―八四
彼はマッカベエイの書《ふみ》のうちなるヤーソンの第二とならむ、また王これに甘《あま》かりし如くフランスを治むるもの彼に甘かるべし 八五―八七
我はこの時わがたゞかゝる歌をもて彼に答へし事のあまりに愚なるわざなりしや否やを知らず、曰く、あゝいま我に告げよ 八八―九〇
我等の主|鑰《かぎ》を聖ピエートロに委ぬるにあたりて幾許《いくばく》の財寶《たから》を彼に求めしや、げにその求めしものは我に從へ[#「我に從へ」に白丸傍点]の外あらざりき 九一―九三
また罪ある魂の失へる場所を補はんとて鬮《くじ》にてマッティアを選べる時、ピエルもほかの弟子達《でしたち》も彼より金銀をうけざりき 九四―九六
此故にこゝにとゞまれ、罰をうくるは宜《うべ》なればなり、かくして汝にカルロを侮らしめし不義の財貨《たから》をかたくまもれ 九七―九九
若し喜びの世にて汝が手にせし比類《たぐひ》なき鑰の敬《うやまひ》いまなほ我を控《ひか》ゆるなくば 一〇〇―一〇二
これより烈《はげ》しき言《ことば》をこそもちゐめ、汝等の貪りは世界に殃《わざはひ》し善《よき》を踏みしき悖《もと》れるを擧ぐ 一〇三―一〇五
女水の上に坐し淫を諸王に鬻ぐを見し時、かの聖傳を編める者汝等牧者を思へるなり 一〇六―一〇八
すなはち生れて七の頭あり、その夫の徳を慕ふ間十の角《つの》よりその證《あかし》をうけし女なり 一〇九―一一一
汝等は己の爲に金銀の神を造れり、汝等と偶像に事ふるものゝ異なる處いづこにかある、彼等一を拜し汝等百を拜す、これのみ 一一二―一一四
あゝコスタンティーンよ、汝の歸依ならず、最初の富める父が汝よりうけしその施物《せもつ》はそもいかなる禍ひの母となりたる 一一五―一一七
我この歌をうたへる間、彼は怒りに刺されしか或ひは恥に刺されしか、はげしく二の蹠《あしうら》を搖《ゆ》れり 一一八―一二〇
思ふにこの事必ずわが導者の意をえたりしなるべし、かれ氣色《けしき》いとうるはしくたえず耳をわがのべし眞《まこと》の言に傾けき 一二一―一二三
かくて雙腕《もろかひな》をもて我を抱き、我を全くその胸に載せ、さきにくだれる路をのぼれり 一二四―一二六
またかく抱きて疲るゝことなく、第四の堤より第五の堤に通ふ弓門《アルコ》の頂《いたゞき》まで我を載せ行き 一二七―一二九
石橋粗く嶮しくして山羊《やぎ》さへたやすく過ぐべ
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