僧《フラーテ》ゴミータといひ、萬の欺罔《たばかり》の器《うつは》なりき、その主の敵を己が手に收め、彼等の中己を褒《ほ》めざるものなきやう彼等をあしらへり ―八四
乃ち金《かね》を受けて穩《おだや》かに(これ彼の言なり)彼等を放てるなり、またそのほかの職務《つとめ》においても汚吏の小さき者ならでいと大なる者なりき 八五―八七
ロゴドロのドンノ・ミケーレ・ツァンケ善く彼と語る、談サールディニアの事に及べば彼等の舌疲るゝを覺ゆることなし 八八―九〇
されどあゝ齒をかみあはす彼を見給へ、ほかに告ぐべきことあれど彼わが瘡《かさ》を引掻《ひきか》かんとてすでに身を構ふるをおそる 九一―九三
たゞ撃つばかりに目をまろばしゐたるファールファレルロにむかひ、大いなる長《をさ》曰ひけるは、惡しき鳥よ退《すさ》れ 九四―九六
この時|戰慄《をのゝく》者《もの》語《ことば》をついでいひけるは、汝等トスカーナまたはロムバルディアの者をみまたはそのいふ事を聞かんと思はゞ我彼等を來らせん 九七―九九
されど彼等に罰を恐れざらしめんため、禍ひの爪|等《たち》少しくこゝを離るべし、我はこのまゝこの處に坐して 一〇〇―一〇二
嘯《うそぶ》き(我等のうち外《そと》に出るものあればつねにかくする習ひあり)、ひとりの我に代へて七人《なゝたり》の者を來らせん 一〇三―一〇五
カーニヤッツオこの言を聞きて口をあげ頭をふりていひけるは、身を投げ入れんとてめぐらせる彼の奸計《わるだくみ》をきけ 一〇六―一〇八
羂《わな》に富める者乃ち答へて曰ひけるは、侶《とも》の悲しみを増さしむれば、我は至極の奸物《わるもの》なるべし 一〇九―一一一
アーリキーン堪《こら》へず衆にさからひて彼に曰ふ、汝身を投げなば我は馳せて汝を追はず 一一二―一一四
翼を脂《やに》の上に搏《う》つべし、我等|頂上《いたゞき》を棄て岸を楯とし、汝たゞひとりにてよく我等を凌ぐ
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